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80 『フリーズ』 ーエイプ・フリーレルー
しおりを挟む『フリーズ』
私は咄嗟に動きを止める魔法をディッセンにかけた。
炎の剣の切っ先はノーベンに向けられたものではなく自分自身の腹に向けて突き刺そうとしていた。
ディッセンの腹に刃が届く寸前、動きを止めることは出来たものの、私との属性の相性が悪く効きが甘い。
ゆっくりと炎の剣が腹に向かっていく
『フリーズ』
『フリーズ』
三重にかけて動きはやっと止まり切っ先がわずか数ミリで刺さるところだった。
「なんで?なんで?なんで?ディッセンなんで?」
「げぶっ、ごぷっ、うぐ、」
『フリーズ』しているディッセンが泣きながら吐く。
このままでは喉を詰まらせて死んでしまう。
『愛の奴隷』を3回かけてから『フリーズ』を解除するとディッセンは胃の中の物を一通り吐き終えて微笑んだ。
「ふふふ、…げぇっ…エイプ・フリーレル様💗 うぇぇぇっ………好き💗」
「フリーレルっ!! ディッセンに何をしたっ!!」
「仕方ないでしょう!一時的に心を支配しなかったらディッセンは今みたいに自殺するか、魔物討伐前に狂ってしまうぞ!!」
私が怒鳴るとは思わなかったようでノーベンはびっくりして言い訳を始めた。
「だって、結婚したんだぞ。教会で式も上げた、毎晩愛し合ってる」
「ディッセンは違ったみたいですね」
「うふん💗フリーレル様ぁ💗好き💗…ぐあああっ!!」
私にすり寄るディッセンが許せないらしく首を締めた。
「ディッセンっ!この浮気者!!」
「ノーベン、やめろ。ディッセンは今、魔法にかかっているだけだ」
「うるさいっ!!こんなに愛しているのにお前はっ!!」
殺されては困る!!
『アクアクリーン!!』
ノーベンの顔を水で覆うとぐるぐる水流を起こして顔面を洗う。
水の中で呼吸できずジタバタと苦しんでディッセンから手を放した。
やっと大人しくなった所を見計らって魔法を解除する。
「やめろっと言っているんだ。木属性の魔物討伐前だぞ。いいか?ディッセンには絶対に手出しするな。お腹の子も殺す気か?」
「げほっ、げほっ、だって…ディッセンが…フリーレルを、お前を好きだって」
「だから魔法だと言ってるだろう。儀式の時にも使ったのを覚えてないのか。少し落ち着け」
はあーー、討伐前だと言うのにどうしてこんな事に………討伐が終わった後だったら何してくれてもかまわなかったのに。
「幻視薬を渡します。ノーベン付いて来なさい」
「幻視薬ってなんだよ…ボクはディッセンの…」
「いいから来いっ!! お前にディッセンを殺されたら困るんだっ!! 大人しく付いて来いっ!!」
我慢の限界で私のほうがノーベンを殺してしまいそうだ。
「ディッセン、貴方は着いてこなくて良いです。ベッドで待っていなさい。すぐに戻ります」
「はい💗」
私の部屋で保管していた幻視薬をノーベンに渡し、手短に使い方を説明をする。
「いいですか?必ずしも貴方の名前を呼ぶとは限りません。くれぐれも殺さないように」
「わかっている。この薬で俺のこと好きになってくれるなら何でもいい」
「それですが私から提案です。ディッセンに名前が変わったから新しい名前ノーベンで呼ぶようにと言いなさい。それなら貴方の名前で呼ぶようになるでしょう。」
「わかった。」
「ふう…」
ノーベンは本当に何も知らない子供なんですね。
煙草・酒・薬・カフェイン・過渡な運動………どれも妊娠中は気をつけるものなんですよ。
聞かれないし、わざわざ教えるつもりもありません。
教えたら絶対に木属性の魔物討伐にディッセンを連れて行かせないでしょう。
そんなことはさせません。
木属性の魔物には貴方達の力が必要なんですから。
こんな時に子供を作る貴方が悪いんです。
薬を持って部屋に戻ると大人しくベッドに座って待っていたディッセンは、私の顔を見つけると嬉しそうに笑った。
「ディッセン、彼が薬を飲ませくれます。口を開けなさい」
「はい💗」
ディッセンは言われるがまま口を開けた。
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