窓を開くと

とさか

文字の大きさ
上 下
27 / 28
鮮明な記憶

それは二日前

しおりを挟む
 松山君は、二日前にあることを告げられる。

 今となればもう関係のないことなのだろうか。そしてこれも、彼を「自殺」へと導く一つの鍵になる。


 推理と真実を交えてここへ書き記す。


 ――――――――――――――――――――


 彼は決して軽い病気などではなく、あの「退院日」も嘘の話。

 全ては私を呼んで思いを伝えるための......。
 私もそんな経験をしたことがある。その嘘がいけないとは言えない。

 今となってはそれでも少し怒りを覚えるが......。
 悲しみのほうが大きい時もある。


 話を戻す。


 彼は「退院日」の二日前に担当医に呼び出された。

 どう考えても恐怖だ。何を告げられるか分からない。

 恐る恐る彼は部屋へ入っていくだろう。

 普段は明るいはずだが、いま目に見える景色は、金属が周りを囲っているようなとてつもない廃墟、閉塞感がある。

 そして医者は暗そうな面持ちで彼に話しかけた。



「余命はあと、三週間だ」と。



 限りなく命が削られていた。予想していたよりもはるかに。

 あまりにも唐突で受け入れられなかっただろう。

 半年からいきなり三週間後。原因は思っていた以上に病気の深刻化。

 早期発見は現代医療でも不可能な領域だった。

 もしかすると私の病より重いのかもしれない。

 それを聞いたときはじめて私はそう思った。そのときは衝撃が勢いよく体中を駆け巡った。

 あんなに元気で、退院間近でもおかしくないような彼が、末期患者だったことが......。


 絶望の日は終わりに差し掛かろうとする。太陽も枯れ始め月が踊り始める頃。

 彼の心は月とは真逆の終わりかけの太陽―

 このままいくと三週間後に死ぬのを知ると、そこまで明るく暮らせないだろう。
 覚悟ができるまでは。

 こう見えて、私も死ぬ覚悟なんてない。今日記を書いていることが一番、生きていることを実感できると思っている。

 そしてまだ死なない。そう信じているから。




 そんな私の予想とは裏腹に―



 彼は、笑った。どっとした笑顔だ。

 そしてそれは、死ぬ一日前のこと。私が夢を見て目覚めた日。

 小雪ちゃんに引っ張られ向かった先は、彼の座っている場所。

 あれは夢のせいなのかどうなのか、私にはわからないがその「笑顔」を見て恐怖を覚えたことは、いまでも頭の中にはっきりと焼き付いている......。



 そして話は、「退院日」一日前の真実へとさしかかる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

人生の行き先

Hanakappa!
青春
どこにでもある普通高校にいる1人の少女がいた。しかし、全く人と話すことができない。周りからいじめにあっており、いろいろと彼女自身で考え込んでしまい、なかなか人に言うことができないことで、自分の殻に閉じこもってしまう日々を送っていた。 何もない日々を過ごしている少女にさまざまな出来事が襲いかかる。そこに見える少女の過去とは一体なんだろうか? そしてそのことで新しい自分を見つけ出そうとする。

私の隣は、心が見えない男の子

舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。 隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。 二人はこの春から、同じクラスの高校生。 一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。 きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

処理中です...