窓を開くと

とさか

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鮮明な記憶

影の影みたいな場所

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「それでそれで......?」

 小雪ちゃんは興味津々に彼へ話しかける。

「伝えたいなぁ......。その日までには」

「その日って何?」

 松山君がこくこくと考え込んでいるが、彼女にとってその日とは何なのかが理解できない。



「....あっ。それは......」



 ............その日とは、彼の退院日であった。しかしこれは事実ではなく、私へ告白する日。


「俺がこの前退院日の話したじゃん?」

「うん」


 少し緊張した面持ちで、彼は小雪ちゃんに伝えた。

「あの子に言った退院日は、俺が好意を伝える日なんだ。本当の退院日はもっと先、いや......まだ未定」


「え......?軽い病気じゃないの?退院日もすぐそこでしょ?」

 小雪ちゃんは驚いたあと直ぐに、話を返した。騙されてたのを知って少し不満気な顔をしてしまったかもしれない。と聞いた。


「まあ、俺の病気についてはまた後で......。それより、この話を聞いて欲しい」

 彼は誤魔化すように、自分の話題になるのをもみ消して「恋」の話を続けた。


「なに、話って?」


「その嘘の退院日に、彼女を呼び出したい。多分迎えに来てくれるはず。だから小雪ちゃんはそのまま彼女を連れて、ここの部屋まで来てくれない?無理なお願いかも知れないけど、その日がベストだと思うんだ」


「............うん。わかった。本当に好きで、想いを伝えたいのなら、手伝うよ」


 小雪ちゃんは真剣な顔で、彼を見つめた。


「あと、もう一ついい?退院日一日前にみんなで集まると思うから、その時話題になったら、不自然にならないように退院する流れに持って行って......!よろしくね」


「う~ん。まあわかった。泣いたりしてみようか??」


「彼女にはちょっと悪いけど、それでよろしく」


 二人の楽しそうな計画が決まると、あとはその告白までの日を待つのみだった。





 その日までを待つのみ............のはずだった。






 彼が医師に呼び出されたのは退院日から二日前のこと。そこから地獄の扉はすでに吸い込まれるように開いていた......という。
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