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42 神子様の祝福 ー セプター・バンテール ー
しおりを挟む馬車を飛ばして魔法学園の玄関につけて急いで降りて中に入っていく。
魔法学園に使えている使用人達が驚いて駆け寄ってきた。
「バンテール様、お戻りになったのですね。ご連絡をいただければお出迎えしましたのに」
「そんな事はいい、神子様にご挨拶したらすぐに帰る。どちらにいらっしゃるんだ。」
「只今神子様は身を清められておりましてお時間がかかります。」
「…っ、わかった。俺が挨拶に伺ったことを伝えてくれ。神子様の支度が整うまで自分の部屋で待つ。」
「はい。かしこまりました。」
ただでさえ女の支度には時間がかかるというのに沐浴中とは思ってもみなかった。
先に連絡を入れてから来れば良かったと後悔するが仕方ない。
ただ待つだけの時間が凄く長く感じた。
「遅い、遅すぎる。」
あれから1時間以上経つが連絡は一向に来ない。
いい加減もう沐浴は済んでいるだろうと使用人を呼びに部屋を出るとメイドが昼食を運んできた。
「お待たせしました。昼食をお持ちいたしました。」
「神子様はどうしている。」
「今はお昼食の時間ですのでお部屋で召し上がっておられます。」
「………。」
テーブルに料理が乗せられるのを制した。
「屋敷で食べてきたから必要ない。」
「失礼しました。それではお茶とお菓子をご用意致します。祝福は昼食後、神子様のお部屋で行うとのことですので準備が整いましたらお呼び致します。」
「宜しく頼む。」
使用人が出ていき、ぐったりと力が抜ける。
はあー、リーフは今何をしているだろう。早く屋敷に帰りたい。
13時になり、ようやく使用人が呼びに来た。
神子のいる部屋に案内され、大きなドアが開けられ中に入ると明るい黄緑色のドレスが目に飛び込んでくる。
大きな椅子に座った神子様は凛々しく整ったお顔立ちで、髪は短く茶色で生え際が黒い珍しい髪色、さすが神子様だ。
部屋には神官と騎士が数名おり、神子様の横には大魔道士エイプ・フリーレル様が控えておられる。
「失礼致します。神子様ご挨拶が遅れ申し訳ございません。私、水属性の剣士、セプター・バンテールと申します。」
「水属性の剣士、セプター・バンテール、宜しく頼む。私は神子 浜中幸男と申す。」
この声っ…男っ!!
挨拶が遅れた上に連絡もなしに来たから神子様がお怒りになって身代わりに男を寄越した?!
どこかでこの光景を見ているのか?!
どうすればいい、考えるんだ。
これ以上不敬をかうのも、駄目だが、このように侮辱されるのも耐えられん。
「セプター・バンテール祝福を授けよう。受け取るが良い。」
神子様に扮した男が祝福を授けるだと?
神子様から授かるのもの嫌なのに
「わ、私は、今回はご挨拶だけと思い参上いたしました。」
ドレスに身を包んだ男はゆっくりと立ち上がり俺のところまで歩いてきた。
男とキスなんか出来るかっ!!悪ふざけが過ぎる!!
「セプター・バンテール、祝福を受け取っていないのはお前だけだ。顔を上げろ。祝福を授ける。受け取るが良い。」
「………。」
繰り返される言葉に怒りで拳が震える。
遅れてきた下級貴族の俺を笑うために仕組んだのか、こんな者たちと魔物討伐なんて出来るわけない…
どうこの場を凌げば良いのか考えていると、廊下が騒がしくなった。
ドアが勢いよく開くと踵を鳴らして来たのは…
「ラリー殿下!」
「まだいたのかバンテール、祝福を受け取ったのなら早く自分の部屋に戻れ。」
「殿下、祝福はまだでございます。」
フリーレル様が急いで訂正すると、ラリー殿下の眉間に皺が寄る。
「なに?ようやく祝福を貰いに来たかと思えば、何をもたもたしている。下級貴族だから神子様の祝福は恐れ多いと思っているのか?いらないと言うならお前の分の祝福は私が貰ってやる。」
ラリー殿下は神子様を抱き寄せると躊躇うことなく唇を奪った。
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