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5 魔法陣の中
しおりを挟む逆立ちするような格好で魔法陣に飲み込まれて すぐに異世界に転移するかと思ったらそうじゃなかった。
中は赤、青、紫と目がチカチカするような斑模様の丸い縦長の筒状になって、ゆっくり落ちていく。
「これが異世界召喚か、思っていたのと全然ちがう。この模様はセンスないなー」
イラストレーターの性か、こんな状況でもついつい観察してしまう。
もっとキラキラしたもんだとばかり思っていたのにな。
リアルはこんなもんなのかな。
夢にまで見た異世界召喚なのにこの配色のセンスの無さにがっかりした。
浜中、俺、椅子と飲み込まれた順番に縦に降りていく。
「ざがい゛~~っっ、だずげに゛来゛でぐれ゛であ゛り゛がど~~。」
浜中は俺が助けに来たと思われたことにムカつく。
違うわっ!! お前に巻き込まれたんだわっ!!
どうやら浜中は異世界ものの作品を見たことがないみたいだな。
恐怖で涙と鼻水をダラダラ流して汚く泣いている。
「ざがい゛~~っっ。」
「手が痛いから、放してくれよ。」
「#$%&&%$$%~~」
首をブンブン振って拒絶しているのはわかるけど言っていることがわかんない。
毎日あんなに怖かった浜中が、俺の腕にしがみついて頼っている。
コイツ、すっごく小さい人間に見えるな。
俺はなんでこんなやつが怖くていじめられていたんだろう?今は全く怖くない。
光のエレベーターの先に魔法陣が見えてきた。多分あそこが着地点だ。
でもこのままで行くと俺は頭から落ちることになるから、めちゃくちゃ危険だ。
急いでエレベーターの中で体勢を入れ替えて足を下にすると、浜中は俺の腰にしがみついてきてシャツに鼻水と涙をこすりつけてきた。
「うわっ、キモチワルっ、汚いから、離れろよ。」
「や゛だ~~っっ。」
また首をブンブン振っているが、今度は鼻水がズボンと浜中の顔にべっちゃり付いて気持ち悪いーーーっ。
「まだつかないのかよー。早く地面に着いてくれ。」
魔法陣になかなか降りないなと思ったら、教室で見た魔法陣は両手を広げたくらいのサイズだったのに対して、こっちの魔法陣は直径がバレーボールコートぐらいの大きさだ。
サイズがぜんぜん違いすぎる。
「あ、足着いた。」
浜中の言葉にホッとしたのも束の間、浜中の足が着地すると光のエレベーターは消え去り、まだ空中に留まっていた俺と椅子にいきなり重力がプレゼントされた。
「うわあっ、落ちるっ。」
ゴンッ!!
渇いた板の鈍い音が聞こえて地面に浜中が倒れ、その横に椅子が落ちている。
「うわー偶然てあるもんだなー。浜中の頭に椅子が落ちてくるなんてー(棒読み)」
俺が殴ったんじゃなくて偶然 椅子が浜中の頭に着地したんだ。
けっして今までの恨みを晴らすためとか、抱きつかれた上にズボンとYシャツに涙と鼻水をつけられてムカついたからと言うわけじゃないぞ。
本当に俺が掴んでいた椅子がたまたま 浜中の頭の上に落ちただけ 偶然の出来事だ。
…と建前だけでも言っておこう。
うん💗少しだけ気持ちがスカッとした。
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