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8 変なドッキリ (改)
しおりを挟む「目覚めたのは本当か!!」
大きな声と共に再び部屋の扉が勢いよく開き、キラキラと着飾った男が入ってきた。
タイミングがいいのか悪いのか俺のために魔道士を呼びに行こうとした人は、開けられた扉に顔面を強打してうずくまった。
まるで古いお笑いのコントみたいだな。時代遅れ過ぎて全然笑えない。
人を吹っ飛ばして気にも留めないキラキラ男は案内されてまっすぐこっちに向かってくる。
「殿下、こちらに」
「うむ、他の勇者には知らせたのか?」
「一番に殿下にお声をかけさせていただきました。殿下の謁見の後、他の勇者に知らせに行かせます」
「よくやった」
俺の顔をしかめっ面でつま先から頭まで一通り見て
「私はこの国の第二皇子のラリー・トゥー・フェイブだ。お前の名前は?」
第二皇子?皇子様ねー、そう言う設定か、はいはい騙されてあげますよ。
「浜中幸男です」
「声もそうだが、どう見ても男ではないか。神子はどうした。まさかお前は選ばれし12人のうちの一人なのか?いや、そんなはずは…」
皇子様はブツブツとなんか独り言を言っている。
周りの人間も少しずつそわそわと焦りだして、この茶番劇が俺にバレていると気がついたようだ。
「………ハマ…ええい、覚えにくい名だな。お前、魔法石を持っているのか?」
人の名前を覚えにくいって失礼だな。
日本じゃポピュラーな名前だよ。
しかも矢継ぎ早に変な質問攻めするのって世の中的にウケるのか?
全然面白いとは思えない。
「それって何んだよ?」
そっけなく質問を質問で返してやると、代わりに医者と言っていた老人が俺に教えてくれた。
「魔法石は勇者の証。選ばれし12人の勇者は神子様が装備なさる防具の魔法石を体から生み出されるのです。お持ちではありませんか?」
「知らないし、持ってない」
「コンコン、もしもーし」
口でノックする真似をしするから皆一斉に振り向くと開いた扉の前で青い髪の男が立っていた。
「抜け駆けはずるいです。ラリー殿下」
「サオマ、もう来たのか」
「あれだけ騒げばすぐわかります。魔法陣からここに運んだのは俺なんです。すぐ傍で待機していました。神子様召喚の場所がどうなっていたか、知りたいんじゃないかと思って待っていたんですよ。それなのにまさかラリー殿下が抜け駆けするなどとは…」
「サオマ 貴様、口が過ぎるぞ」
「……これは失礼。あの現場にいた騎士や神官達はみんな死んでしまったので、真実を知っているのは俺だけです。どうなさいますか?」
「………早く話せ」
「俺達は同じ選ばれし12人の勇者なんですから平等にお願いします。」
「…わかった」
「森の中にあった魔法陣の真ん中に寝ていたのは彼一人だけで周りには魔法石も落ちていませんでした。あ、あと何に使うかわからないオブジェが転がっていました。あの辺一体はアルーバ兄弟が炎で焼き払ったので、神官達も騎士達も燃えて何も残ってないと思います」
「森の火災はアルーバ男爵達のせいなのか。あやつらは何をやっているんだ」
「さあ?召喚場所に行くために炎で道を作ろうとでもしたんじゃないですか?俺がいたからコイツは焼かれずに済んだんですよ」
その場にいた俺以外、全員が大きくため息をついた。
それにしてもコイツとは何だ。失礼なやつだ。いつまでこの芝居に付き合わなくちゃいけないんだ。
皇子様の家臣が発言してきた。
「恐れながらラリー殿下、勇者に欠員が出たから神がこの男を補充したんじゃないですか?」
「そんなことはありえない」
「ラリー殿下の言う通り、ありえないですよ。魔法石が燃えるとは思えない。まだ生きていた時の神官達も何も落ちてないって言ってましたから」
「く、予言では神子が召喚されるとは言っていたはずなんだ」
「コイツが神子?!本当に?!男ですよ!」
「………仕方ない、もう一度 召喚の義を行え。必ず神子を召喚するんだ」
「ははっ」
慌ただしく全員が出て行って広い部屋の中に俺は残された。
「なんなんだよ。変なドッキリだな」
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