39 / 80
二人の王様
第15話 汚れた王様 ー緒方遥 目線ー
しおりを挟むこの場所は人気も少ない校舎の端、空き教室が多いエリア。
少子高齢化で生徒が減り、使われなくなった教室が並んでいる。
その中で、唯一鍵がかかっていない部屋に俺は放り込まれた。
「痛いって!会う約束なんかしてないんだけど。」
ここに連れてこられたのは2度目だ。
高橋先輩は部屋に鍵をかけながら、文句を言ってきた。
「………あんな奴らと何話してるんだ。」
「ファンサ…別に先輩には関係ないでしょ。」
こっちはお前より色々と忙しいんだ。
早く辻先輩を俺に夢中にさせて、岩崎先輩から引き離さなくちゃいけないんだから。
高橋先輩は苛立たしげに近くの机を蹴って積み上げられた山を崩した。
「ふん、辻修斗は落とせそうか?」
「落とせるよ。」
「途中から見ていたけど、まるっきり相手にされていないみたいだけどな。」
「そんな事ない。今日はたまたまだ。」
「本当か?困るんだよな。報酬を払わないなんてことないよな?」
「ちゃんと払うよ。それより岩崎先輩を襲ってくれる人集まったの?」
「集めたけど、あんなの成功するのかねぇ?今の所、俺だけ危ない橋を渡っているんだぜ。」
「わかってるよ。だからボクだって頑張っているんじゃないか。」
「がんばってるねぇ………少しくらい支払ってくれても良いんじゃないか?」
「少しっていくら?」
今日は1000円くらいしか持ってきてない。
「俺に、キスしろよ。」
「は?! 何いってんだ。そんなの絶対嫌だっ!! キスはダメ!!」
「身体で払うことOKしたんだから、たかだかキスぐらいでガタガタ言うなよ。」
「嫌だっ!! 他のことなら良いけどキスだけはダメだ。」
「…分かった。じゃあ頬にキスなら良いだろう。」
「頬…」
このいやらしく意地の悪さがにじみ出ている男の顔に?
「辻にはキスしていたじゃないか。」
「あれは………。」
辻先輩だから大丈夫だったんだ。
「出来ないのか?俺はばらしても良いんだぜ。俺が作った当たりメダルでお前が王様になったって。生徒会のパソコンからデータ盗み出すの大変だったなー。それに本物がスキャンされる前に一番にチェック受けろってアドバイスもしてやったよなぁ?」
嫌だ。キスなんかしたくない。だってボクは
「今までお前の事信じていた奴らも軽蔑するだろうな~~。」
イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ
「どうすんだよ!!するのかしないのかどっちなんだよっ!! お前の計画の手伝いをやめるぞ。」
返事をしないボクに嫌味から恫喝に変わった。
嫌だけど、キスするしかない。
「………わかった。頬にすれば良いんだな。」
「ああ、早くしろよ。」
高橋先輩はいつも口を開けていて口臭が酷い。
こうして話しているのも傍に行くのも嫌なのにキスなんて。
恐怖と気持ち悪さに手が震える。
一瞬だけ
一瞬だけすれば良いんだから!
自分に言い聞かせて歯をくいしばり、高橋先輩の頬にキスを………
頬に触れる瞬間、顔がぐるりと向きをかえられ、ボクは唇を奪われた。
「んんんんっ!!!」
ボクが逃げないように後頭と腰をガッチリ掴んで押し倒された。
歯列と唇の間で高橋先輩の舌がグニュグニュと走り、口の中に入ろうとしている。
「んーーーーんーーーーんんっ!!!」
塞がれた口で叫んでも誰にも届かない。
涙がとめどなく溢れ、目尻から床に溢れて落ちていく。
嫌だっ!!ボクのファーストキスがこんな奴に奪われるなんてっ!!
高橋先輩の手はいやらしくボクの身体を撫で回して、キス以上のことをしようとしてる。
いやいやっ、いやだぁぁぁっ!!
ボクは逃げたい一心で手をめちゃくちゃに振り回した。
どこに当たったかわからないが手応えがあって、すぐに高橋先輩は唇を離した。
「………っ!!」
「嘘つきっ!!キスしないって言ったのにっ!」
「………この俺を殴りやがったなっ!!」
高橋先輩が手を振り上げて殴ろうとしたとき、急にガチャガチャと教室のドアが音をたてた。
誰かがこの教室のドアを開けようとしている?!
磨りガラスに映っている大きな人影ドアを殴ってが大声で叫んだ。
『ここを開けろ!中にいるのは分かっているんだ!』
「………」
高橋先輩はボクを押し倒した姿勢で顔だけがドアの方を向いている。
先生が来たんだ!
『早くしないとドアをぶち破るぞ!!』
先生の声に怯んだ高橋先輩を押しのけて、ドアに取り付いて急いで鍵を開けた。
助けてくれた先生のはじゃない
目の前にいたのは
幼馴染の白山………
「明央ーっ!」
ボクは明央に抱きついた。
明央、明央っ!
ボクの大好きな…
「…何を…してた………」
「チッ、なんだ先コーじゃねえのか。」
「…行こ……」
教室の奥をにらみつける明央の腕を引っ張って歩き出した。
少しでも早くここから逃げたかった。
「緒方、支払いを忘れるなよ。」
「………支払い?」
「なんでもないよ。」
あんな奴とは二度と関わりたくない。
でも、ここまで来てしまったら もう後戻りはできない。
ボクはこのまま進むしかないんだ。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件
水野七緒
BL
一見チャラそうだけど、根はマジメな男子高校生・星井夏樹。
そんな彼が、ある日、現代とよく似た「別の世界(パラレルワールド)」の夏樹と入れ替わることに。
この世界の夏樹は、浮気性な上に「妹の彼氏」とお付き合いしているようで…?
※終わり方が2種類あります。9話目から分岐します。※続編「目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件」連載中です(2022.8.14)
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。
純粋な男子高校生はヤクザの組長に無理矢理恋人にされてから淫乱に変貌する
麟里(すずひ改め)
BL
《あらすじ》
ヤクザの喧嘩を運悪く目撃し目を付けられてしまった普通の高校生、葉村奏はそのまま連行されてしまう。
そこで待っていたのは組長の斧虎寿人。
奏が見た喧嘩は 、彼の恋人(男)が敵対する組の情報屋だったことが分かり本人を痛めつけてやっていたとの話だった。
恋人を失って心が傷付いていた寿人は奏を試してみるなどと言い出す。
女も未体験の奏は、寿人に抱かれて初めて自分の恋愛対象が男だと自覚する。
とはいっても、初めての相手はヤクザ。
あまり関わりたくないのだが、体の相性がとても良く、嫌だとも思わない……
微妙な関係の中で奏は寿人との繋がりを保ち続ける。
ヤクザ×高校生の、歳の差BL 。
エロ多め。
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる