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都市伝説 幻想図書館④-2

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   スクラップブックを開く。ページは自身で記した過去の幻想図書館出現地のマップ。その中で、印が少ない、または無い街や地域を巡って旅してきたつもりだったのだが…。情報が一歩遅かったようだ。骨折り損という訳だ。

「はぁーーー。まじかぁーーー」

   ガクッとその場にしゃがみ込む。昨日立てた仮説を実証しようと意気込んでいただけに、そのショックは大きかった。
   すっかり項垂うなだれたオルメカとまだ街の方を見ているソロモンを月の光が照らし始める。
   日は西に沈みきったのだ。

「…おい。オル、見てみろ。諦めるのはまだ早いかも知れないぞ」

   張り詰めたような、緊張した声に、項垂れうずくまってオルメカは顔を上げてソロモンが見ている先を見る。そして、その目に飛び込んできた光景に絶句した。

   穏やかだった風が一気に吹き荒れる。雲一つない星空だ。
   ー満月の夜に現れる。それが条件だったはず。だが、今夜は満月だっただろうか。向かい風に二人は両腕で顔を守るようにしながら、その場で踏ん張っている。そして両腕の間から様子を眺める。そこに見えた景色は、城のような形の影が伸びていた草原に、蒼い魔法陣が浮かび上がっている様。その魔法陣を中心に風が吹き荒れていた。

「…っ!魔法陣…っ!?しかも…かなり大掛かりじゃないっ!?」

   しっかりと目も開けていられない程の風だ。気を張っていないと、すぐにでも吹き飛ばされそうだった。

「…ああっ!これは…やはり月の魔力が関係する魔法…それが幻想図書館という都市伝説の正体…だった…!そういうことのようだな…っ!」

   魔法陣の中から何か現れようとしている。結晶のようなものが見えた。

「でもっ!同じ場所には現れないハズじゃなかった!?ここって一度出現した場所のはず……!」

   叫ぶ様に声を張る。風の音や周辺の木々が揺れる音でそうしないとお互いの声が聞こえない程だ。

「そうだ!だがもし…っ!それが嘘だったとしたらどうだ…!」

「嘘ぉ!?」

   ビュオオオオオオオと轟音になって二人も周辺も巻き込んで風が渦をまくように駆け巡る。とうとう二人は耐えきれなくなり、見晴らしのよかった小高い丘から移動し、崩れた館の外壁を風避けとした。元々崩壊しかけていた家具などはこの風で一気に霧散しまったようだ。正直、この風と崩壊しかけた廃村の壁では心許ないのだが、今はこれしか方法が思いつかなかった。


   その後、凄まじい風と共に魔法陣から現れたそれが、魔法陣の上空に姿を現すと、荒ぶっていた風が止み、穏やかなものになった。
   風が穏やかになった事で、二人は恐る恐る魔法陣の方を見てみる。そこには……





「あれが…!」

「…幻想図書館…なのか…」

   魔法陣があった場所の上空に浮く、空飛ぶ館のような、それも全体が結晶で覆われる様にして出来た建物が月の光に照らされて幻想的な輝きを放ちながら存在していた。
   圧倒的な存在感。だが、不思議なことに街のすぐ横の東の草原に現れたというのに、誰も他に駆けつけて来る者がいないのだ。

「ちょっと…これってどういうこと?さっきのソロモンが言ってた、宮殿跡に出現した話が嘘だったとして、今日って満月じゃないよね!?」

   思わず空を見上げる。そう、今日は丸い月だが満月では無い日。それなのに現れたという事は…。

「酒場のおばさんには悪いが、絶対条件という訳ではなかったんだろう。満月と朔の日に関するものは」

「そりゃまぁ、おばちゃんも話聞いたのから導いただけだし、絶対では無かったんだろうけどさ、嘘だったって話はどういう意味?」

   オルメカはソロモンの考えが読めず、ただ聞いてみるしかなかった。彼女自身、魔法使いではあるが魔法に関する知識ならばソロモンの方が圧倒的に上である。故に、魔法に関する事は彼に聞くほうが確実で早いのだ。

「恐らくだが、あの宮殿跡の情報もあの男の流した噂だったんだ。…どうやって出現場所を特定したのかまではわからないが」

   彼のその言葉に耳を疑った。あの情報もアイツが流した噂だという。確かに、性格上、しそうな事ではあった。と、いうのも、かの男とオルメカは旧知の中であり腐れ縁でもあり、最大のライバルでもある。その為かいつも嫌がらせのような事をしてくるのだ。

「うーん…。やりそうだ…アイツなら…」

…でもそれならアイツはいったい何処でどうやって情報を仕入れたって言うんだ。

「これは一度…アイツに会ってみる必要がありそうだね」

…正直に言おう。最早何が何だかわからない。それから、どうにも気に食わない。全部知っている誰かに躍らされているようだ。それが自分達だけなのか、世界中の人間なのかはわからないが…。

   二人がそんな会話をしていると、現れてから動きのなかった幻想図書館に変化があった。
   そう。扉が開いたのだ。それも勝手に、だ。周辺に人の影は見えないし、誰かが魔法を使ったようにも見えない。だが、これがチャンスだというのは間違いがない。
   そう思い、宙に浮かぶ幻想図書館の周囲を観察した時、光の球体が開いた扉の中に入っていくのが見えた。

「あれは…何?」
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