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12 怖い
しおりを挟む「神子様、中に入れていただいても宜しいでしょうか?」
訂正、この声は女の子じゃない、男だ。
どうして3階の窓の外にいるのか不思議だけど、この部屋は全てに鍵がかけてあってどこも開かない。
窓まで行って教えてやった。
「ここは鍵がかかって開かない。誰か呼ぶからまってて………」
小さく鍵の開く音がして「失礼します。」とガラス戸を開けて男が入ってきた。
ゆるくウェーブのかかった黄緑色の髪は逆光で透けてキラキラ光っている。
映画からそのまま出てきたような魔法使いのローブを着て、色白の肌に、袖から除く手は細くて綺麗だ。
くそ、男じゃなきゃ口説いてベッドに押し倒しているのに。
「お初にお目にかかります。私、選ばれし12人の勇者の一人、魔道士のエイプ・フリーレルと申します」
「ああ…はじめまして浜中幸男です」
俺の足元で跪き笑顔で挨拶をするから俺もつられて笑顔で答えた。
「神子様には今夜『聖なる乙女の儀式』を受けていただくため私が支度に参りました」
「儀式…?…何だそれ?それしないと帰れないのか?」
やっとドッキリらしい事になってきた。
俺はドッキリに引っかかって早く帰ろうと相手の話に乗ることにした。
「良いよ。儀式をすればいいんだな」
「それでは…魅了」
エイプの手には小さな杖が握られていて、そこからなにかピンク色にキラキラ光る魔法みたいなものが俺を包んだ。
なんだ、頭がクラクラする。
「なっ、なに、なにしたお前」
「おや、お体のことを考えて弱い魔法にしたのですが、どうやら弱い魔法では効かないようです。さすが神子様、魔法耐性が備わってらっしゃる。それでは魅了最上位魔法『愛の奴隷』」
「うわあっ」
頭の中が揺れて、体が………足に力が入らない。倒れる………
俺の体をガシッと受け止めたのは、あの色白の細い腕だった。
「大丈夫ですか?さあ、立って下さい。今夜の大事な儀式のためにお体を清めに行きましょう。」
エイプの声を聞くと急に手足に力が入る。
「はい、エイプ💗大丈夫です。立てます。今夜の大事な儀式のためにお体を清めに行きましょう」
(何だこの気色悪い声は俺の声か?!?!)
「良い子ですね。では行きましょう」
「はい💗良い子です💗」
(うわあああ、まじで何だこれ?!催眠術かなにかかよ。こんなに頭がはっきりしているのに体が言うことをきかない)
エイプに促されるまま缶詰になっていた部屋から連れ出された。
意識があるのに体が勝手に動いているぞ。
部屋からでられたのは嬉しいけれど、こんなおかしな状態でどこに連れて行かれるんだ?!
怖い、怖い、儀式って何すんだ?
マジで怖い。
誰か助けてくれっ!!
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