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二人の王様
第24話 助言
しおりを挟む電車を下りてやっと緒方遥から開放された。
今から学校に戻って書庫を開けようとも考えたが、学校に着く頃には門が閉まってる。
体力的にも精神的にも全身クタクタで、駅のベンチにぐったりと腰掛けた。
なんとかしてみせるなんて言ったのに、全く前に進んでいない。
王様の命令から逃れることは出来ないのか?
ナギとの幸せな学生生活のために考えろ、考えるんだ。
………くそー…全くいいアイディアが浮かばない。
こんな時、クラウンゲームに詳しい人がいたらいいのに………
クラウンゲームに詳しい人………
………いた!!
あの人なら絶対わかるはずだ!
早速電話をかけると本人ではなく別の人間が電話口に出た。
『ハーイ、おひさー、辻修斗クーン、元気にしてたか~い?』
「えっ?! 東條麗矢生徒会長?!」
『そおだヨーン♪あ、元生徒会長ダネ❤』
??? 俺、電話番号間違えたのか??
スマホの画面表示は渡辺琉仁副生徒会長になっている。
「あの…この電話って渡辺副生徒会長のですよね?いらっしゃいますか?」
『ああ、今、お風呂入ってるから、かわりに俺が電話に出たんだ。琉仁に何か用?』
なんか急に声が固いんだけど気のせいかな。
チャラ男の生徒会長より勤勉で王様もやっていた副生徒会長に話を聞きたかったんだけど、生徒会長もわかるかな?
「あの少し困ってて、クラウンゲームのルールについてお聞きしたいことが………」
『え?あ、そっちの話?なんだぁ、俺はてっきり………』
『馬鹿者!!人のスマホにまた勝手に出たなっ』
『だってだってーっっ!!』
電話の向こうが揉めている。
俺のせいかな…悪いからまた後で掛け直そうと切ろうした時
『寄越せ!もしもし?』
「あっ!ご、ご無沙汰してます。辻修斗です。」
『ああ、辻くんか、どうした?』
「おくつろぎの所すみません。先輩にお話を聞きたくて電話しました。」
『キミが電話してくるなんて珍しいな。』
「今、凄く困ってまして、クラウンゲームの命令の回避の仕方とか解りますか?」
『回避?回避は無理だと思うぞ。フォローするみたいな感じのものがあるけれど…詳しくは生徒会室にあるルールブックを読んだほうが確実だ。』
「王様に邪魔されて読ませてもらえないんです。先輩が知っている範囲で構いません。教えて下さい。」
『ふむ、相当切羽詰まってる感じだな。王様の命令でキミか岩崎くんが困っているのか。』
「はい、俺です。恋人になれと言われました。」
『なるほど、王様の命令は基本、学校の……んあっ…』
「!?どうしたんですかっ、」
『な、なんでもない………命令は…ン…学校内しかぁあっ…効力を発揮できな…い……っこのっ!やめんかぁ!馬鹿者っっっ』
ゴトンとスマホを置く音が聞こえたかと思うとその奥で、小さくバシバシとクッションかなにかが当たるような音が数回聞こえてくる…
喧嘩してるのかな?
『…っ!!どこまで話したかな?!』
電話口に戻ってきた渡辺副生徒会長は息が乱れていた。
「学校内でしか効力を発揮できないと、」
『ああそうだ、だから逆に言えば、学校の外に出たら王の命令は聞かなくて良いんだ。』
「ええっ!」
知らなかったから今日は下校まで一緒に付き合ってた。
『【恋人になれ】などの命令をされた場合は、効力は1ヶ月間だけだ。そして最低限の付き合いで良い。嫌いな人間と付き合うなんて苦痛でしかないからな。校内だとしてもキスなどの要求は応えなくていい。』
「本当ですか?!有難うございます。助かりました。」
『でも辻くんが読んでいないことがバレても面倒だ。キミが読めないなら一応信用できる友人、そうだな。岩崎くんに資料を読んでもらって確認しておいたほうが良いだろう。もし無理だったら俺の名前を出してくれても構わない。』
「はい。」
『また、困ったことがあったら、いつでも電話していいから。』
「有難うございました。」
電話を切って胸をなでおろした。
ルールブックを読ませない理由はこれだったんだ。
明日から王様と戦うぞ。
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