3 / 22
タイタンにて
タイタン道中膝栗毛Ⅱ
しおりを挟む
なんとも静かな宇宙船「TB-Sα」で、宇宙ではよくある日常会話が聞こえてくる。
強く鋭い床で、広く敷き詰められている、家でいうリビングの部分。
ソファーで長くもない髪をとかしながら、テレビを見て馬鹿笑いするマーシェル。非常に陽気な人間である。
そしてどうやら、テレビは地球からの衛星放送で繋がるようになっている。土星までが放送の対象距離内で、娯楽ができ喜んでいるのが見て取れるだろう。
彼女とは裏腹に、真剣なまなざしで髪の毛がさらさらと滝のようにして、遠くの木星をじっと見ているルーカス。
本来、到達する目標は土星の衛星だが、この宇宙船。なぜか進みが遅いのである。その証拠として、進行方向側を覗くと、ぽつり小さな木星がだんだんと大きくなっていくのが見て取れる。
それと、あと一人。この宇宙船にとって欠かせない人。ファット。吹き抜けの階段をこつこつ上がるとある、大きな窓からの登場。
AIによるとまだここは旅の中間地点らしい。そして彼もその事実を知り、この宇宙船の遅さに絶望すると、怒りを表にまっぴら出して顔を熱くした。
「ファットさん。あなたその顔の熱を宇宙船の燃料にしたらどう? そしたらタイタンまでひとっとびよ」
相変わらず、毒を吐く口を持つルーカス。彼に呆れを通り越してもう、バカにしていることだってある。
少しまだ怒り残っているらしく息がはっはと荒れているが、ファットは展望台の大きな窓を覗く。
「しかし、もうすぐ半分ではないか。せっかくの宇宙を楽しんで行こうじゃないか」
「言ってることがめちゃくちゃですね」
間髪を入れずに、ルーカスのツッコミが炸裂した。もう手に負えなさそうで、本当に困っているようだ。
そんなこともおかまいなしに、ファットはマーシェルが書いた「過去」へのメッセージの続きを見る。
過去の学生へ送るメッセージのことだ。2300年ともなれば、過去へ物を送ることなんて簡単なのである。
昔の人にとって、その贈り物は未来からと認知されずに、ただそこにあったものとして通常に処理される。
そうおもえば、人間は仮想上の世界で生きていたりするのか?と疑問に思うこともある。
ファットは、さっき読んだところまでを探し続きをじっくり見る。
「【あなたたちのの問題を、この時代というボーナスで解決します】......うまいこと書けてるな」
ファットの感情がまた、緩やかになった。
「【と、言いたいところですが............私は、私は............】......ん?なんだこれ」
次の文字に目をやると
「【クソ政府のクソ命令です!私は旅行だけをしに来たんだよバカ!アホ!】」
「............ゑ?」
強く鋭い床で、広く敷き詰められている、家でいうリビングの部分。
ソファーで長くもない髪をとかしながら、テレビを見て馬鹿笑いするマーシェル。非常に陽気な人間である。
そしてどうやら、テレビは地球からの衛星放送で繋がるようになっている。土星までが放送の対象距離内で、娯楽ができ喜んでいるのが見て取れるだろう。
彼女とは裏腹に、真剣なまなざしで髪の毛がさらさらと滝のようにして、遠くの木星をじっと見ているルーカス。
本来、到達する目標は土星の衛星だが、この宇宙船。なぜか進みが遅いのである。その証拠として、進行方向側を覗くと、ぽつり小さな木星がだんだんと大きくなっていくのが見て取れる。
それと、あと一人。この宇宙船にとって欠かせない人。ファット。吹き抜けの階段をこつこつ上がるとある、大きな窓からの登場。
AIによるとまだここは旅の中間地点らしい。そして彼もその事実を知り、この宇宙船の遅さに絶望すると、怒りを表にまっぴら出して顔を熱くした。
「ファットさん。あなたその顔の熱を宇宙船の燃料にしたらどう? そしたらタイタンまでひとっとびよ」
相変わらず、毒を吐く口を持つルーカス。彼に呆れを通り越してもう、バカにしていることだってある。
少しまだ怒り残っているらしく息がはっはと荒れているが、ファットは展望台の大きな窓を覗く。
「しかし、もうすぐ半分ではないか。せっかくの宇宙を楽しんで行こうじゃないか」
「言ってることがめちゃくちゃですね」
間髪を入れずに、ルーカスのツッコミが炸裂した。もう手に負えなさそうで、本当に困っているようだ。
そんなこともおかまいなしに、ファットはマーシェルが書いた「過去」へのメッセージの続きを見る。
過去の学生へ送るメッセージのことだ。2300年ともなれば、過去へ物を送ることなんて簡単なのである。
昔の人にとって、その贈り物は未来からと認知されずに、ただそこにあったものとして通常に処理される。
そうおもえば、人間は仮想上の世界で生きていたりするのか?と疑問に思うこともある。
ファットは、さっき読んだところまでを探し続きをじっくり見る。
「【あなたたちのの問題を、この時代というボーナスで解決します】......うまいこと書けてるな」
ファットの感情がまた、緩やかになった。
「【と、言いたいところですが............私は、私は............】......ん?なんだこれ」
次の文字に目をやると
「【クソ政府のクソ命令です!私は旅行だけをしに来たんだよバカ!アホ!】」
「............ゑ?」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
フォトンの記憶
小川敦人
SF
少年時代、水泳部の仲間だったサトシ、田村、有馬の三人は、ある夏の日に奇妙な青白い光を目撃する。
その後、彼らの能力は飛躍的に向上し、全国大会で輝かしい成績を収めた。
しかし、その奇跡のような出来事を境に、彼らの人生は穏やかな日常へと戻っていく。
それから61年後——。
居酒屋で酒を酌み交わしながら、彼らはふと呟く。
「あれ以来、特別なことは何もなかったな」
「けど、平凡な人生を送れたことこそが奇跡なのかもしれない」。
静かに杯を交わす三人。その時、店の外には、かつて見たような青白い光がふわりと舞い上がっていた——。
SFとノスタルジーが交錯する、運命のひとときを描いた物語。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――
EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。
そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。
そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。
そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。
そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。
果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。
未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する――
注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。
注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。
注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。
注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
シーフードミックス
黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。
以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。
ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。
内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる