【BL】王様の命令は絶対っ!!

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二人の王様

第15話 汚れた王様 ー緒方遥 目線ー 

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 この場所は人気も少ない校舎の端、空き教室が多いエリア。


 少子高齢化で生徒が減り、使われなくなった教室が並んでいる。

 その中で、唯一鍵がかかっていない部屋に俺は放り込まれた。


「痛いって!会う約束なんかしてないんだけど。」


 ここに連れてこられたのは2度目だ。

 高橋先輩は部屋に鍵をかけながら、文句を言ってきた。


「………あんな奴らと何話してるんだ。」

「ファンサ…別に先輩には関係ないでしょ。」


 こっちはお前より色々と忙しいんだ。

 早く辻先輩を俺に夢中にさせて、岩崎先輩から引き離さなくちゃいけないんだから。

 高橋先輩は苛立たしげに近くの机を蹴って積み上げられた山を崩した。


「ふん、辻修斗は落とせそうか?」


「落とせるよ。」


「途中から見ていたけど、まるっきり相手にされていないみたいだけどな。」

「そんな事ない。今日はたまたまだ。」

「本当か?困るんだよな。報酬を払わないなんてことないよな?」



「ちゃんと払うよ。それより岩崎先輩を襲ってくれる人集まったの?」

「集めたけど、あんなの成功するのかねぇ?今の所、俺だけ危ない橋を渡っているんだぜ。」

「わかってるよ。だからボクだって頑張っているんじゃないか。」

「がんばってるねぇ………少しくらい支払ってくれても良いんじゃないか?」


「少しっていくら?」


 今日は1000円くらいしか持ってきてない。



「俺に、キスしろよ。」

「は?! 何いってんだ。そんなの絶対嫌だっ!! キスはダメ!!」

「身体で払うことOKしたんだから、たかだかキスぐらいでガタガタ言うなよ。」

「嫌だっ!! 他のことなら良いけどキスだけはダメだ。」




「…分かった。じゃあ頬にキスなら良いだろう。」



「頬…」




 このいやらしく意地の悪さがにじみ出ている男の顔に?




「辻にはキスしていたじゃないか。」

「あれは………。」


 辻先輩だから大丈夫だったんだ。


「出来ないのか?俺はばらしても良いんだぜ。俺が作った当たりメダルでお前が王様になったって。生徒会のパソコンからデータ盗み出すの大変だったなー。それに本物がスキャンされる前に一番にチェック受けろってアドバイスもしてやったよなぁ?」



 嫌だ。キスなんかしたくない。だってボクは



「今までお前の事信じていた奴らも軽蔑するだろうな~~。」



 イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ



「どうすんだよ!!するのかしないのかどっちなんだよっ!! お前の計画の手伝いをやめるぞ。」



 返事をしないボクに嫌味から恫喝に変わった。



 嫌だけど、キスするしかない。


「………わかった。頬にすれば良いんだな。」

「ああ、早くしろよ。」


 

 高橋先輩はいつも口を開けていて口臭が酷い。

 こうして話しているのも傍に行くのも嫌なのにキスなんて。

 恐怖と気持ち悪さに手が震える。


 一瞬だけ

 一瞬だけすれば良いんだから!


 自分に言い聞かせて歯をくいしばり、高橋先輩の頬にキスを………



 頬に触れる瞬間、顔がぐるりと向きをかえられ、ボクは唇を奪われた。



「んんんんっ!!!」


 ボクが逃げないように後頭と腰をガッチリ掴んで押し倒された。

 歯列と唇の間で高橋先輩の舌がグニュグニュと走り、口の中に入ろうとしている。


「んーーーーんーーーーんんっ!!!」


 塞がれた口で叫んでも誰にも届かない。

 涙がとめどなく溢れ、目尻から床に溢れて落ちていく。



 嫌だっ!!ボクのファーストキスがこんな奴に奪われるなんてっ!!



 高橋先輩の手はいやらしくボクの身体を撫で回して、キス以上のことをしようとしてる。



 いやいやっ、いやだぁぁぁっ!!



 ボクは逃げたい一心で手をめちゃくちゃに振り回した。

 どこに当たったかわからないが手応えがあって、すぐに高橋先輩は唇を離した。


「………っ!!」

「嘘つきっ!!キスしないって言ったのにっ!」

「………この俺を殴りやがったなっ!!」



 高橋先輩が手を振り上げて殴ろうとしたとき、急にガチャガチャと教室のドアが音をたてた。


 誰かがこの教室のドアを開けようとしている?!


 磨りガラスに映っている大きな人影ドアを殴ってが大声で叫んだ。


『ここを開けろ!中にいるのは分かっているんだ!』



「………」




 高橋先輩はボクを押し倒した姿勢で顔だけがドアの方を向いている。


 先生が来たんだ!



『早くしないとドアをぶち破るぞ!!』



 先生の声に怯んだ高橋先輩を押しのけて、ドアに取り付いて急いで鍵を開けた。



 助けてくれた先生のはじゃない


 目の前にいたのは


 幼馴染の白山………


「明央ーっ!」


 ボクは明央に抱きついた。


 明央、明央っ!


 ボクの大好きな…



「…何を…してた………」


「チッ、なんだ先コーじゃねえのか。」

「…行こ……」


 教室の奥をにらみつける明央の腕を引っ張って歩き出した。

 少しでも早くここから逃げたかった。


「緒方、支払いを忘れるなよ。」

「………支払い?」

「なんでもないよ。」



 あんな奴とは二度と関わりたくない。


 でも、ここまで来てしまったら もう後戻りはできない。


 ボクはこのまま進むしかないんだ。
 
 
 


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