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朝食をとったあと、領地の視察と農家の経営状況を見に行く為、馬車に乗り込んだセプター様とハーマンさん。

屋敷の使用人達が二人の乗った馬車を全員でお見送りした。


「旦那様、随分と元気がなかったなぁ。」

「本当ですね。どうしたんでしょう?朝は元気だったのに。」

「リーフ、何かあったんじゃないのか?」

「うーん、特に何もなかったと思うんですけど急にどうしたんでしょう。」

「あったわよ。リーフが明日から旦那様を起こさないって言ったのよ。」

「「「「なんでそんなこと言った?」」」」


え!?元気ないのホントにそれですか?



「だってマリーさん、朝起こすだけですよ?あまりにも仕事の効率が良くないから止めましょうって言っただけですよ。セプター様を起こしたあと俺すること何もなくてボーッと立っているだけなんだから、そんなの嫌ですよ。ハーマンさんがセプター様を起こして、その間俺は玄関の掃除とか朝食の配膳とか違う仕事した方がムダがなくて良いじゃないですか。」

「はー、わかってないな。」

「わかってないね。」


全員が渋い顔をしている。


なんだよ、言わなきゃわかんないよ。


「旦那様はリーフに起こしてもらいたいんですよ。」


なんで?と俺は首をかしげた。


「駄目だ。リーフったら鈍感過ぎる。」

「気づいてないのハーマンさんとリーフだけよ。二人共こういうの鈍いから。」

「なんですかそれ。」

「あのね、愛する人に優しく起こされて目覚めたいに決まってるでしょ。恋人なんだからそれくらい察しなさいよ。」


ふわああああーーーーーっ???!!!!


「こここここ、恋人ってなんですかっっっ!!いいい、意味わかりませんっっ!!なんで?!いつからそんな変な話になっているんです?!セプター様には運命の乙女、神子様がいるじゃないですか!!」

「ほらそれよ。」

「?どれですか?」

「リーフは使用人なのに親しげに旦那様を名前で呼んでるじゃない。旦那様は嫌がったり、やめろと注意したりしてないでしょ?」


名前で呼んでる…?……


「えーと、あの皆さんはなんて呼んでるんですか?マリーさん?」


「今言ったじゃない。旦那様よ。」





「わああああっ!!自己紹介の時、お名前聞いてそのまま呼んでたーーーっ!! 使用人なんだから名前呼びなんて駄目じゃんっ!!なんで皆言ってくれなかったんですかー!!」

「え、違うの?」


ヤバイヤバイ、ときまほ💗のヒロインが呼ぶ時のまま、名前で呼んでた。俺はモブだし、使用人なんだからそんなの馴れ馴れし過ぎるだろー。


「皆さん、すみませんでした。俺の住んでいた所では名前で呼んでいたので、癖でつい、すみませんでした。これからはちゃんと旦那様って呼びます。」

「本当に違うのかい?」


なんだよ なんだよ。みんなして疑って、ここは乙女ゲームの世界でしょ!BLじゃないでしょう!!



あ!



ドーナツとキャンディの影響が今ここに出ているのか?!?大変だ!!早く修正しないと!


「セプ…旦那様には運命の乙女、神子様がいらっしゃるんですよ。それに俺には、こ、こ、こ、婚約者がいますからありえません。」


嘘ついちゃった!!でもでもゲーム内容を軌道修正しないといけないし、俺自身を守るためだっ!!


「リーフ婚約者いるの?」

「い、います!とても可愛くて清純で素敵な女性です!俺の住んでいるところは10歳になると婚約者が決められます。んと、えっと、その約束ごとは、貞操はとても厳しくて婚約者を裏切るような事や、自分の意思でなくても不純な行為をしても されても、それは男女問わず死して償わないといけないんです。だ、だから、だから旦那様とそういうのは絶対にありえません。俺を待っている人のためにも絶対に生きて帰ります。死にたくありません。」


あれ、う、嘘が止まんなくて、なんかどんどん変な話になっちゃった。

こんなへんちくりんな嘘誰も信じて貰えなよなー。


「………リーフ、そんな厳しい掟があるところの出身だったんだ。ごめん。変なこと言って悪かったよ。」


ソーダイさんが、うるうると泣きそうな顔してる。

あれれ、信じちゃってる。えっ!皆泣いているんですけどっっ!!


「そうか、リーフの所では名前で呼ぶのが普通だったんだな。そう言えば平民は家名がないからそう呼ぶよな。」

「大丈夫よ。旦那様にはそれとなくリーフの所の掟を言っておいてあげるわ。」

「旦那様は優しいお方だからリーフの命がかかっていると知ったらわかって下さるだろう。」

「婚約者の為にも早く帰れるようになると良いね。」

「皆さん、有難うございます。」


暖かく励まされて俺、良心が痛いです。



 
 
 

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