巻き添えで異世界召喚させられた?!世界を救うのは主人公にまかせてモブの俺は全力で逃げたいと思います！

２９ いちごのドーナツ

 
 
 
 
 
昨日と同じモスグリーンのケープを羽織り馬車に乗り込む。
 
ハーマンさんと二人きりで乗る馬車は空気が重いよっ。ここだけ重力違うよーー！？

昨日は俺に一人で床屋に行って来いって言ってたのに、大金を持たすと危険だからって急に過保護になるのおかしいでしょ？

あ！もしかして俺がお金持ち逃げすると思ったのかな?!　そんな事しませんよー。

あーあ、一人で行きたかったな。トホホ。



床屋さんでウィッグを装着してもらい、お金はハーマンさんが支払ってくれた。


「すぐにドーナツを買ってきます。」


ハーマンさんに声をかけて急いで床屋さんを出た。

今回はセプター様のお使いだから帰らないで馬車の所で待っていてくれるはずだ。

ドーナツ屋に着くと相変わらずの人気で行列が出来ていた。

でも昨日より早く来れたから列は短いし、ショーケースの中もドーナツがぎっしり詰まっている💗

良かった。これなら選び放題だ。



「ふん、この店か。」

「！！」


いつの間にかハーマンさんが後ろに立っている!!

てっきり馬車で待っているとばかり思っていたのに。

そうか、出来る執事は主人の好みの店は把握してなくちゃいけないのか、さすがハーマンさん。


「今日は列が短くて良かったです。」

「………………………………。」


ノーリアクションか―――い。


列に並ぶとすぐに順番が回ってきた。

へえー、数量限定の苺のチョコレートがかかったドーナツがある。

このドーナツだけ減りが早くて残り３つか…セプター様、喜ぶかな？


「いらっしゃい、どれにする？」

「袋を２つに分けて売って下さい。チョコ２つと、苺のチョコ1つ、粉砂糖を1つで一袋、もう一袋は苺チョコを1つ、プレーンを1つ、チョコ3つで入れて下さい。」

「はいよ。おまちどう。銅貨３枚だ。」


代金と交換でドーナツを渡してもらった。


「有難う。ハーマンさんお待たせしました。急いでか………」

「店主！」


!!　ハーマンさん、怖い顔してる！もしかしてお店にクレーム言いに来た？！


「チョコと苺チョコと粉砂糖を1つずつくれ。」


だああああっ!!
ハーマンさん買うんですかーーっっ!!

驚いてコケちゃったよ。あわわ、ドーナツ落とすかと思った。


「何だリーフ、その目は」

「いえ、何でもありません。」


苺ドーナツ、最後の１つ買えてよかったですね。


ハーマンさんがドーナツを受け取って馬車へ戻ろうと歩きだしたら背後から子供の鳴き声がする。


「うわあああぁぁぁん!! いちごのドーナツがないー!!いちごぉぉ」

「悪いな。たった今売り切れたんだ。他のにしてくれ。」

「ガンサ、仕方ないだろ他のにしろ。」


４歳位の男の子が店の前でひっくり返りハーマンさんの袋を指差して駄々を捏ねる。


「いやだぁーーー！！あのいちごのドーナツが食べたいよぉぉぉ。」


ハーマンさんは袋を急いで後ろに隠した。


ちょっと、ハーマンさん。わかるけど、大人げないよ。