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鮮明な記憶

それは二日前

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 松山君は、二日前にあることを告げられる。

 今となればもう関係のないことなのだろうか。そしてこれも、彼を「自殺」へと導く一つの鍵になる。


 推理と真実を交えてここへ書き記す。


 ――――――――――――――――――――


 彼は決して軽い病気などではなく、あの「退院日」も嘘の話。

 全ては私を呼んで思いを伝えるための......。
 私もそんな経験をしたことがある。その嘘がいけないとは言えない。

 今となってはそれでも少し怒りを覚えるが......。
 悲しみのほうが大きい時もある。


 話を戻す。


 彼は「退院日」の二日前に担当医に呼び出された。

 どう考えても恐怖だ。何を告げられるか分からない。

 恐る恐る彼は部屋へ入っていくだろう。

 普段は明るいはずだが、いま目に見える景色は、金属が周りを囲っているようなとてつもない廃墟、閉塞感がある。

 そして医者は暗そうな面持ちで彼に話しかけた。



「余命はあと、三週間だ」と。



 限りなく命が削られていた。予想していたよりもはるかに。

 あまりにも唐突で受け入れられなかっただろう。

 半年からいきなり三週間後。原因は思っていた以上に病気の深刻化。

 早期発見は現代医療でも不可能な領域だった。

 もしかすると私の病より重いのかもしれない。

 それを聞いたときはじめて私はそう思った。そのときは衝撃が勢いよく体中を駆け巡った。

 あんなに元気で、退院間近でもおかしくないような彼が、末期患者だったことが......。


 絶望の日は終わりに差し掛かろうとする。太陽も枯れ始め月が踊り始める頃。

 彼の心は月とは真逆の終わりかけの太陽―

 このままいくと三週間後に死ぬのを知ると、そこまで明るく暮らせないだろう。
 覚悟ができるまでは。

 こう見えて、私も死ぬ覚悟なんてない。今日記を書いていることが一番、生きていることを実感できると思っている。

 そしてまだ死なない。そう信じているから。




 そんな私の予想とは裏腹に―



 彼は、笑った。どっとした笑顔だ。

 そしてそれは、死ぬ一日前のこと。私が夢を見て目覚めた日。

 小雪ちゃんに引っ張られ向かった先は、彼の座っている場所。

 あれは夢のせいなのかどうなのか、私にはわからないがその「笑顔」を見て恐怖を覚えたことは、いまでも頭の中にはっきりと焼き付いている......。



 そして話は、「退院日」一日前の真実へとさしかかる。

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