上 下
44 / 55

43 私達のための舞い降りた神 ー セプター・バンテール ー

しおりを挟む
 
 
 
 
「う、んんんーーーーー💗」


今目の前で何が起きているんだ。


俺を 貶 おとしめるための茶番ではなく、この男が本当に神子様なのか?!


ラリー殿下は人を 貶 おとしめる茶番に付き合うようなお方ではない。


「ラリー殿下っ!!殿下はもう祝福も密契も授かっていらっしゃるでしょう!!」

「ハッ!バンテールがいらないと言うなら私が貰っても良いだろう。なあ、神子。」

「………。」


神子様の頬は赤く染めて声も出せない様子。


「バンテール様、神子様は1000年に一度の凄い力を持った珍しいお方なんです。祝福を…」

「やっ、エイプっ!」

「あっ!!殿下、神子様をどこに連れて行くんですかっ!!」

「決まっているだろう。をするんだ。」

「駄目です。ラリー殿下は沢山頂いているはずです。明日から討伐に行くんですから神子様を休ませて下さい。神子様こちらへ戻って来て下さい。」


ラリー殿下を振り払ってフリーレル様にしがみついた。


「フリールお前は本当にうるさいな。神子こっちに来い!!」

「神子様、お役目があります。行っては駄目です。」

「…わかっている。」


フリーレル様の傍から動かない神子様に舌打ちをして、ラリー殿下は退室してしまった。


「さあ、バンテール様、祝福をお受け下さい。」

「私の分の祝福はラリー殿下が受けてしまわれました。明日討伐に行くのですから神子様の力を温存したほうが良いのではないのですか?」

「大丈夫ですよ。」


正直、神子様と祝福キスなどしたくない。

リーフの故郷の話を聞いた後だから尚更嫌悪感を感じる。


「神子様のお体のことが気になりますか?神子様は『聖なる乙女の儀式』をお受けになられたのでちゃんと出来ますよ。この方は私達のための舞い降りた神なんです。」

「なっ!」


なんだと?! 神子様は男性でありながらそんなことが?!!


「神子様は全ての者を受け入れられる広いお心をお持ちのお方ですから大丈夫ですよ。」

「遠慮しなくても良い。受け取れ。」

「!」


いくらこの世界を救うためとはいえ俺には出来ない。
祝福を回避するにはどうしたら良いんだ。


「神子様のお力をさずからなければ魔物討伐は出来ません。この世界のためなんですよ。バンテール様祝福を…」

「…あ、明日討伐というのに神子様の力を使わせるわけには行きません。フリーレル様、魔物を討伐するパーティーは決まっているんですか?」

「土の魔物を討伐しに行きますので、風と木の属性です。」

「そうですか、ラリー殿下のパーティーなんですね。良かった。それでは俺はみなさんが討伐に帰ってきてからで祝福をいただきます。」

「バンテール様、それでいいんですか?」

「ええ、風と木属性の皆様と神子様にご武運を」

「有難うございます。必ず魔物を倒して帰ってきます。」

「………。」


どうしても好意を持てない神子様とエイプ・フリーレル様に不快感を感じながら、丁寧に頭を下げて急いで退室する。


酷く気分が悪い、早くリーフの待つ屋敷に帰ろう。
 
 
 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル

ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。 しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。 甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。 2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

おっさん、勇者召喚されるがつま弾き...だから、のんびりと冒険する事にした

あおアンドあお
ファンタジー
ギガン城と呼ばれる城の第一王女であるリコット王女が、他の世界に住む四人の男女を 自分の世界へと召喚した。 召喚された四人の事をリコット王女は勇者と呼び、この世界を魔王の手から救ってくれと 願いを託す。 しかしよく見ると、皆の希望の目線は、この俺...城川練矢(しろかわれんや)には、 全く向けられていなかった。 何故ならば、他の三人は若くてハリもある、十代半ばの少年と少女達であり、 将来性も期待性もバッチリであったが... この城川練矢はどう見ても、しがないただの『おっさん』だったからである。 でもさ、いくらおっさんだからっていって、これはひどくないか? だって、俺を召喚したリコット王女様、全く俺に目線を合わせてこないし... 周りの兵士や神官達も蔑視の目線は勿論のこと、隠しもしない罵詈雑言な言葉を 俺に投げてくる始末。 そして挙げ句の果てには、ニヤニヤと下卑た顔をして俺の事を『ニセ勇者』と 罵って蔑ろにしてきやがる...。 元の世界に帰りたくても、ある一定の魔力が必要らしく、その魔力が貯まるまで 最低、一年はかかるとの事だ。 こんな城に一年間も居たくない俺は、町の方でのんびり待とうと決め、この城から 出ようとした瞬間... 「ぐふふふ...残念だが、そういう訳にはいかないんだよ、おっさんっ!」 ...と、蔑視し嘲笑ってくる兵士達から止められてしまうのだった。 ※小説家になろう様でも掲載しています。

【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~

すちて
ファンタジー
謎のダンジョン、真実クエスト、カウントダウン、これは、夢であるが、ただの夢ではない。――それは世界のルールが書き変わる、最初のダンジョン。  無自覚ド善人高校生、真瀬敬命が眠りにつくと、気がつけばそこはダンジョンだった。得たスキルは『ガチャ』! クラスメイトの穏やか美少女、有坂琴音と何故か共にいた見知らぬ男性2人とパーティーを組み、悪意の見え隠れする不穏な謎のダンジョンをガチャスキルを使って善人パーティーで無双攻略をしていくが…… 1部夢現《ムゲン》ダンジョン編、2部アポカリプスサウンド編、完結済。現代ダンジョンによるアポカリプスが本格的に始まるのは2部からになります。毎日12時頃更新中。楽しんで頂ければ幸いです。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

処理中です...