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24 2人目の攻略対象
しおりを挟む床屋から出ると道には買い物客が増えて混み合いだしている。
「ハーマンはまだ馬車に戻って来てないようだから、少し町を見ていくか?」
「はい💗」
やったー。あのドーナツ屋さんに行きたかったんだ。色々買って食べくらべしようっと💗あとはー
………………
「あーーーっ!!」
「なんだ!リーフ何があった!!」
「…何でもありません…」
はあー、俺、ドーナツ屋さんに行ってもお金持ってないから、なにも買えないじゃん。
セプター様のご厚意でウィッグとか色々お金出してもらっているのに、これ以上甘えるわけにはいかないよ。
それにそんな事したら………ハーマンさんに思いっきり叱られる。
この髪で怒られるのもう確定だけどさー、ああ憂鬱ー。
「どうした?急に元気がなくなったな。」
あ、顔に出ちゃってた?俺は使用人なんだからセプター様に気を使わせちゃ駄目だ。
「元気ですよ。ほら、めちゃくちゃ元気です。セプター様、次はどこに行きますか?」
「ふむ、そういえば小腹が空いたな。何か食べようか。」
わ💗わ💗わ💗 それならドーナツ屋さんに連れてってくれないかなー💗
「あ、あー、あ、あれ? だ、誰かと思ったらバンテール様じゃないですか。(棒読み)」
濃い紫のフードを目深に被った顔が見えない怪しい人がおどおどと声をかけてきた。
ローブの胸には皇室の魔道士のマークがある。
皇室魔道士!!
失礼のないように使用人らしくセプター様の斜め後ろに控えて深々と頭を下げると俺は地面しか見えない。
「オークト様、こんなところでお会いするなんて奇遇ですね。」
オークトって、あの フェリス・オークト?!
大魔道士エイプ・フリーレルの次に治癒魔法に長けた男で、選ばれし12人のうちの一人の攻略対象じゃないかっ!!
この怪しい格好って神子様の祝福を受ける前の貴重な『もっさり』バーション?!
凄い短い期間しか出会えないレアバージョンじゃん。
見たことなかったからフェリス・オークトってわかんなかった。
やばいやばい、なんでこんな所にいるんだよ。
あなたは魔法学園でいつも薬作る為に部屋こもっている人でしょ?!
なんでこんな町中にいるのーーー!!
セプター様の後ろに隠れようと足を少しずつじりじりと横に動かして移動する。
「じょ、上級ポーションの薬草が切れたから買いに来たんです。 ま、前にお使いに行かせたら鮮度が良くなかったから。 き、今日は自分で買いに来たんです。 バ、バンテール様も何か買い物ですか?」
「急ぎの用があって…今、執事に行かせているところです。」
「そ、そうなんですか。………そ、その後ろにいる子供は誰なんですか?」
ひえええっ!! 話が急にこっち来たーーーっ!!
「………使用人だ。」
「へ、へえー。 い、今どきそんな古い視力矯正道具を使っているなんて珍しい。 こ、この辺りの子供じゃないね。」
嘘ーー、メガネでバレるなんて…はっ、そう言えばこの世界にメガネかけている人、誰もいないじゃん。
目が悪い人いないのか?!
「視力矯正道具とは?」
「め、目にかけている道具です。か、彼はそれで目を見えるようにしているんです。そ、そうでしょう?」
「リーフ、本当なのか?」
メガネを古い道具と言われてむっとしたけど、仕方無しに頷いた。
「…ファッションだとばかり思っていた。」
「は、はは、 バ、バンテール様は面白い方ですね。」
フェリス・オークトは俺達の横を見て微笑んだ。
「こ、こちらにあるのはバンテール様の馬車ですよね。 の、乗せていただけませんか。 お、お話したいことがあります。 つ、ついでに彼の目も診てあげますから、 さ、さあ、乗りましょう。」
馬車のドアを開けて待たれたら、セプター様と俺は乗り込むしかなかった。
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