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第二部
おまけ「第二回緊急家族会議」
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ジャノ様が古代魔導具とロイヤル・ゼロを目覚めさせ、リリー様のお力で完璧なダンスと立ち振る舞いを披露したその日の夜。私はまたユベール様に呼び出された。ジャノ様はリリー様がお守りしているそうだ。そして、前回と同じくクレマン様、ラナ様、ステラ様も自分の席に座り、ユベール様が「みんな、集まってくれたな」と告げ、カッと目を見開いた。
「これより、第二回緊急家族会議を始める! 議題はこれだ!」
またですか。今回は旦那様ではなく、ユベール様が進行役なんですね。ユベール様、私は貴方の専属執事ですが、この場に私は本当に必要なのでしょうか? 聞きたくても聞けない。
「ジャノの魅力をこれ以上広めない方法を考えてほしい! これはとても重要な議題だ。真剣に考えてくれ」
無理なのでは?
ジャノ様の人柄の良さはベルトラン公爵家の全員に知れ渡っている。それに加え、ずっと眠り続けていた古代魔導具とロイヤル・ゼロをも目覚めさせてしまった。ロイヤル・ゼロ、リリー様もジャノ様を主として認めてしまったのだ。数千年もの間、眠り続けていた彼女が、だ。ジャノ様は、リリー様のお力を使えば、ダンスや礼儀作法の練習などしなくてもいいのに「自分の実力だけでユベール様の隣に立ちたい」と仰った。便利な道具が目の前にあって、それを使える権利も持っているのに。彼はリリー様のお力を「練習の最初と最後だけ協力してほしい」と、彼女にお願いしていた。
そのお姿を見たユベール様とステラ様がどうなったかは言うまでもないだろう。ジャノ様はベルトラン公爵家へ来た時から変わらない。ユベール様に頼めば欲しいものは全て手に入るのに、彼がユベール様に何かを強請る姿は見たことがない。ユベール様のことも、公爵家の次期当主や天才魔導士という肩書きには見向きもせず、ユベール様をユベール様として見て接している。それがどれだけ凄いことなのかを、ジャノ様は全く理解していない。その鈍感さが彼のいいところでもあるのかもしれないが……
「ジャノくんの素晴らしさはルグラン伯爵夫人の件で把握しているが、まさか古代魔導具とロイヤル・ゼロをも虜にしてしまうとはな」
「私達もダンスの練習をこっそり覗いてみたけど、彼の魅力は本当に危険ね。あのドレスと宝飾品もとても似合っていたわ」
「リリー様のお力で完璧な動きを一通り見たのですが、多くの方達を魅了するのは間違いありませんわ」
「だからこそ、これ以上ジャノの魅力を広める訳にはいかない! 俺の誕生日パーティーで多くの貴族達に自慢したい気持ちもあるが、俺の可憐で美しいジャノをいやらしい目で見る輩も出てくるだろうと思うと……はあ、監禁するか」
「ユベール様。本音が漏れています」
今も軟禁状態ではないだろうか、と疑問に思ったものの、後が怖いので口には出さない。ジャノ様の魅力を広めないように、というが、既に手遅れな気がするのは私だけだろうか。リゼット様もジョエル様もジャノ様のことを心から慕っておられるし、ジルベール様とそのご両親、ジョエル様の父君であるブレーズ様も彼に心から感謝している。
「誕生日パーティーに出席させない、とは言えないしなあ」
「ジャノさんには内緒にしているけれど、最後に婚約発表もするんでしょう?」
「ええ! 当然です! ジャノは俺の大切な大天使様ですから!」
「古代魔導具とロイヤル・ゼロの可能性は無限大だ。約数千年もの間、謎に包まれていたからな」
「そのリリーさんがジャノさんを主として選んだということは、これを口実にピーチクパーチク囀る五月蝿いバカど……プライドだけはバカ高い勘違いやろ、多くの貴族達が納得するのではなくて? だって、誰も目覚めさせることができなかったリリーさんを、ジャノさんは目覚めさせたのだから。この世界にたった二つしかない古代魔導具とロイヤル・ゼロを目覚めさせたという実績は絶大よ? 利用しない手はないわ!」
「その通りだな。ならば、パーティーの最後ではなく、最初にジャノくんをユベールの婚約者として紹介するのはどうだ? そうすれば口だけは達者な老が……頑固で媚を売ることしかできない無能、こほん、他の貴族達もジャノくんに手を出すようなことはしないだろう。それに、もしも何かあった時はリリーさんがジャノくんを守る筈だ」
「流石はお父様とお母様!」
「ジャノ様はとっても魅力的な方ですからね。一刻も早く坊っちゃまの正式な婚約者となっていただかなければ!」
「…………」
また、議題から離れている。「ジャノ様の魅力を広めない為にはどうすればいいか」から「一刻も早くジャノ様をユベール様の正式な婚約者にしなければ!」に変わっていませんか?
「俺の誕生日パーティーの始めに、ジャノを婚約者として発表する。異論は?」
「ないな」
「ないわね」
「ありません」
「旦那様達に同意です」
「結論は出たな。では、解散!」
この会議、三回目もあるのだろうか。正直、私はこの場に居なくてもいいような気がするのですが。次は参加しなくてもいいですか? ユベール様。
「これより、第二回緊急家族会議を始める! 議題はこれだ!」
またですか。今回は旦那様ではなく、ユベール様が進行役なんですね。ユベール様、私は貴方の専属執事ですが、この場に私は本当に必要なのでしょうか? 聞きたくても聞けない。
「ジャノの魅力をこれ以上広めない方法を考えてほしい! これはとても重要な議題だ。真剣に考えてくれ」
無理なのでは?
ジャノ様の人柄の良さはベルトラン公爵家の全員に知れ渡っている。それに加え、ずっと眠り続けていた古代魔導具とロイヤル・ゼロをも目覚めさせてしまった。ロイヤル・ゼロ、リリー様もジャノ様を主として認めてしまったのだ。数千年もの間、眠り続けていた彼女が、だ。ジャノ様は、リリー様のお力を使えば、ダンスや礼儀作法の練習などしなくてもいいのに「自分の実力だけでユベール様の隣に立ちたい」と仰った。便利な道具が目の前にあって、それを使える権利も持っているのに。彼はリリー様のお力を「練習の最初と最後だけ協力してほしい」と、彼女にお願いしていた。
そのお姿を見たユベール様とステラ様がどうなったかは言うまでもないだろう。ジャノ様はベルトラン公爵家へ来た時から変わらない。ユベール様に頼めば欲しいものは全て手に入るのに、彼がユベール様に何かを強請る姿は見たことがない。ユベール様のことも、公爵家の次期当主や天才魔導士という肩書きには見向きもせず、ユベール様をユベール様として見て接している。それがどれだけ凄いことなのかを、ジャノ様は全く理解していない。その鈍感さが彼のいいところでもあるのかもしれないが……
「ジャノくんの素晴らしさはルグラン伯爵夫人の件で把握しているが、まさか古代魔導具とロイヤル・ゼロをも虜にしてしまうとはな」
「私達もダンスの練習をこっそり覗いてみたけど、彼の魅力は本当に危険ね。あのドレスと宝飾品もとても似合っていたわ」
「リリー様のお力で完璧な動きを一通り見たのですが、多くの方達を魅了するのは間違いありませんわ」
「だからこそ、これ以上ジャノの魅力を広める訳にはいかない! 俺の誕生日パーティーで多くの貴族達に自慢したい気持ちもあるが、俺の可憐で美しいジャノをいやらしい目で見る輩も出てくるだろうと思うと……はあ、監禁するか」
「ユベール様。本音が漏れています」
今も軟禁状態ではないだろうか、と疑問に思ったものの、後が怖いので口には出さない。ジャノ様の魅力を広めないように、というが、既に手遅れな気がするのは私だけだろうか。リゼット様もジョエル様もジャノ様のことを心から慕っておられるし、ジルベール様とそのご両親、ジョエル様の父君であるブレーズ様も彼に心から感謝している。
「誕生日パーティーに出席させない、とは言えないしなあ」
「ジャノさんには内緒にしているけれど、最後に婚約発表もするんでしょう?」
「ええ! 当然です! ジャノは俺の大切な大天使様ですから!」
「古代魔導具とロイヤル・ゼロの可能性は無限大だ。約数千年もの間、謎に包まれていたからな」
「そのリリーさんがジャノさんを主として選んだということは、これを口実にピーチクパーチク囀る五月蝿いバカど……プライドだけはバカ高い勘違いやろ、多くの貴族達が納得するのではなくて? だって、誰も目覚めさせることができなかったリリーさんを、ジャノさんは目覚めさせたのだから。この世界にたった二つしかない古代魔導具とロイヤル・ゼロを目覚めさせたという実績は絶大よ? 利用しない手はないわ!」
「その通りだな。ならば、パーティーの最後ではなく、最初にジャノくんをユベールの婚約者として紹介するのはどうだ? そうすれば口だけは達者な老が……頑固で媚を売ることしかできない無能、こほん、他の貴族達もジャノくんに手を出すようなことはしないだろう。それに、もしも何かあった時はリリーさんがジャノくんを守る筈だ」
「流石はお父様とお母様!」
「ジャノ様はとっても魅力的な方ですからね。一刻も早く坊っちゃまの正式な婚約者となっていただかなければ!」
「…………」
また、議題から離れている。「ジャノ様の魅力を広めない為にはどうすればいいか」から「一刻も早くジャノ様をユベール様の正式な婚約者にしなければ!」に変わっていませんか?
「俺の誕生日パーティーの始めに、ジャノを婚約者として発表する。異論は?」
「ないな」
「ないわね」
「ありません」
「旦那様達に同意です」
「結論は出たな。では、解散!」
この会議、三回目もあるのだろうか。正直、私はこの場に居なくてもいいような気がするのですが。次は参加しなくてもいいですか? ユベール様。
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