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9.1 回想 100年目 ーラリー・トゥー・フェイブ第二皇子ー (改)

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私は第一皇子の兄のスペアとして産まれた。

兄のイルーメ・ファイ・フェイブ第一皇子は何でも優遇されて、私はいつも二の次だった。冷遇されていたと言ってもいい。

甘やかされた兄は何でも与えられ、ぶくぶくと色々な意味で肥えていた。

そんな人生を私は諦めていた。

兄には正妻と二人の娘、そして第二夫人には産まれたばかりの男児が一人いる。

将来はその子が王になるだろうと言われていた。



私の暗闇に敷かれた人生のレールだったのだが、100年に一度の神子様の降臨により一変する。





「なっ、なんだこれは。」


朝目覚めると枕元に掌サイズの濃い緑色に輝くエメラルドの魔法石があった。

装飾などされず、裸石のままだ。

なんでこんな物が私のベッドの中に?!
俺を泥棒にしたてて、この城から追い出そうとしているのかもしれない。
そんな事されてたまるものか。

魔法石を掴んで寝間着のまま、急いで王である父のところへ出向いた。

当然、私の異様な格好に寝室の前の兵士が入室を止める。


「放せっ!!国王陛下に話があるんだ、陛下急ぎお話があります。どうか無礼をお許し下さい。」


木属性魔法の蔦で兵士を跳ね除け、寝室に入ると陛下はメイドとお楽しみ中だった。


「な、何をするか、断わりにもなしに入ってくるとは何事だ!!」

「申し訳ありません。何者かが私の寝所に潜り込み盗人ぬすびとの罪を被せようと画策したようです。陛下に私の身の潔白を証明しに参りました。」

「なに?そのような不届き者がいるのか。誰だ。」

「わかりません。ただ、私のベッドの中に この魔法石を忍ばせて罪を被せようとしたようです。私はけしてそのような事はしません。」

「………どれ見せてみよ。」


陛下に魔法石を差し出すとバチッと電流のようなものが走り、あろうことか国王陛下の手の甲に傷を負わせてしまった。


「ぐあっ」

「陛下、大丈夫ですかっ!!」


血がぽたぽたと流れ、シーツに赤いしみが広がる。


「ふふふふふ……ふふ、ははははははっ!!あーっはっはっはっ!!」


父上は負傷した右手の痛みに身体を震わせているかと思っていたら、突然壊れてしまったように笑いだした。
身の潔白を証明するどころか私の立場は危うい、とにかく父上の手当てが先だ。
ぼーっと立っている使用人に私は大声で命令した。


「誰か今すぐフリーレルを呼んで来い!!」

「はいっ!!」

「ははははははっ!!」

「陛下っ、お気を確かにっ、陛下っ……」


この魔法石のせいで父王が壊れてしまったら…私が責任を取らされる。
どこまで私には不幸が付いて回るんだ。
一体私が何をしたというんだ。


「はは……ラリー…」

「はい、陛下、正気に戻られましたか!今フリーレルが来……」


怪我を負っていない左手で私の右腕を力強く掴んだ。


「今日が100年目であったか、でかしたぞ、ラリー!お前は選ばれし12人の勇者の一人に選ばれたのだ。」

「え………」


話が飛びすぎて父上の言っていることを理解するのに少し時間がかかった。


「あの、ではこの魔法石は……」

「盗人が入ってきたのではない。お前が生みだしたのだ。石を見てみよ。お前の髪と同じ色ではないか。言い伝えによれば、この魔法石は持ち主と心を許した神子しか触ることが出来ないのだ。よいかラリー、必ず神子様に子供を産ませて国王になり、のちの100年もフェイブ家が国を治めるのだぞ。」

「国王…私が………はい国王陛下、私は必ず国王になります。」

「良く言った。この数日で国のあちこちから残りの勇者達が城を目指してくるだろう。全員が揃うのは大体2週間ぐらいかかるであろう。揃い次第、お前と勇者の為に祝賀会を開こうではないか。」

「有難うございます。国王陛下」



陛下はご機嫌で執事に貴族への招待状と12人の勇者は当城するようにと街中に張り紙を出すことを命令した。


 
 
 
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