67 / 80
二人の王様
第42話 どうしよう ー岩崎渚 目線ー
しおりを挟む浴槽にはられたお湯の湯気でお風呂場は白くぼやけている。
教えられたとおりボタンで切り替えてシャワーを浴びはじめた。
修斗のいじわる。
男同士なんだからお風呂一緒に入ったって怪しまれないのに。
本当に心配性なんだから
ボディーソープをたっぷり泡立てたナイロンタオルで擦ったら肌がチクチクと痛い。
身体中に細かなかすり傷があってボディーソープが染みているんだ。
急いで頭から足の先まで綺麗にあらうとすぐに泡を流して急いで浴槽に浸かった。
「いた!」
今度は違う所が痛みを訴えてくる。
そこは脱衣所で修斗の指が入っていた場所。
「うー、ヒリヒリする。」
いつもはローションでたっぷりと潤し、十分過ぎるほど丁寧にほぐしてから入れるから痛い事はなかった。
でもあの時、濡らして調べたら身の潔白を証明出来ないから、これは嬉しい痛みなんだ。
「ちゃんと調べてもらえて良かったぁ。」
これで俺達、別れるなんてことなくなったよね? 修斗♡
嬉しくて顔が緩んじゃう。
でもまだ一つ不安なことがある。
緒方遥のこと。
『どうしてもっ、願い事を叶えたかったんです。』
あんなふうにみんなの前で情熱的に自分の気持ちをぶつけるなんて俺には出来ない。
だからって修斗を思う気持ちは誰にも負けないもん。
小学生の頃、英会話の先生が『外国ではアピールしないと誰も見てくれない。話を聞いてくれない。ボディーランゲージなどを付け加えてオーバーなくらい主張することが大事です。』って言ってた。
俺もアピールしなくちゃダメなのかな。
自分と比べると
緒方遥は年は若いし (1コだけだけど)
ボディケア完璧だし (めちゃくちゃ髪とか肌綺麗)
甘え上手だし (俺は甘えるの下手だ)
自分がどれだけ好きか伝えることに必死なところがいじらしい。 (俺は伝えられてないと思う)
うわあ~~、明らかに俺の方が劣っている気がする。
「ダメダメ!ネガティブモード無しっ!せっかく修斗の家に来てるんだもん。楽しい気持ちにならないとダメだ。」
暗い顔してたら修斗が心配しちゃう。
スマイルスマイル。
浴室内の鏡に向かって口角の両端を手で押し上げて笑い顔を作った。
顔の横にある傷だらけの手が目に入る。
「あー手がぼろぼろ…俺もボディケアしようかな。やっぱり怪我だらけよりツヤツヤな肌が……!!」
ちょっと待って!
冷静になって大変なことに今 気がついた。
「俺、…暴れた所、修斗に見られた…?!」
記憶がほとんどないけど、多分見られたよね?
どうしよう、修斗にだけは知られたくなかったのに、どうしよう、どうしようっ
修斗、さっき身体を調べる時もちょっと見ただけで積極的じゃなかった。
だって俺が言わなくちゃ中まで調べる気がなかったよね。
ちゃんと調べてってお願いした時だって『え?そこまでするのっ?』って驚いていた。
お風呂一緒に入ろうって言った時なんか、即 断られた。
それって………
学校を壊したり、人を殴ったりするような人は嫌い…
だよね。
俺もそんな奴が友達なんて嫌だ。
ましてや 俺 修斗の恋人じゃんか。
「どうしよう、修斗に嫌われ…」
顔を手で覆い、そこから先の言葉が怖くて言えない。
指の隙間から涙がぼろぼろとお湯の中に消えていった。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
玩具にされた子供
Neu(ノイ)
BL
R-18/虐待/近親相姦/暴力/ショタ/バッドエンド/死ネタ/etc.
【父親×息子】
パパもママも、僕のことが嫌いなんだ。
僕は産まれて来てはいけなかったんだ。
だって、パパは僕のお尻に痛い注射をするし。
嫌がると殴られるから、毎日我慢するしかなくて。
ママは僕の顔も見てくれない。
顔が合うと、叩かれる。
お前なんか消えてしまえとか、ひどい言葉も一杯投げられた。
ご飯も水も、ろくにくれないんだ。
僕なんか死んでも良いって、思っているんでしょ?
ねえ、ひどくするなら、何で僕のことを、産んだの?
要らない子なら、最初から産まないでくれたら良かったのに。
*不定期更新。
性描写があります故、高校生含む18歳未満の方は、自己責任に於いて判断をお願い致します。
当方では、如何なる不利益を被られましても責任が取れませんので、予めご理解下さいませ。
タイトル横に*印がある頁は性的描写を含みますので、お気を付け下さい。
此方の作品は、作者の妄想によるフィクションであり、実際のものとは一切の関係も御座いません。
また、作者は専門家ではありませんので、間違った解釈等あるかと思います。
以上のことご理解頂けたらと思います。
目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件
水野七緒
BL
一見チャラそうだけど、根はマジメな男子高校生・星井夏樹。
そんな彼が、ある日、現代とよく似た「別の世界(パラレルワールド)」の夏樹と入れ替わることに。
この世界の夏樹は、浮気性な上に「妹の彼氏」とお付き合いしているようで…?
※終わり方が2種類あります。9話目から分岐します。※続編「目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件」連載中です(2022.8.14)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる