巻き添えで異世界召喚させられた?!世界を救うのは主人公にまかせてモブの俺は全力で逃げたいと思います!

yao

文字の大きさ
上 下
48 / 55

46 自由人

しおりを挟む
 
 
 
 
俺が水を持って戻るとセプター様は燃え尽きてしまったボクサーの様にがっくりと項垂れてた。
 
 
「リーフ、ご苦労様。旦那様は目が覚めたようなので、食堂にお連れして」

「?…はい…。」


もー、折角持ってきた水は使わないで終わっちゃったよ。




食堂で朝食をとってもらったあと、急いでハーマンさんと一緒に馬車に乗っていただいた。

今日は特別な日だから使用人全員でお見送りする仕来りなんだってバンテール邸の使用人は少ない。

でもこうして並んでお見送りするのは素敵だな。

マリーさんの言葉とお辞儀に皆続いた。


「旦那様、行ってらっしゃいませ。」

「「「行ってらっしゃいませ。」」」


「ぅっ、っ…」



小さい呻き声が聞こえた。


馬車が門を出たところで体を起こした。


「さあ、みんな持ち場に戻って。」


体を起こした時に呻き声がした方を見ると具合の悪そうな人はいなかった。

あれは空耳かな?


「リーフ、今日は早かったから先に休憩を取っていいわよ。」

「はい、有難うございます。じゃあ俺、部屋で少し仮眠取らせてもらいます。」

「まあ、仕方ないわね。今日は特別よ。」

「有難うマリーさん。」


マリーさんの言葉に甘えて部屋に戻り、服を着たままベッドに倒れ込んだ。


「ふあ~~っ、気持ちいい。」


少し仮眠をとってからマリーさんと交代して夕食用レモネードを作ろう。

ふかふかのベッドに埋もれるとすぐ寝てしまった。



  ◇  ◇  ◇



「ちんちくりぃぃぃーーーーーん、どこだぁ!!!」

「ふゃいっ?!」


窓の外から屋敷中に響き渡る大声量で俺は起こされた。


この声はまさか


飛び起きて窓の外を見ると3階の窓の付近に青い雲が浮かんでいる。


ああ、やっぱり!
んん??
ちょっと!今って出立式に出席している時間だろう。

ガストー・サオマ、あんた自由人すぎるよ。


「ちんちくりぃぃぃーーーーーん!!!」


昨日いじめられたから会いたくないんだよなー。
でも俺はここでは使用人だし、無視も出来ないしー。
くそーっ、平民の身分が恨めしい。


虐められる覚悟で声をかけるしかなかった。


「サ、サオマ様―、なにか御用ですかー?旦那様は魔法学…」

「お!なんだ下にいたのか」


スーッと目の前に雲が降りてサオマ様の隣にはセプター様が座っている。

えっ!二人で出立式サボってきたの?
いや、違う。俺が寝過ぎちゃったのか。
どうしようっっ!!


「ちんちくりん。レモネードを飲みに来てやったぞ。」


濃い青の布地に金糸で模様を刺繍された正装のサオマ様が俺に向かってニカッと眩しく笑う。


うわああっ!!
おおお、推しじゃないけど、推しじゃないけど………ガストー・サオマのNewスチル、イイっ💗

おかげで眠気も吹っ飛んだ。


「おーい、何 ぼーっとしている。」

「はっ…失礼しました。サオマ様、レモネードのことですが…」

「ははーん、さてはちんちくりん、俺の正装が格好良かったから見とれていたんだろう。」

「はい。」


あ、つい言っちゃった。
確かに見とれてましたけど、セプター様ほどじゃないよーだ。


「リーフ、それは本当か?!俺とガストーどっちが格好良いんだ。」


なんでセプター様がうろたえてるの?
俺の推しが一番格好良いに決まってます!


「勿論、旦那様です。」

「そうか」

「主人のお前に気を使っているんだろ。殺さないから正直に言って良いんだぞ。」


ぎょっ!


「こ、殺す?!」

「なんて物騒なこと言うんだ。そんなこと絶対にさせないから大丈夫だぞ。リーフ。」

「どっちが格好いいんだ。早く正直に言えよ。」

「本当に殺しませんか?」

「そう言っているだろ。早く言え。」


言うけど怒んないでよ。


「では正直に言います。世界中で旦那様が一番格好いいです。」

「世界中…」

「チッ………ちんちくりん、レモネードを出せ。」

「あのサオマ様、申し訳ありません。レモネードはまだ作っていません。」

「………はあ?なんだよ。わざわざ飲みに来たのにないのか。」

「すみません。今からすぐにお作りして出来立てをお持ちします。」

「出来立てか…よし、セプターの部屋まで持ってこいよ。」

「畏まりました。」


急いでレモネードを作って持っていくと上機嫌のセプター様と超不機嫌のサオマ様が向い合せでテーブルに座って待っていた。
 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

転生しても山あり谷あり!

tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」 兎にも角にも今世は “おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!” を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

処理中です...