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第一部
言い訳は通用しない2
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一部始終を見た感想は、本当に胸糞悪い。この一言に尽きる。お父様とお母様も同じ気持ちなのか、怒りや呆れなど、色々な感情が渦巻いて言葉にしたくても出来ない、という表情をしていた。自分達の行動を見られるとは思っていなかった二人は、証拠があるにも関わらずまた「ジャノさんが私に意地悪をした」と全てを彼のせいにする。責任転嫁もいいところだ。そんな嘘に俺達が騙されるとでも?
「ルグランさん。非常識なのは、貴女の方じゃなくて?」
「そ、れは……」
「既婚者の女性が夫ではない他者からドレスと宝石を強請るなど非常識だ。それに、ジャノくんの言っていることは全て正しい。彼はユベールが我が家に招き入れた客人なんですよ? そんな彼に無茶なお願いをして、ダメだと知ったら彼を悪者にして」
「貴女達はジャノさんを随分と下に見ているようだけど、一体何様なのかしら? ジャノさんに対する態度といい、私達に仕える大切な人達への態度といい、シェフに対する態度といい、図々しいにも程があるわ。貴女はルグラン伯爵の妻であって、ベルトラン公爵家の当主ではないのよ? それとも、貴女はクレマン様よりも偉いとでも言いたいのかしら?」
「そんなつもりは! 私は、ジャノさんにお願いしに来ただけで」
「これが『お願い』だと? 強奪の間違いだろう! ドレスや宝石だけに飽き足らず、レイモンくんまで欲しがるとは! 彼はユベールが認めた一流の執事なんだぞ! 我が家に必要不可欠な人材を寄越せとはどういうことだ! ルグラン伯爵家には、レイモンくんよりも優秀な執事がいるのか?」
「…………」
「本当に頭が痛いわ。ドレスや宝石も、レイモンさんも、ジャノさんが言った通り決定権はユベールとクレマン様にあるのよ? ジャノさん一人の言葉で決められる訳ないでしょう? そもそも、ユベールも私達も、彼にそんな役目を背負わせる為にベルトラン公爵家へ迎え入れた訳ではないわ。ユベールを助けてくれた恩人として、今まで苦労してきた分、この家で安心して過ごしてほしくて連れて来たのに……」
俺が言いたかったのに、全てお父様とお母様に言われてしまった。彼女達を相手にしても一切怒らず、必死に耐えていたジャノを見て二人も心を痛めたのだろう。俺だって同じだ。何が「ジャノさんはユベール様に愛されていない」だ? 物凄く愛しているに決まっているだろう! ジャノがドレスや宝石を強請った? そんな我儘を言ってくれたらいくらでも用意するに決まっている! 残念ながら、ジャノから我儘を言われたことはない。強いて言うなら外出した時に「宝石店を見てみたい」とお願いされたくらいだが、これもただ単に「宝石の価格を知っておきたいから」という理由で、欲しいからではない。ジャノが望むなら何でも購入して貢ぐのに!
「それだけでも許せないのに、クレマン様が雇っている大切な使用人を態と転ばせて『ドレスを汚したからクビにしろ』ですって?」
「そ、それは! ち、違うんです! あれは偶々足が引っかかっただけで!」
「今更言い訳が通じるとでも思っているの!? 真面目に働いている人達の仕事の邪魔をして、濡れ衣を着せて『クビにしろ』と騒ぎ立てて。貴女達は、どれだけ私達をバカにすれば気が済むの!? 貴女達のせいでジャノさんが出て行ってしまったのよ!? 私達の大切な使用人を守る為に! 背負わなくていい責任を負って!」
「君達のしたことは殺人示唆と変わらない。ジャノくんも言っていただろう? 人をクビにするということは、間接的に人を殺すことと同じだ、と。まさか、こんな簡単なことも分からないのか? ルグラン伯爵の妻であろう方が……」
「……お、脅しだと思って」
「脅してるのは貴女達じゃない! 他所様の家で我が物顔で居座って命令して偉そうな態度をとって周囲に迷惑ばかりかけて! その上『私はユベール様に愛されている』ですって? 私達の息子を侮辱しないで! 貴女は既婚者でしょう!? レイモンさんにも言い寄って、それが貴族である伯爵夫人のすることなのかしら?」
「そのドレスと宝石だって、ユベールがジャノくんの為に用意したものだ。それを強奪して身に付けて喜ぶなど信じられない。君達には人の心がないのか? ジャノくんに意地悪だ、心がないと喚いていたが、それは君達の方じゃないのか? 彼はまともなことしか言っていないし、身を呈して私達の使用人を守ってくれた。人として褒められるべきなのはどちらか、言うまでもないだろう?」
「…………」
「この部屋の内装についても口を出していたわね? 安心してください。貴女がこの部屋を利用することは未来永劫あり得ませんから!」
「この部屋はユベールの想い人の為に用意した大切な部屋だ。ユベールの部屋と隣接する部屋がどういう意味を持つのか、伯爵夫人の貴女ならお分かりだろう? そして、ユベールがその部屋で過ごすことを唯一許した存在は誰か。ジャノくんだ」
「な!」
「私達は、身分なんて気にしないわ。ユベールが八歳の頃からずっと夢中になっている方ですもの」
「今の映像を見て確信した。ユベールを任せられるのは、私達の息子を幸せにできるのは彼だけだ」
お父様とお母様に言い負かされて、ルグラン伯爵夫人は漸く現実を見るようになった。今まで散々ジャノを貶めていたのだ。当然の罰だろう。この二人はジャノを「卑しい平民だ」と決め付けてずっと踏み台にしていた。夫の愛を確かめる為、私情の鬱憤を晴らす為、何の後ろ盾もなく周囲から嫌われている平民のジャノは、彼女達にとってとても都合のいい存在だったのだろう。ずっと見下して踏み台にしてきた平民が、自分達よりも更に格上の存在、つまり俺に愛されていて気に入らなかった。自分よりも綺麗なドレスを着て、ロイヤルという特別な宝石で飾られて、周囲からも「愛されてるなあ」と言われて、その現実を受け入れたくなかった。或いは許せなかった。ジャノが自分達よりも幸せになることが。平民が自分達よりも上の存在になることが。
「もう満足でしょう? そのドレスと宝飾品をユベールに返してちょうだい」
「そんな! これは私が貰ったもので」
「まだそんな戯言を宣うのか!? いいから脱ぎなさい! 最初に着ていたドレスに着替えたら、さっさとこの家から出て行ってくれ!」
「二度と、ベルトラン公爵家には来ないでください。貴女のような問題のある方とは仲良くできないわ」
「そ、そん……わた、私は……ぅう」
ルグラン伯爵夫人が泣き崩れても誰も気にせず、お母様がカツカツと歩いて宝飾品を全て外した。女性の使用人を二人呼んで、白いシーツで簡単な壁を作ると、抵抗する彼女を無理矢理押さえ付けてドレスを脱がし、最初のドレスを着せるよう侍女に命令する。奪われたドレスと宝飾品を持って俺達の元へ戻ってくると、お母様は「隅々までクリーニングしておいてください」とレイモンにお願いした。渡されたドレスと宝飾品を大事に持ち、レイモンは「かしこまりました」と言って一礼した。
着替えを終わらせたルグラン伯爵夫人と侍女は問答無用で追い出した。最後まで被害者ぶっていたが、誰も同情などしない。彼女達はジャノを追い出そうとした敵だ。許せる筈がない。
「それで、ジャノさんは何処へ行ったの? 急いで探さないと……」
「ご安心を。あれは全てジャノ様の嘘です。私の記憶を見ていただければ」
レイモンに言われ、俺は再び魔導具を発動させる。先ほど見せたのは部屋の中だけの出来事だ。ジャノが部屋から出て行った後、レイモンと二人での会話があったそうだ。それはジャノが出て行った直後から始まっていた。使用人を守る為に自ら責任を負い、ジャノが部屋から出て行く。急いでレイモンが彼の後を追いかけると、ジャノは直ぐに見付かった。彼は背を向けたままレイモンに防音魔法をかけるよう依頼する。俺達が「何故?」と疑問に思っていると、ジャノは近くの壁に頭を預けた。
『はぁあああああああああ。ほんっとうに、つっかれたあ』
『あの、ジャノ様? 出て行くのでは?』
『あぁ。あんなの嘘ですよ。嘘』
『はあ!? 嘘!?』
『うん。だって、あの場で俺が出て行かないと、何時迄もあの女の子を責め立てるでしょ? クビにしろ! クビにしろ! って』
『……着替えている時に、教えてくだされば』
『部屋の中ですよ? 嘘だってバレたらまずいでしょう? だから気を抜けなかったんです。ごめんなさい。驚かせてしまいましたね。俺は出て行かないから、安心してください』
『本当に?』
『レイモンさん。俺が出て行くことによって駆り出される捜索隊員の人数は何人になりますか?』
『総動員されるかと』
『出て行けると思います? それに、ユベール様だって荒れるでしょう? 捜索する人達の時間を奪ってしまうのも申し訳ないし。ユベール様が帰って来るまで、俺は何処かの物置部屋に身を隠します。レイモンさん、俺が隠れられる場所ってあります?』
『……最適な場所を、知っています』
『案内してくれますか?』
『お任せください』
そして、レイモンがジャノに案内した部屋は俺の部屋だった。
『こちらでお待ちください』
『あのー、此処ってユベール様のお部屋じゃ……』
『緊急時の際には入室の許可を得ています。それと、代わりのドレスと宝飾品も早急に用意しますので』
『またドレス!?』
『ジャノ様に着せていないとユベール様が拗ねます』
『え!?』
『どうぞ。自由に過ごしてください。私は一度退室しますが、この部屋からは一歩も出ないように』
『あ、うん。それは勿論』
『では、失礼します』
『はい』
ジャノが退室した後のやり取りを見終えた俺達の気持ちはただ一つ。
「レイモン、よくやった!」
本当に、本当に優秀な執事だ。報告では聞いていたが、こうして改めて映像で見直してみるとレイモンの優秀さがよく分かる。これは特別ボーナスを与えてもいいくらいの英断だ! こんな優秀な執事を、俺が手放すと思っているのか? 無理だな。彼よりも優秀な執事は見たことがない!
「ルグランさん。非常識なのは、貴女の方じゃなくて?」
「そ、れは……」
「既婚者の女性が夫ではない他者からドレスと宝石を強請るなど非常識だ。それに、ジャノくんの言っていることは全て正しい。彼はユベールが我が家に招き入れた客人なんですよ? そんな彼に無茶なお願いをして、ダメだと知ったら彼を悪者にして」
「貴女達はジャノさんを随分と下に見ているようだけど、一体何様なのかしら? ジャノさんに対する態度といい、私達に仕える大切な人達への態度といい、シェフに対する態度といい、図々しいにも程があるわ。貴女はルグラン伯爵の妻であって、ベルトラン公爵家の当主ではないのよ? それとも、貴女はクレマン様よりも偉いとでも言いたいのかしら?」
「そんなつもりは! 私は、ジャノさんにお願いしに来ただけで」
「これが『お願い』だと? 強奪の間違いだろう! ドレスや宝石だけに飽き足らず、レイモンくんまで欲しがるとは! 彼はユベールが認めた一流の執事なんだぞ! 我が家に必要不可欠な人材を寄越せとはどういうことだ! ルグラン伯爵家には、レイモンくんよりも優秀な執事がいるのか?」
「…………」
「本当に頭が痛いわ。ドレスや宝石も、レイモンさんも、ジャノさんが言った通り決定権はユベールとクレマン様にあるのよ? ジャノさん一人の言葉で決められる訳ないでしょう? そもそも、ユベールも私達も、彼にそんな役目を背負わせる為にベルトラン公爵家へ迎え入れた訳ではないわ。ユベールを助けてくれた恩人として、今まで苦労してきた分、この家で安心して過ごしてほしくて連れて来たのに……」
俺が言いたかったのに、全てお父様とお母様に言われてしまった。彼女達を相手にしても一切怒らず、必死に耐えていたジャノを見て二人も心を痛めたのだろう。俺だって同じだ。何が「ジャノさんはユベール様に愛されていない」だ? 物凄く愛しているに決まっているだろう! ジャノがドレスや宝石を強請った? そんな我儘を言ってくれたらいくらでも用意するに決まっている! 残念ながら、ジャノから我儘を言われたことはない。強いて言うなら外出した時に「宝石店を見てみたい」とお願いされたくらいだが、これもただ単に「宝石の価格を知っておきたいから」という理由で、欲しいからではない。ジャノが望むなら何でも購入して貢ぐのに!
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「今更言い訳が通じるとでも思っているの!? 真面目に働いている人達の仕事の邪魔をして、濡れ衣を着せて『クビにしろ』と騒ぎ立てて。貴女達は、どれだけ私達をバカにすれば気が済むの!? 貴女達のせいでジャノさんが出て行ってしまったのよ!? 私達の大切な使用人を守る為に! 背負わなくていい責任を負って!」
「君達のしたことは殺人示唆と変わらない。ジャノくんも言っていただろう? 人をクビにするということは、間接的に人を殺すことと同じだ、と。まさか、こんな簡単なことも分からないのか? ルグラン伯爵の妻であろう方が……」
「……お、脅しだと思って」
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「そのドレスと宝石だって、ユベールがジャノくんの為に用意したものだ。それを強奪して身に付けて喜ぶなど信じられない。君達には人の心がないのか? ジャノくんに意地悪だ、心がないと喚いていたが、それは君達の方じゃないのか? 彼はまともなことしか言っていないし、身を呈して私達の使用人を守ってくれた。人として褒められるべきなのはどちらか、言うまでもないだろう?」
「…………」
「この部屋の内装についても口を出していたわね? 安心してください。貴女がこの部屋を利用することは未来永劫あり得ませんから!」
「この部屋はユベールの想い人の為に用意した大切な部屋だ。ユベールの部屋と隣接する部屋がどういう意味を持つのか、伯爵夫人の貴女ならお分かりだろう? そして、ユベールがその部屋で過ごすことを唯一許した存在は誰か。ジャノくんだ」
「な!」
「私達は、身分なんて気にしないわ。ユベールが八歳の頃からずっと夢中になっている方ですもの」
「今の映像を見て確信した。ユベールを任せられるのは、私達の息子を幸せにできるのは彼だけだ」
お父様とお母様に言い負かされて、ルグラン伯爵夫人は漸く現実を見るようになった。今まで散々ジャノを貶めていたのだ。当然の罰だろう。この二人はジャノを「卑しい平民だ」と決め付けてずっと踏み台にしていた。夫の愛を確かめる為、私情の鬱憤を晴らす為、何の後ろ盾もなく周囲から嫌われている平民のジャノは、彼女達にとってとても都合のいい存在だったのだろう。ずっと見下して踏み台にしてきた平民が、自分達よりも更に格上の存在、つまり俺に愛されていて気に入らなかった。自分よりも綺麗なドレスを着て、ロイヤルという特別な宝石で飾られて、周囲からも「愛されてるなあ」と言われて、その現実を受け入れたくなかった。或いは許せなかった。ジャノが自分達よりも幸せになることが。平民が自分達よりも上の存在になることが。
「もう満足でしょう? そのドレスと宝飾品をユベールに返してちょうだい」
「そんな! これは私が貰ったもので」
「まだそんな戯言を宣うのか!? いいから脱ぎなさい! 最初に着ていたドレスに着替えたら、さっさとこの家から出て行ってくれ!」
「二度と、ベルトラン公爵家には来ないでください。貴女のような問題のある方とは仲良くできないわ」
「そ、そん……わた、私は……ぅう」
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「それで、ジャノさんは何処へ行ったの? 急いで探さないと……」
「ご安心を。あれは全てジャノ様の嘘です。私の記憶を見ていただければ」
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『あの、ジャノ様? 出て行くのでは?』
『あぁ。あんなの嘘ですよ。嘘』
『はあ!? 嘘!?』
『うん。だって、あの場で俺が出て行かないと、何時迄もあの女の子を責め立てるでしょ? クビにしろ! クビにしろ! って』
『……着替えている時に、教えてくだされば』
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『本当に?』
『レイモンさん。俺が出て行くことによって駆り出される捜索隊員の人数は何人になりますか?』
『総動員されるかと』
『出て行けると思います? それに、ユベール様だって荒れるでしょう? 捜索する人達の時間を奪ってしまうのも申し訳ないし。ユベール様が帰って来るまで、俺は何処かの物置部屋に身を隠します。レイモンさん、俺が隠れられる場所ってあります?』
『……最適な場所を、知っています』
『案内してくれますか?』
『お任せください』
そして、レイモンがジャノに案内した部屋は俺の部屋だった。
『こちらでお待ちください』
『あのー、此処ってユベール様のお部屋じゃ……』
『緊急時の際には入室の許可を得ています。それと、代わりのドレスと宝飾品も早急に用意しますので』
『またドレス!?』
『ジャノ様に着せていないとユベール様が拗ねます』
『え!?』
『どうぞ。自由に過ごしてください。私は一度退室しますが、この部屋からは一歩も出ないように』
『あ、うん。それは勿論』
『では、失礼します』
『はい』
ジャノが退室した後のやり取りを見終えた俺達の気持ちはただ一つ。
「レイモン、よくやった!」
本当に、本当に優秀な執事だ。報告では聞いていたが、こうして改めて映像で見直してみるとレイモンの優秀さがよく分かる。これは特別ボーナスを与えてもいいくらいの英断だ! こんな優秀な執事を、俺が手放すと思っているのか? 無理だな。彼よりも優秀な執事は見たことがない!
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