上 下
32 / 55

31 魔法の木

しおりを挟む
 
 
 
 
 
ドーナツ3つとキャンディ4袋を買えて幸せそうなハーマンさんと、攻略対象に会って凹んでる俺を乗せた馬車はお昼を少し過ぎた頃、屋敷に戻ることが出来た。


「リーフ!だったか!」


セプター様が玄関から駆けよって俺に抱き締めた。

推しの笑顔とハグに凹んだ心が癒やされるー。


「セプター様、買えました大丈夫です!」


ちゃーんとドーナツをGETしてきましたよっっ!!

外国の人はこんなふうに全身で喜びを表すんだ。そんなに嬉しいんですね。

でもちょっと苦しいギュウギュウしすぎです。


「セプター様、ドーナツ潰れちゃいます。」

「! すまない。とてもしてたんだ。」

「心配なんて昨日一人で買いに行ったところですよ?」

「そっちの心配じゃないのだが…」


? どんな心配?

あ、買えないかも知れないと思ったんですね。


「今日は凄いんですよ!数量限定のドーナツが買えました。」

「数量限定?!」


嬉しそうに袋を受け取ると部屋まで待ちきれなくて袋を開けて中を覗いている。

どこの人でも数量限定の言葉には弱いよな、俺だってそうだ。ついつい買いたくなるよ。


「リーフ、これピンクの何?この白いのは?どっちが限定なんだ?」


少年のように目がキラキラさせて聞いてくる推しは本当に可愛いけれどここは心を鬼にして


「セプター様、今食べようとしているでしょう?お昼ごはんが食べられなくなります。楽しみはお茶の時間にとっておいたほうが美味しく食べられますよ。あーっ」

「うん、美味しい💗毎日でも食べられる。」


チョコレートドーナツはもうセプター様のお腹の中に入ってしまった。


「毎日食べたら太っちゃうから止めて下さい。まるまるとした推しは悲しいです。ファンが逃げちゃいますよ。」

「? 推し?ファン?」


やば、ついポロッとこの世界にない言葉を言っちゃったよ。


「お、俺の故郷では太った姿をを見たくないと言う意味です。」

「そうか…太った姿は見たくないか………気をつけよう。」


ふううー、なんとか誤魔化した。



昼食が終わると午後は庭師のジョンさんのお手伝いに行くことにした。

セプター様はお仕事部屋で 寛 くつろいでいて良いと言うけど、ハーマンさんと2人で仕事してる所にのに俺だけ何もしてないのは居心地悪い。

庭仕事を手伝いに行きますと言ってから出てきた。

庭師のジョンさんに仕事を下さいと言うと 箒 ほうきを渡され落ち葉を掃くように頼まれた。


「屋敷周りの落ち葉をザッと掃いたら中に戻っていいぞ。待っているみたいだから。」

「そんな事ないですよ。中に戻っても仕事がなくて手持ち無沙汰なんです。ザッとじゃなく丁寧に掃除します!」

「…あのな…………まあいい…頼んだぞ。」

「じゃあ門の方から掃いてきまーす。」


落ち葉が大量に溜まっているわけじゃないけど落葉樹がパラパラとあちこちに葉を落とすので広いお庭を毎日掃いているみたい。明日も庭掃除に来よう。

一生懸命掃いていると調理場の勝手口まで来ていた。あと半分で終わる。


俺の身長と同じ高さのレモンの木が1本植えられていてその枝にはたわわに実っている。


「いい香りだけど…ううーー、見るだけでもすっぱそうー。」


勝手口が開いてコックのソーダイさんが出てきた。


「庭掃除か、頑張れよ。」

「はい。あ、ソーダイさん、休憩時間にみんなでドーナツを食べませんか?」

「え、良いのかい?昨日だってキャンディをくれたじゃないか。」

「本当はドーナツも昨日買ってくるつもりだったんですけど、売り切れちゃったんで今日買ってきました。」

「それじゃあ、金やらねえとな。」

「大丈夫です。セプター様から頂いてますからお礼はセプター様にして下さい。」

「そうかい、楽しみにしてるよ。」


ソーダイさんがレモンの実を2つばかりもぐと、同じ場所からすぐにレモンの実がなった。


「わ、レモンの実がすぐになった。」

「珍しいだろ?これは特別な魔法がかかっている木なんだ。取ってもすぐに生えるし、実をずっとつけたままでも腐らないんだ。大昔の魔法だから今じゃこんな木は作れないらしいがね。」

「凄いですね。とってもなくならないなんて」

「ああ、凄い魔法だがコイツは酸っぱくてな。香り付けとか、ビネガー代わりにしか使えないんだ。」


………………そうだ!


「ソーダイさん、お願いがあるんですが…レモネードって作れますか?」





俺は夕食に味のついた飲み物をGETした。
 
 
 
 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【6/5完結】バンドマンと学園クイーンはいつまでもジレジレしてないでさっさとくっつけばいいと思うよ

星加のん
青春
モブキャラ気取ってるくせにバンドをやってる時は輝いてる楠木君。そんな彼と仲良くなりたいと何かと絡んでくる学園一の美少女羽深さんは、知れば知るほど残念感が漂う女の子。楠木君は羽深さんのことが大好きなのにそこはプロのDT力のなせるワザ。二人の仲をそうそう簡単には進展させてくれません。チョロいくせに卑屈で自信のないプロのDT楠木君と、スクールカーストのトップに君臨するクイーンなのにどこか残念感漂う羽深さん。そんな二人のじれったい恋路を描く青春ラブコメ、ここに爆誕!?

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

処理中です...