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王様の命令は絶対っ!!
第2話 小さな騎士?
しおりを挟む「無理なものは無………」
「ナギ―――!!」
俺の言葉にかぶさるように大きな声で名前を呼ばれた。
「えっ!?」
二人で声の方を振り向くと修斗がこっちに向かって全速力で走ってくる。
「修斗?!」
驚いているうちに修斗は俺のすぐ横に立ち、冷ややかな目で彼女を見下ろしている。
速いなぁ息も切れていない、さすがバスケ部のレギュラーだけのことは、あるなぁと感心して見とれていた。
「その手 なに? なにしてんの?」
「え……あっ!!」
彼女が慌てて手を放すと 修斗は無言で俺との間に 身体を割り入れて来た。
「これはどういうこと?」
修斗は俺に背を向けていて全然表情が分からない。
でもこの声は確実に怒っている。
「俺が断ったら次はナギに行くんだ。」
「違うっ!違うの!! この人には修斗君のLIME IDを教えてもらおうと思って」
「!! それ、俺は断ったよね?貴女のこと好きじゃないって言ったし、しつこい人は嫌いなんだよ。もう俺達に近づかないでくれ。」
キツイ言葉を言い放った修斗に腕を掴まれて、その場から俺は連れ出される。
彼女が追いかけてくるかな? と振り向いくと木の下の小さい影は顔を覆って泣いていた。
すると、修斗の指が急に腕に食い込む。
「痛たたた!痛いよ!修斗っ!」
「わあっ、ごめん。」
指だけでバスケットボールを持てる人間に思いっきり掴まれたら痛すぎるっつーの。
「………ナギ……」
俺は渚という女の子みたいな名前にも コンプレックスがあって修斗を含む友人みんなには「ナギ」と呼んでもらっている。
友達になったその日の内にみんなにこう真剣に伝えた。
「俺は背が低いから可愛いって言われるのが何よりも大嫌いなんだ。もし、そのことで冗談でも からかうような奴らは絶交する。」
真剣過ぎたのか あの時 みんなの顔が強張っていたな。
いや、それ位じゃなくちゃ駄目だ。
中学の時みたいにはなりたくないから……。
特に修斗には……
絶対に嫌われたくない。
「なに?もー これ きっと痣になってるよ。」
「ごめん。ナギ…」
「もーいいよ。今度から気をつけてくれよな。」
「うん… あの、さっきの女の子のことだけど、あれは……」
「ああ、気にしない 気にしない。いつものことだよ。」
「いつも? いつもって?」
あっ、しまった。つい言っちゃった。
修斗はすぐにバスケ部の練習に行くから 俺の方に来ている告白の事は知らないんだった。
勝手に断っちゃってるの……内緒だったんだよね。
でも言ってしまったのはしかたない、正直に話そう。
「俺、あの子以外にも毎日女子に呼び出されているから慣れているんだ。」
「ま…毎日??!!」
「……うん。修斗の了解を取らずに断って悪かったけどLIME IDなんか勝手に教えられないからサ……ゴメン。」
「知らなかった。そんなことがあったなんて、こっちこそ迷惑かけてゴメン。」
修斗は凄く落ち込んだ顔をしている。
「ううん。これくらい迷惑でもなんでもないから。」
修斗は何も悪くないよ。俺が自分のために勝手にやっているのに謝らないでよ。
「しかしホント不思議だよね。LIME IDを入手したら彼女になれるなんて誰が思いついたんだろうね?まあ、モテる男の親友って、こんなもんじゃないのかな?」
「………ゴメン。悪かったな。」
「いいって謝んないでよ。でもさ、一番驚いたのは「Hさせてあげるから教えて」って言ってきた子には参ったよ。」
修斗の目が大きく見開き、驚いた表情で俺を見た。
え?俺なんか不味いこと言った?
はっ!!
俺は両手を顔の前で左右にバタバタと振って慌てて自分を弁護した。
「やだなぁ。そんな話に乗るわけないじゃん。もしそうだったら今頃お前のLIMEに連絡来ているだろ? 俺を信用してくれよ!な!!」
「あ……ああ、信用してるよ。………」
それから修斗は怒っているような、何か考えているような複雑な顔している。
修斗?
「………こ………じゃ…駄目だ…」
「?」
何かをつぶやいていたけど良く聞こえなかった。
鉛色の分厚い雲に覆われていた空からポツリポツリと雨が降り出して、俺達は慌てて校舎に入った。
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