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62 忙しい ーエイプ・フリーレルー
しおりを挟む汚された神子様のお身体を清めて差し上げた帰りにオークト様とばったり廊下で会った。
「こんばんは、オークト様」
「こここここ、こんばんは、フリーレル様」
オークト様のお顔や衣服には真っ赤な口紅がいくつも付けられて、身体からは安物のキツイ香水が染み付いている。
今宵は夜の街で楽しんでこられたようだ。
「お会いできて良かった。急ぎで折り入って貴方に頼みたいことがあるのです」
「だ、だ、大魔道士フリーレル様、わ、私に、ど、どのようなご用件でしょうか」
顔をキスマークが消えてしまうほど顔を赤らめて動揺している。
「オークト様、用件の前に入浴をされたほうが宜しいかと…服も昨日のままですし、着替えてからで構いませんからあとで私の部屋にいらして下さい」
「は、はい。す、すぐに入ってまいります」
浴場に逃げ込むように向かってバタバタと廊下を走って行かれる。
風呂に入った頃にオークト様の汚い高音の叫び声が魔法学園に響いた。
「ししし、失礼します」
私の部屋を訪ねてきたオークト様は赤い顔をして項垂れていた。
肌の口紅は消えていたがその場所は酷く擦ったようで赤くなってます。
「夜分遅くにお呼びだてして申し訳ありません。なにぶん急いでおりますので」
「ど、どのようなお話なんですか?」
オークト様は恥ずかしいのか半泣き状態です。
「次回の討伐のことで、どうしてもオークト様にお話しなくてはならない事があるのです。実はバンテール様が密契の儀はおろか祝福の儀すら受けられていないのです」
「え、えっ!!ど、どうしてそんな事になったんです」
「落ち着いて下さい。私にはバンテール様が故意に神子様を避けているような気がするのです」
「?? さ、避けるなんてそんなことありえません。ゆ、勇者の義務を放棄するということですか?…と、討伐に参加しないつもりなのでしょうか?」
「いえ、バンテール様は勇者として必ず参加して下さるとお手紙を頂いております。ただ………神子様の加護を受けないままの出陣するつもりです」
「ひっ!そ、それでは…」
「ええ、オークト様の考えている通りです。このままでは水属性の力が足りなくてパーティーは全滅します。それだけじゃなく、討伐パーティーを全滅させた魔物達はこの国を滅ぼしにやってくるでしょう」
今まで赤かった顔が真っ青に染まる。
「どどど、どうしたら良いんでしょうか」
「そこでオークト様にお願いがあるのです。バンテール様に魅了の魔法をかけて頂きたい」
「み、魅了?」
「はい、お願いできますか? 私とバンテール様は魔法属性の相性が悪いから魅了の魔法が効かない可能性が高いのです。その点オークト様はバンテール様と同じ水属性ですから魔法の相性は良いはずです」
「む、無理です。わ、私、魅了の魔法は習得してません」
「習得してない?!」
ここまで計画を話したのに なんてことだ、魅了を使えないなんて。
「すみません。他の魔法の研究を習得するのに忙しくて…」
「そうですか…。仕方ありません。私が薬を飲ませて神子様と儀式をしていただくように致します」
「! 薬? 何の薬ですか?」
そんな事さらっと聞き流してくれればいいのに。
オークト様は研究熱心なお方だから、薬が何か知りたいんですね。
変に隠し事をして不信感を持たれたり、このことを誰かに話されても困りますから正直に話しましょう。
「ふう、惚れ薬みたいなものです」
「なるほど、それなら上手くいきますね」
なにを言ってるのですか、貴方が魅了をかけてくれたら簡単にすむはずだったのに。
惚れ薬なんて弱い薬では儀式まで行くわけ無いでしょう。
確実に儀式をする強い薬をこれから魔法書庫で調べて作らなくてはならなくなったのは予想外でした。
「私は急いで薬を作らなくてはならないので失礼します。オークト様、このことはくれぐれも内密にお願いします」
「は、はい。お力になれず申し訳ありません」
本当ですよ💢
急ぎ魔法書庫で調べると『愛欲に溺れる薬』が良さそうだ。
リストアップした材料を弟子達に昼までに持ってくるように手配した。
集めるのに難しいものは特にないから大丈夫でしょう。
ああ、王になるためとは言え、本当に忙しいな。
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