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二人の王様
第32話 爆音の方へ
しおりを挟む掃除が終わり生徒は全員席についてHRの時間になった。
「あれ? 岩崎がいないな。誰か知らないか。」
「先生、岩崎はゴミ捨てに行ってます。」
高橋 税が担任の疑問にすぐさま答えた。
「ああそうか。ゴミ捨て場が混んでいるのかもな。じゃあ今日は特になにもないからみんな帰って良いぞ。」
日直が号令の挨拶をしてHRが終わった。
ナギのこと待ってくれてもいいのに、この若い担任の精神年齢は子供のようだ。
夏休みと冬休みが待ち遠しいと以前俺達に言っていたことがある。
情けない。
建前でも言わないものなのに、だから生徒にも父兄にも不評でハズレの教師と言われている。
ナギを迎えに行こうかとも思ったけど入れ違いになったら嫌だから教室で待つことにした。
いくら混んでいるとはいえ遅すぎないか?
「修―斗☆来ちゃった☆」
ドアからひょっこりと顔を出した緒方遥を見てげんなりする。
まだあと二週間も続くのか………
「何してんの? 帰らないの?」
「ナギを待っているんだ。お前こそ帰ればいいだろ。」
「修斗がいるならボクも一緒にいる。だってボクは恋人なんだから…」
言葉の後半は尻すぼみになって消えていく。
緒方の頬がコケてやつれている様で元気がない。
体調不良で休んでいたのは本当らしい。
「…勝手にしろ。」
どおぉぉぉん!!
校舎が揺れるような音と振動がビリビリと伝わってきた。
「爆発?」
「何?何?」
「遥っ!大丈夫かっ!!」
「えっ!!なんで明央がココにいるの?ゴミ捨て場に行ってきてって言ったじゃない。」
ゴミ捨て場?
「でも…俺…遥が心配で…途中で戻ってきた」
「もーバカッ!! 折角ボクが…」
どがががーーーーーんっ!!
窓の外を見ると校舎の裏ゴミ捨て場の近くから土煙が上がる。
「な、なんだ?」
「今度のは大きいっ!!」
「アイツ等なにしてんの?」
「! おいアイツ等ってどういうことだ。」
緒方遥の両腕を掴んで詰め寄ると黙っている。
「………」
「おいっ!!」
「すみません、先輩。具合が悪いんです………遥、なにか知っているなら話して」
俺と緒方の間に白山が割って入ってくるが、コイツの胸倉を放すもんか。
「………………っ」
緒方遥は視線を逸らし誰にも目を合わせない。
悲鳴と音がまた聞こえた。
サーッと血の気が引いていく。
「まさか!」
緒方を白山に押し付けるように突き放した。
「うわっ!!」
「きゃっ!!」
教室を飛び出し、階段を駆け下りて、音がする方へと目指す。
「ナギっ!!」
俺はナギとナギのお母さんから聞いていたんだ。
ナギが可愛かったために変質者に狙われてばかりいたから誘拐や暴漢に備えて小さな頃から護身術を習っていた。
小学校を卒業する頃には大人でも勝てないほど強くなったって聞く。
中学校の頃、ナギの可愛さを利用して金儲けに使われてクラス全員に陥れられていた事がきっかけで『可愛い』と言われると暴れてしまうということも聞いていた。
ナギのお母さんからナギのことを守るように頼まれていたのに。
「間に合ってくれよ!」
この爆音の中心にはきっと………
「ナギーッ!!」
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