【BL】王様の命令は絶対っ!!

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二人の王様

第27話 洗う ー緒方遥 目線ー

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「じゃあまた、あとでね~❤」


 顔の横で可愛く手を振ると修斗と岩崎先輩が愛想よく振り返す。


 まだだ、まだ顔に出すなボク

 なんだよ、あの二人っ!!

 ボクのことなんか眼中にないみたいな感じっ!!

 ムカツク ムカツク ムカツクッ!!!!!!


「おい、待て緒方」


 ボクを呼び止めたのは大嫌いな高橋先輩の声。

 高橋先輩と話す必要はないからもちろん、無視。


「チッ」


 後からボクの腕を掴むと廊下の柱の影に押し込まれた。


「痛いっ!なにすんだよっ!離せっ!」

「そんなに怒るなよ。可愛い顔が台無しだぞ。」

「ふざけんなっ!なんだよあれ!命令の効力1ヶ月だけなんて聞いてないぞっ!!」

「俺だって知らなかったんだって、仕方ないだろ」

「今までのことが全部無駄だ。…支払いも無しだよ。」

「オイオイ、それは困る俺だけが働き損になるじゃないか。」

「じゃあなんとかしてよっ!修斗と岩崎先輩を早く別れさせてよ。」

「???別れさせるってなんだよ。」

「……鈍い。あの二人付き合ってるんだよ。」

「うえぇぇぇぇぇぇっ!!マジ?あ、まあ、まあまあな。岩崎ならイケるからな。へえええぇぇ。」


 うわー、スケベな顔でニタニタしている。

 気持ち悪い……… きっとイヤラシイ事想像しているんだ。

 最低だ。

 ………こんなやつと手を組んでいるボクも………最低………


「うひひ、いー事考えた。」


 えっ!と上を向いたボクの顎を高橋先輩が掴んで乱暴にキスをしてきた。


 !!!


 無防備な口は簡単に高橋先輩を侵入を許してしまった。

 口腔の中で舌が暴れて舐め回し、接合部分がジュプっと音をたてる。


「んんーーーんーーんーーん!!」


 口を放さない高橋先輩はボクの唾液を吸い出して飲んだかと思うと、今度は自分の唾液を大量に送り込み、ボクに無理やり飲み込さませようとする。


 いやあっ!! 気持ち悪いっっ!!


 思い切り力をこめて膝を上に突き上げると高橋先輩の急所にヒットした。

 身長差があるからかすっただけでも効果は絶大だ。

 前かがみになった高橋先輩を突き飛ばした。


「ぐぉっ…っ!!」

「いい加減にしろっ!!」

「………はるかっ…てめぇ………」


 おぞましいコイツにまたキスされて、あの臭い唾液を………


「うぷっ」

「うわっ、汚えっ!!」


 高橋先輩は嘔吐するボクからぎこちなく走って逃げていった。

 ボクはその後も嘔吐し続け昼食も何も胃の中のものは全て出してしまった。


「はぁ、はぁ、うぷっ」


 それでも吐き気は収まらず、ずっとこみ上げてくる気持ち悪さにうずくまってしまう。


「そこで何をして………どうした大丈夫か?」


 教室に向かう先生がボクの異変に気づき保健室へと連れていってくれた。



 もうダメだ。


 ボクは汚い。


 
 高橋先輩に唇も身体の中も汚されてしまった。





 保健室のベッドの中で涙が止まらなかった。











 オレンジ色の光が眩しくて目が覚めた。

 ボクはいつの間にか眠っていたらしい。 


 ここは…?保健室?なんでこんな所で寝て………


 嫌な出来事がフラッシュバックする!!


「っ、うぷっ!!」


 枕元にある歪んだ洗面器に吐くが、胃が空っぽだから胃液しか出なくて苦しい。

 胃袋がひっくり返るんじゃないかと思うほど何度もえづく。


「遥!大丈夫?!」

「明央…」


 仕切りの白いカーテンを開けて入ってきたのは白山明央。


 手にはボクの鞄と体操着を持って来てくれている。


「これのどれか飲める? 先生がお腹に優しいものにしなさいって」


 鞄の中から、水、お茶、ポカリ、コーンスープ、ネクターが出てきた。


 明央、買い過ぎ。


「有難う。」


 その中からコーンスープを貰った。ぬるかったけど優しい味わいが身体に染みる。

 自然と涙が溢れて頬を伝う。


「どうした、お腹痛い?」


 辛くて声が出ないから頭を横に振って答える。


「遥、大丈夫だ。大丈夫…」

「大丈夫じゃない。ボクは…汚れてる。ボクは汚い。ボクは…」

「遥は大丈夫、汚くない。」


 ボクの身体におったこと知らないくせに


 また涙が溢れてくる。


「もし汚れたら俺が何度でも遥を洗うから。だから泣くな。」

「!」


 明央の的外れな言葉に驚いた。

 きっと嘔吐したことで俺が落ち込んでいるんだと勘違いしているんだ。


「そっか、明央が洗ってくれるんだ。」


 悪いことに手を染めた汚れたボクを洗うことなんか出来ないのに…



 それでも明央の言葉は俺の気持ちを軽くしてくれて吐き気は治まった。

 
 
 


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