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二人の王様
第29話 大丈夫 ー緒方遥 目線ー
しおりを挟むああ嫌だ。
学校になんか来たくなかった。
ここには高橋先輩がいる。
絶対に会いたくない。
高橋先輩のせいで俺は汚れてしまった。
明央はボクのこと汚くないって言ってくれたけど
自分自身、汚れていると思うし、
ボクの周りにあるもの全てが汚れていると思えてきて
マスクと綿の手袋がなくちゃ怖くていられなくなっている。
「遥、大丈夫?もう1日くらい休んでも…」
「ん、大丈夫。」
明央の優しい言葉に癒やされる。
嬉しい。
明央が心配してボクを気遣って付き添ってくれる。
ボク、明央のために頑張って学校に来たんだよ。
こうやってずっとボクの傍にいて欲しい。
だけど明央が好きなのはボクじゃないんだ。
「はるか、やっと来たな。待ってたんだぞ。」
ゾッとする声とともに高橋先輩がうちのクラスの前にいるのを見つけた。
無遠慮に近づく足音が恐怖で身動きが出来ず目も離せない。
身体が小刻みに震え、胃酸が波打っているのがわかる。
怖い、気持ち悪い、怖い、気持ち悪い、吐く………
「やめて下さい。」
ボクを抱きしめると明央は大きな背中を高橋先輩に向けて隠してくれた。
!…明央
「何だお前、邪魔すんな。」
「遥は具合が悪いんだ。」
ボクは明央にギュッと抱きついた。
明央が優しく頭を撫でて大丈夫と声をかけてくれる。
「チッ、はるか 今日やるからな。お前の方も…」
「今日?!」
「時間かかり過ぎなんだよ。もう待てないんだよ。じゃあな」
勝手に動くつもり? そんなのダメだ。
計算して配置しなくちゃ全部無駄になる。
「待って!」
「なんだよ。来んのか?」
黙って頷いた。
行きたくないけどこれ以上メチャクチャにされたくない。
「遥、大丈夫なのか?俺も一緒に…」
「有難う、大丈夫だよ。」
明央に抱きしめてもらって、頭を撫でてもらって元気が出たからね。
「はるか、来い!」
「この前からはるかって勝手に呼んでますけど、やめてもらえますか?!」
「いいじゃねえか、そのうち俺の…」
高橋先輩の手が肩に触れようとするから思い切り叩いて跳ね返してやった。
「チッ、覚えてろよ。」
思っていた以上に手が痛かったらしく高橋先輩は、さすりながら睨みつけてくる。
きっと支払額が跳ね上がると思うけどコイツに触られるよりは絶対マシ!
打ち合わせにあの教室を使おうとする高橋先輩を拒否して、その前の廊下で話をすませた。
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