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第二部
誕生日パーティー5
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この鳳凰は野菜メインで作られているらしく、後でシェフ達がサラダにするそうだ。集まる人の数も考えて食べきれる量で作っているというのだから驚きだ。これも文也の入れ知恵だろう。ホール内は盛大な拍手に包まれ、フランソワさん達を賞賛する声が聞こえてくる。鳳凰は暫くこのままホール内に飾っておくそうだ。約三十分後に一度下げてサラダに作り変えるから、今の内にじっくり見たい人は近くでご覧くださいと告げてフランソワさん達は一礼した。そして、ホールの両端に注目するよう伝える。集まったお客さん達が一斉にそちらに顔を向けると、壁際に設置されたテーブルの上には様々な料理が並べられていた。小皿に盛り付けられた料理は一口サイズであるにも関わらず、どれもお洒落で綺麗だった。飾り切りだな。スープ、パン、魚料理、肉料理、サラダ、果物、スイーツ、どれも手が込んでいて近くで見たくなるけど、更に目を引くのが色鮮やかな鳥と花で飾られたお洒落なホールケーキ。テーブルの端の端にあるけど、遠くから見ても分かる。あれが文也が一から作ったというスイーツだ。スイーツ、なのか?
「彼奴の『凄くない』はやっぱり嘘だった!」
再び自由時間になり、俺は早速文也が作ったという例のスイーツを見に行った。やっぱりホールケーキだった。大きさは多分9号か10号くらい。ホールケーキ、なんだけど、飾られているものが凄い。遠くから見えていた鮮やかな鳥は孔雀だった。一羽は白、もう一羽は青と緑。デフォルメされているけど、とても手が込んでいるのが分かる。二羽の孔雀を囲むように薄紅色の牡丹と葉が飾られていて、ケーキというより芸術作品だ。孔雀も牡丹も飴細工なんだろう。ケーキの側面には白い薔薇と鈴蘭の形をしたチョコ? クリーム? が飾られていてじっくり見てしまう。メインのケーキを囲むように、ケーキ台にはいちごの飾り切りと生クリームで小さなブーケを作っている。彼奴、一通りのものは作れるって言ってたけど、飴細工やチョコレート細工? も作れるなんてどれだけハイスペックなんだよ! 趣味の範囲じゃねえだろ! 何時から彼奴はパティシエになったんだ!?
「ジャノ。フェルナンは、一体何者なんですか?」
「彼奴曰く『どこにでもいる凡人なシェフ』だそうです」
「無理がある」
「ですよねー」
これは多分、ウエディングケーキを意識して作ったんだと思う。だけど! やりすぎなんだよ! 彼奴は! 気持ちは嬉しいけどね!? 彼奴が何処を目指しているのか分からなくなる。これで今度はプロのパティシエがこの作品に一目惚れしてなんてこと、ないよな? 文也、料理で虜にするのはフランソワさんだけにしておけ! マジで!
「なんか、余計疲れた気がします」
「俺達が独占するのも悪いですからね、一旦部屋に戻りましょう。ジャノ」
「はい」
料理も大好評で、みんな好きな飲み物を楽しんでいたり、料理やスイーツを手にして美味しそうに食べたりしている。ホール内には何箇所かソファやテーブルと椅子を設置してあるから、其処に座って食べている人もいる。色鮮やかで、形も美しくて、とても美味しい。これは、大成功と言ってもいいんじゃないかな? まだパーティーは終わってないけど、特に問題なく終わりそうで安心する。ユベール様に肩を抱かれて扉へ向かっている時、前から歩いてきた人とぶつかってしまい、その衝撃で転倒しそうになる。
「ジャノ!」
「あ、ありがとうございます。ユベール様」
「大丈夫ですか!? 怪我はありませんか!?」
「俺は平気です。それよりもぶつかった人の方が……」
心配だ、と言おうとしたけど言えなかった。転んだ女性が悲鳴を上げたからだ。甘栗色の髪に、紫色の瞳をした女性。彼女を見た瞬間、俺の気持ちは一気に沈んだ。
「ぁあ! ダヴィド様から貰った大切なネックレスが! ひどいわ! ジャノさん! 態と私にぶつかってネックレスを壊すなんて!」
「…………」
平穏に、終わりたかったなあ。やっぱりこうなるのね。どうして今なの? パーティーが終わった後でいいじゃん。そんな俺の気持ちなど気にする様子もなく、ルグラン伯爵夫人は泣きながら「どうして私に意地悪をするの?」と何時も通り被害者面をする。
「貴様! またニナに手を出したな! しかも俺がニナの為に贈ったネックレスを壊すとはどういうことだ!? 責任を取れ! お前が身に付けている宝飾品全てを寄越せ! それでチャラにしてやる!」
「ダヴィド様! 私、こわかったあ。またジャノさんにいじめられて、ネックレスも壊されて……ぅう」
「大丈夫だよ。ニナ。直ぐに代わりの宝石を用意するからね」
ロイヤルの次はロイヤル・ゼロですか。そうですか。もう勘弁してほしい。ユベール様の誕生日パーティーが台無しだ。みんなこの日の為に頑張って準備してきたのに、あと少しで大成功する筈だったのに、断罪イベント発生したせいでみんなの努力が水の泡だ。はあ。
「彼奴の『凄くない』はやっぱり嘘だった!」
再び自由時間になり、俺は早速文也が作ったという例のスイーツを見に行った。やっぱりホールケーキだった。大きさは多分9号か10号くらい。ホールケーキ、なんだけど、飾られているものが凄い。遠くから見えていた鮮やかな鳥は孔雀だった。一羽は白、もう一羽は青と緑。デフォルメされているけど、とても手が込んでいるのが分かる。二羽の孔雀を囲むように薄紅色の牡丹と葉が飾られていて、ケーキというより芸術作品だ。孔雀も牡丹も飴細工なんだろう。ケーキの側面には白い薔薇と鈴蘭の形をしたチョコ? クリーム? が飾られていてじっくり見てしまう。メインのケーキを囲むように、ケーキ台にはいちごの飾り切りと生クリームで小さなブーケを作っている。彼奴、一通りのものは作れるって言ってたけど、飴細工やチョコレート細工? も作れるなんてどれだけハイスペックなんだよ! 趣味の範囲じゃねえだろ! 何時から彼奴はパティシエになったんだ!?
「ジャノ。フェルナンは、一体何者なんですか?」
「彼奴曰く『どこにでもいる凡人なシェフ』だそうです」
「無理がある」
「ですよねー」
これは多分、ウエディングケーキを意識して作ったんだと思う。だけど! やりすぎなんだよ! 彼奴は! 気持ちは嬉しいけどね!? 彼奴が何処を目指しているのか分からなくなる。これで今度はプロのパティシエがこの作品に一目惚れしてなんてこと、ないよな? 文也、料理で虜にするのはフランソワさんだけにしておけ! マジで!
「なんか、余計疲れた気がします」
「俺達が独占するのも悪いですからね、一旦部屋に戻りましょう。ジャノ」
「はい」
料理も大好評で、みんな好きな飲み物を楽しんでいたり、料理やスイーツを手にして美味しそうに食べたりしている。ホール内には何箇所かソファやテーブルと椅子を設置してあるから、其処に座って食べている人もいる。色鮮やかで、形も美しくて、とても美味しい。これは、大成功と言ってもいいんじゃないかな? まだパーティーは終わってないけど、特に問題なく終わりそうで安心する。ユベール様に肩を抱かれて扉へ向かっている時、前から歩いてきた人とぶつかってしまい、その衝撃で転倒しそうになる。
「ジャノ!」
「あ、ありがとうございます。ユベール様」
「大丈夫ですか!? 怪我はありませんか!?」
「俺は平気です。それよりもぶつかった人の方が……」
心配だ、と言おうとしたけど言えなかった。転んだ女性が悲鳴を上げたからだ。甘栗色の髪に、紫色の瞳をした女性。彼女を見た瞬間、俺の気持ちは一気に沈んだ。
「ぁあ! ダヴィド様から貰った大切なネックレスが! ひどいわ! ジャノさん! 態と私にぶつかってネックレスを壊すなんて!」
「…………」
平穏に、終わりたかったなあ。やっぱりこうなるのね。どうして今なの? パーティーが終わった後でいいじゃん。そんな俺の気持ちなど気にする様子もなく、ルグラン伯爵夫人は泣きながら「どうして私に意地悪をするの?」と何時も通り被害者面をする。
「貴様! またニナに手を出したな! しかも俺がニナの為に贈ったネックレスを壊すとはどういうことだ!? 責任を取れ! お前が身に付けている宝飾品全てを寄越せ! それでチャラにしてやる!」
「ダヴィド様! 私、こわかったあ。またジャノさんにいじめられて、ネックレスも壊されて……ぅう」
「大丈夫だよ。ニナ。直ぐに代わりの宝石を用意するからね」
ロイヤルの次はロイヤル・ゼロですか。そうですか。もう勘弁してほしい。ユベール様の誕生日パーティーが台無しだ。みんなこの日の為に頑張って準備してきたのに、あと少しで大成功する筈だったのに、断罪イベント発生したせいでみんなの努力が水の泡だ。はあ。
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