【BL】王様の命令は絶対っ!!

yao

文字の大きさ
上 下
24 / 80
王様の命令は絶対っ!!

第24話 映画館

しおりを挟む
 
 
 
映画館のエントランスに入ると朝一番の回のため 人はまばらだ。

それでもグッズショップや、フードショップには家族や恋人達が並んだ短い列が出来ている。

エントランスの中央の柱の所に、見慣れた人影を見つけた。


その人はエンジ色のジャケットにブラックパンツ、肩から掛けているショルダーバッグは赤地に白のクロスラインが入っている。


あのバッグは彼が出かける時、必ず身に着けてくる……


これは俺の脳が見せている幻なのか?


ありえない。


だってその人って…………



立ちすくんでいる俺に向こうも気が付いて、小走りでこっちにやって来た。


「……おはよう、ナギ。」

「修……斗…?」


修斗は俺の目の前で深々と頭を下げた。


「昨日はごめん。ナギの嫌がること言っちゃって俺、ナギに聞いていたのに本当にごめん。」


まぼろしじゃなくて


本当に俺の目の前に修斗がいる。


俺が悪いのに……またこんなに謝って……


涙がとめどなく頬を流れ、ぽたぽたと足元の絨毯に落ちて染みを作っていく。


「でも今日は約束の………?!……ナギ?」


修斗は絨毯の染みを見て驚いて顔を上げ、俺達の視線はやっと会った。


「修斗ぉぉぉ!!」


俺は思いっきり修斗の胸に飛び込んだ。


「ナ、ナギ?!」

「ぐすっ…うっく……ひっく……修、斗っ…ごめ…ご、めん、っ……」


泣きながら謝っているから、ちゃんと言葉になってない。

それでも修斗は解ってくれて両腕を俺の背中に回して優しく抱きしめてくれた。


「俺もごめん。本当に悪かったよ。」

「違っ、俺の方が……」

「でも初めに怒らせたのは俺だから俺が悪いんだよ。ごめんな、ナギ。」

「ううん、違う俺が……」

「………じゃあ、二人とも悪かったってことにして仲直りしよう。1つ目の命令のキャラメルポップコーン買わなくちゃな。」

「!」


修斗の胸に沈めていた顔を上げると すぐそばに嬉しそうな笑顔が俺を包み込んでいる。


「なにあれ?あの人達何してんの?」

「しっ!見ちゃ駄目よ。」


まるで痛いものを見るような親子の視線と声が刺さり俺達は我に返る。

ここが公共の場と言うことすっかり忘れていた。

慌てて抱き合った腕を放した。


もう、メチャクチャ恥ずかしい。


「ちょっと 端に行こう。」


修斗の手を掴んでぐいぐい引っ張ってエントラスのど真ん中から壁際に移動した。

昨日の最後のLIMEで修斗は……


『俺のためを思ってしたくもない命令をさせてしまって悪かった。命令は無効にしよう。無理に付き合うのはつらいだろう。もうやめにする。』


そう書いていたことを思い出して俺は恐る恐る聞いてみる。


「修斗……あの………昨日の最後のLIMEで……」

「あー、うん。ちょっと落ち込んでつい書いちゃったんだけど、その後すぐに『やっぱりさっきのなし!』って送り直そうとしたら電池切れちゃってサ……」


それなら充電したらすぐに送ればいいじゃないか、俺一晩中待っていたのに……そう思ったけど。

電源切って先に連絡たったの俺だしな………そんなこと言えない。



修斗は少し間を開けてぽつりと言った。


「………それで俺、自分自身に賭けをしたんだ。」

「賭け?」

「ナギが俺のことをまだ好きなら今日ここに来てくれる。来てくれなかったら諦めようって……」


ちょっと待て、それって……

あのまま俺が他の所に行っていたら本当に修斗と別れることになっていたっていうこと??

背中を嫌な汗が流れた。


「バカっ!!一人で勝手に決めるなっ!!」

「ごめん。でもナギはここに来てくれたじゃないか。俺……ナギの恋人になってもいいかな?」


この期に及んでまだ疑問形で聞いてくるなんて……

修斗を見つめる瞳にまた涙が溢れてくる。

でもこの涙は昨夜の悲しい涙じゃない。


「バカ……俺 意外の奴を恋人にしたら一生許してやらないからな!!」


修斗が一瞬驚いた顔をしたが、すぐにニッコリと俺に微笑みかけ


「そんなこと絶対にならないよ。ナギ以上にかわ…… じゃなかった。俺はナギしか好きになれないから。」

「!!…………ひ、人が良すぎるよ。俺 こんな意地っ張りのやつなのに……」

「俺の王様はナギだけだからさ。」

「え?」

「本当、ナギが王様で良かったと思うよ。俺が王様だったら、ポップコーンじゃなくて毎日ナギを泣かすような命令をしているかもしれないからな。」

「???俺が泣される命令???」

「あー………それはまた今度教えるよ。」

「ずるいっ!!今、教えろよーっ!!」

「え……ゴホン。それはここでは言えないよ。あ、ほら!早くしないとポップコーン買う時間なくなるぞ!!」

「あっ!待って!!」


フードカウンターに向かう修斗の背中を慌てて追いかけた。




❤おしまい❤
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので

こじらせた処女
BL
 大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。  とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

女装趣味がバレてイケメン優等生のオモチャになりました

都茉莉
BL
仁科幸成15歳、趣味−−女装。 うっかり女装バレし、クラスメイト・宮下秀次に脅されて、オモチャと称され振り回される日々が始まった。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

たとえ性別が変わっても

てと
BL
ある日。親友の性別が変わって──。 ※TS要素を含むBL作品です。

首輪をつけたら俺たちは

倉藤
BL
 家賃はいらない、その代わりペットになって欲しい。そう言って差し出された首輪を、林田蓮太郎は悩んだ末に受け取った。  貧乏大学生として日々アルバイトと節約にいそしむ林田。いつも懐は寂しく、将来への不安と絶望感が拭えない。そんなどん底の毎日を送っていたところに話しかけてきた謎の男、鬼崎亮平。男はルームシェアという形で林田に住む場所をタダで提供してくれるという。それだけならば良かったが、犬用の首輪をつけろと要求された。  林田は首輪をつけて共に暮らすことを決意する。そしてルームシェアがスタートするも、鬼崎は硬派で優しく、思っていたような展開にならない。手を出されないことに焦れた林田は自分から悪戯を仕掛けてしまった。しかしどんなに身体の距離縮めても、なぜか鬼崎の心はまだ遠くにある。———ねぇ、鬼崎さん。俺のことどう想ってるの? ◇自作の短編【ご主人様とルームシェア】を一人称表記に直して長編に書き換えたものです ◇変更点→後半部、攻めの設定等々 ◇R18シーン多めかと思われます ◇シリアス注意 他サイトにも掲載

手作りが食べられない男の子の話

こじらせた処女
BL
昔料理に媚薬を仕込まれ犯された経験から、コンビニ弁当などの封のしてあるご飯しか食べられなくなった高校生の話

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

処理中です...