上 下
9 / 55

8 誘拐? ー浜中幸男ー (改)

しおりを挟む
 






「うっ!」 

 
ズキンと突き刺すような頭の痛みで目が覚めた。


最悪の目覚め方だな、風でも引いたか?


ズキズキする頭の右上にそっと手を当てれば、強烈な痛みが走る。


全然覚えてないけど、どこかにぶつけたのか?………え?

ベ○サイユ宮殿のような部屋に天蓋付きの大きなベッドに寝かされている???なんで?


部屋の隅には、不思議な服を着た男が立派な椅子に腰掛けて船を漕いで寝ている。


誰だよ、コイツ?どう見ても知らないやつだよな?

俺の頭を殴ってこんなところに連れ込んだ変態、もしくは誘拐犯だな


起こさないようにそっとベッドを抜け出そうとすると、自分がネグリジェを着せられていることに驚く。


「なんだコレ? あたたたっ!」


自分の声がズキンと頭に響いて痛くて声を上げてしまった。


「「はっ!!」」


俺の声に驚いて男が目を覚まし、バッチリと目が合う。


ヤバイ!


「お、目覚めになられました?!」


目は逸らさずに俺は少し頷くと男は弾かれたように立ち上がり大声を上げながら部屋を出ていった。


「早く王子様にお伝えして下さい。目覚めになられました!」


扉の向こうには沢山の人がいるみたいで外が急に騒がしくなった。


変態じゃなくて誘拐犯の方か、この騒ぎ具合は人数がかなりいるぞ。

いくら俺の家が金持ちだからって高校生を誘拐するなんて頭悪すぎだろ。

この手の犯罪は成功率めちゃくちゃ低い。

身代金貰ったら、いや、身代金請求した後殺される。

逃げ出さない様にこんな恥ずかしい格好ネグリジェにしているのか。


「痛 つつ…そうはさせるか」


ドアの外が静かになった。


コスプレ男はまだ戻らない、この部屋には俺一人だけ、逃げるなら今だ。


扉に駆け寄ると、急に開いて真っ白な服を着た白髪の老人と数名のコスプレした男達が入ってきた。


「うわあああっ!」

「おお、お目覚めになられている。はじめまして私は医師のダッグ・スコープと申します。体調の方は宜しいですか?」

「えっ、あつっ………頭が痛い。」

「おお、それはいけません。ベッドで横になって私にお見せ下さい。失礼いたします。ああ、大きなこぶが出来てます。召喚の際に頭をぶつけられたのですね。大丈夫ですよ。選ばれし12人の中に大魔道士がいらっしゃいます。後でお呼びして治癒魔法をかけていただきましょう」


? 治癒魔法?何言ってんだ?


「いいから頭を冷やすもの、アイス○ンとか氷とかないの?」


医者と名乗る男達は驚いて顔を見合わせている。


「氷ですか?! 私は普通の医師なので氷作成の高等魔法は無理です。」

「高等魔法? 冷蔵庫に氷くらいあるだろ?」

「???氷をご所望なんですね。すぐに用意させましょう。誰か氷を作成できる魔道士を連れてくるように!!」

「はいっ!!」


なんだこの芝居がかって変だぞ?

ははーん、わかった。

誘拐犯かと思ったけど、これは素人を騙すドッキリだな。

最近のは凄いな、小道具や大道具がしっかりしていて凝りすぎなくらいだ。

だがここに連れてくるのに俺の頭を殴って気絶させるのはやりすぎだ。

今はカメラが回っているから後でテレビ局に講義しなくちゃな。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~

すちて
ファンタジー
謎のダンジョン、真実クエスト、カウントダウン、これは、夢であるが、ただの夢ではない。――それは世界のルールが書き変わる、最初のダンジョン。  無自覚ド善人高校生、真瀬敬命が眠りにつくと、気がつけばそこはダンジョンだった。得たスキルは『ガチャ』! クラスメイトの穏やか美少女、有坂琴音と何故か共にいた見知らぬ男性2人とパーティーを組み、悪意の見え隠れする不穏な謎のダンジョンをガチャスキルを使って善人パーティーで無双攻略をしていくが…… 1部夢現《ムゲン》ダンジョン編、2部アポカリプスサウンド編、完結済。現代ダンジョンによるアポカリプスが本格的に始まるのは2部からになります。毎日12時頃更新中。楽しんで頂ければ幸いです。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る

Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される ・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。 実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。 ※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...