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二人の王様
第33話 バーサーカーモード
しおりを挟むどごーんっ!!
鈍い音を立てて人が地面に落ちてきた。
「ふざけんなぁぁぁっ!! 僕のことを可愛いなんて言うのは10億万年早いんだよーーっ!!」
恐れていたことが現実になっている。
あまりの迫力に呆然とする。
あれが、ナギ………?
腕の筋肉が盛り上がって倍くらいになっているし、破れているYシャツから覗く腹筋は見事に6つに割れている。
まるでオレンジ色のボールを7つ集めている超ヒーローのような体型になっていいて別人のようだ。
「なな、なんだよあれ。何が『怒れるチワワ』だよっっ!!バーサーカーじゃねーかっっ!!」
俺の足元で青い目出し帽を被った男がギャーギャー騒いでくれたお陰で我に返った。
………しっかりしろっ!! ナギには俺しかいないんだ!!
白山と緒方が追いついた。
「どうなっているんですか?」
「ふーっ!ふーっ!」
「怖いっ」
緒方が恐怖で震えている。
俺だって怖い。
「白山、そこにいる目出し帽の奴らが犯人だ。捕まえておいてくれ。」
足元には意識のない赤い目出し帽が脱げかけている男とさっきから喚いて股間を濡らしてもがいている転がっている青い目だし帽の男がいる。
「はい!」
白山は手早く本人たちのネクタイで後ろ手に縛り上げる。
「頼んだぞ!!ナギと話をつけてくる。」
ナギの手には直径10センチはあるだろう木を掴んで振り回して暴れている。
「うわあああああっ!!」
怒りに我を忘れていて俺だと冷静に認識してくれるかどうかも怪しい状態のナギ。
振り回した木の枝が飛んできて頬をかすめて傷をつけていった。
「みんなちょっと危ないから校舎の中に入って、これ以上被害を大きくしたくない。」
大きな声で周りにいる野次馬に注意を促す。
スマホを取り出してこの前の電話で登録済みだったナギのお母さんに電話をかけた。
「お久しぶりです。辻です。今、お電話大丈夫ですか?」
「辻くん?久しぶり、どうかしたの?」
俺は憶測ではあるが手短に現在の状況を伝えるとナギのお母さんはうろたえた。
「どうしましょう、どうしたら良いかしら、今からすぐそっちに向かうけど着くまでに2時間かかるわ。あの子、お風呂に入ってリラックスすればすぐにもとに戻るんだけど…」
お母さん、学校に風呂はありません。
「お母さんが来るまでなんとか落ち着かせてみます。でもなるべく早くお願いします!」
「辻くん、有難う。渚のことお願いね。すぐ行くから。」
電話を切ると背後でものすごい音とともに怒りの矛先が林や茂みへの攻撃に変わっている。持っている木で殴りまくるから木の葉が緑の雨を降らしている。
どうする? ナギをお風呂に入れてリラックスさせることは出来ない。
リラックス………?
そういえばナギのお母さんは中学生の時どうやってナギを家まで連れ帰ったんだ?
お母さんに出来ることって………
抱きしめて優しく声をかけて落ち着かせたんじゃないだろうか?
とにかくその方法でバーサーカーモードは解除に取り掛かることにした。
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