英雄様を育てただけなのに

トキ

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眷属4※

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 各国を巡り、サクのお兄ちゃんとお姉ちゃん達とお別れの挨拶をした後、俺達は神獣の森に帰って平穏な日々を送っている。チトセ達が居なくなってサクはずっと泣いていたけど、トキワ様に慰めてもらったり、俺にくっ付いて甘えている内に元気を取り戻した。サクが甘える度にメリが嫉妬して大変だったけど、賑やかで楽しくて幸せな時間を過ごせて俺は満足している。

「ミツ……」
「ん、メリ……する、の?」
「あぁ」
「ひ、ぁ」

 俺の返事を聞くより先に胸の先を摘まれて恥ずかしい声を出してしまう。やめてと言っても止める気はなくて、手で押し返そうとしたら逆に掴まれて深く口付けられる。

「ミツ、気持ちいい?」
「ん、ふぁ、う……」
「かわいい。ミツ。どうしてほしい?」
「ぁ……メリ、おねが、した、さわって」

 ぷつ、ぷつとシャツのボタンをゆっくり外されて、直に胸の先を指で弾かれ、捏ねられ、舌先で転がされて、甘い刺激に我慢できなくてメリに強請ってしまう。隅々まで快楽を教え込まされた身体は貪欲にもっと、と求めてしまう。恥ずかしいのに、口付けや胸への刺激だけでは物足りない。

「さわるだけでいいの?」
「ひ! や、だ……いじわる、しない、で」

 緩く反応している性器に手を伸ばされたけど、その手は包むように触れるだけで直ぐに離れてしまう。先端を優しく触られて、握られたかと思ったらまた離れて……ちゃんと触ってほしいのに、メリは優しく触れるだけで刺激を与えてくれない。意地悪な質問をされて、俺は辛くて泣いてしまった。

「ごめん。ミツ。必死に俺に縋り付いてくるミツが可愛くて、もっと見たくて、意地悪してしまった。ちゃんと触るから、泣かないで」
「ん、ぁあ! メリ、いきなり、激し……ぁあ! ダメ! イく、イっちゃ。ひ、ぁああああ!」

 大きな手で激しく上下に扱かれ、先端をグリグリと刺激され、急に与えられた快楽に俺は我慢できずイってしまった。

「好きだ。ミツ。大好き。ナカ、挿れていい?」

 ぎゅう、と抱きしめられて耳元で甘やかに囁かれたら嫌とは言えない。快楽に慣らされたこの身体は一度イっただけでは満足しない。だから俺はメリを抱きしめ返して言った。

「ぅん。いれて。俺も、メリがほしい」と。

 ギシ、ギシ、と大きなベッドが激しく揺れる。寝室のベッドに寝かされて、じっくりと指で慣らされた後、メリの大きな杭を受け入れた。小刻みに揺らされたり、激しく最奥を突かれたり、かと思えば入り口付近をいじめられたり。気持ちよすぎて、俺はただ喘ぐことしかできない。

「ぁあ! ダメ! また、またイっちゃう! メリ! まって! やぁああああああ!」
「はあ、はあ。ミツの中、あつくて、とろとろで、すごく、気持ちいい。ナカに出すから、全部、全部受け入れて、はぁ、く!」
「ひ、あ! また、あついの……ぁあああああ!」

 何度イったか分からない。何回ナカに出されたかも分からない。それくらい甘やかされて、愛されて、ドロドロになるまで解放してくれなかった。やっと解放された時には意識は朦朧としていて、全身がだるくて指すら動かすことができない。

「ごめん。ミツ。また無理をさせてしまって。ゆっくり休んで」

 優しい温もりに包まれて、額にキスを落とされて、その心地良さに微睡んで、俺は意識を手放した。




 顔に柔らかなふさふさを感じた。ふわふわしていて、少しちくちくして擽ったくて身を捩る。意識はあるものの、まだ眠くて二度寝しようと思っていると、ぺちぺちと頭を叩かれた。

『みーつー! おきて! あさだよ! めりがごはんつくってまってるよ!』
「んん。まだねむい。あと、五分だけ……」
『みつ! ねちゃだめ! いっしょにごはんたべるのー!』
「サク、ごめん。先に、食べてて」
『みつもいっしょじゃなきゃやだ! おきて! おきてよ! みーつー!』
「ぅう」

 顔の近くでぴょんぴょん跳ねられて眠れる筈もなく、俺はのそりとベッドから起き上がった。身体はだるくて、腰も痛くて、喉はガラガラで正直気分は最悪だ。サクは尻尾をブンブン振って「ごはん! ごはん! みんなでごはん!」と大はしゃぎ。サクはまだ子狼の姿だからすごく可愛い。元気いっぱいのサクを抱き上げて一階に降りると、木製のテーブルには焼きたてのパン、野菜たっぷりのスープ、こんがりと焼き目の付いたベーコンに目玉焼き。美味しそうな朝食を見て、俺の腹が鳴りそうになった。

「おはよう。ミツ。身体は大丈夫?」
「うん。まだちょっとだるいけど平気」
「無理はしないでくれ。辛いなら朝食を食べた後ゆっくり休んでいいから」
「ん。ありがとう、メリ」

 そっと頬を撫でられて、気持ちよくて自然と笑みが溢れる。一瞬、メリの手が止まった気がしたけど、俺を見る目はとても優しくて、愛されているんだなあと改めて実感する。だっこしていたサクが「ごはん!」と叫んで、俺はサクをメリに預けて洗面所に向かった。顔を洗って歯を磨いて、服を着替えた後、メリが作ってくれた朝食をみんなで食べた。サクの朝食も俺達と同じものだ。サクの大きさに合わせて、少し小さめの器をメリが態々買ってきてくれたのだ。

「よく噛んで食べろと何時も言ってるだろ? サク」
『んぐ。わはっへふお』
「何言ってるのか分からないや」
「分かってるよ、だろ」
「うーん。サクはトキワ様の眷属だから普通のわんちゃんとは違うってのは分かってるけど、俺達と同じものを食べても平気なのは不思議な光景だなあ」
「サクはなんでも食べるぞ?」
「そうだね。チョコレートとか大量に食べても平気だったし」

 各国を訪れた時、お菓子とか果物とかを大量に渡された。「これは神子様であるミツル様への感謝の気持ちです」って言われちゃったら受け取らない訳にもいかないし。その中にチョコレートが入っていて、俺とメリが一口食べているとサクも食べたいとお強請りしてきたのだ。わんちゃんにチョコレートは駄目って聞いていたから俺は注意したんだけど、トキワ様から「この子は私の眷属なので何を食べても大丈夫ですよ。身体の構造が普通の動物達とは違いますので」と言われて、サクは貰ったチョコレートのほぼ全てを平らげてしまった。俺は心配で様子を見ていたけど、お腹を壊したとかぐったりしているとかは一切なく、すっごく元気に家の周辺を走り回っていた。

『めり、もっと!』
「食べ過ぎだ。少しは我慢しろ」
『まだたべたい。ねえ、おねがい! あとちょっと!』
「ダメだ。チトセとミズホから『甘やかさないでください』って言われているんだ。朝はそれでおしまい」
『だめ?』
「ダメ」
『ぅう。みつ、だめ?』
「うーん。食べ過ぎはよくないから我慢しようか。ね? サク」
『だめ?』
「う!」

 駄目だ。負けるな。サクに上目遣いされても、俺の足に前足がちょんと触れても、うるうるおめめで首をこてんって傾げられても甘やかしてはいけない。メリも心を鬼にしてサクの為を思って我慢させているんだ。それなのに俺が甘やかしたらチトセ達の努力が無駄になってしまう。だからどんなにサクの仕草が可愛くても誘惑に負けてはいけない。負けては、負け……

『みつ、だめ?』
「し、しょうがないなあ。これで最後だからね?」
「ミツ……」

 負けました。床にごろんと転がってお腹出して尻尾を振ってお強請りされたら甘やかしたくなってしまう。むしろ、こんな可愛らしい姿を見せられてごはんやおやつのおかわりを我慢させる飼い主さんはいるのだろうか。メリから責めるような視線を感じるけど、俺はまだ手を付けていないパンとベーコンをサクの器にそっと乗せた。サクは大喜びで美味しそうに食べている。かわいい。

「メリが作った料理、本当に美味しかったんだね。こんな風に食べてくれるとこっちまで嬉しい気持ちにならない?」
「だが、チトセ達から『甘やかすと付け上がる』と」
「メリだっておかわりしてたじゃん。シチューを作った日は特に」
「な! そ、それは、その……」

 そう、俺がまだ中年貴族の姿だった頃、メリは俺を警戒しつつも料理はちゃんと食べてくれていた。俺がいる前では意地を張って「これだけでいい!」と言っていたが、夜中にこっそり温め直して食べていたのを俺は知っている。朝起きて俺が聞くと「腹を空かせた野生動物が盗み食いしたんじゃねえの?」と嘘を吐いていた。嘘を誤魔化す姿が年相応で可愛らしくて、俺は「そっか」と言って騙されたフリをしていたんだよなあ。懐かしい。

「初めて食べた料理だったから気に入った?」
「今でもあの味は忘れられない。俺も何回か作ったけど、ミツの作るシチューの方が何倍も美味しい」
「ふふ。じゃあ、今日はシチューにしようか。少し多めに作って、グラタンも作ろう」
「グラタン!」
「あ、やっぱりグラタンも好きだったんだ」
「え? あ、いや、その……ミツが作る料理は全部好きだけど、初めて食べた時の感動が忘れられなくて」
「ふふ。それじゃあ、食材を買いに行ってもいい? そろそろ此処以外のところも行ってみたいから」
「それは……」
「勿論、メリとサクも一緒だよ。俺一人で出掛けるって言ったら、メリは絶対『危険だから駄目だ!』って言うんだろ?」
「当然だ! 俺はもうミツを失いたくない! 本当は、この屋敷からも出したくない!」
「だったら、メリが『此処なら大丈夫』っていう場所に連れて行って。俺はメリの傍を離れないから」
「…………」
「メリ、好きだよ。俺もメリのことが好き。メリと幸せになりたい」
「ミ、ミツ!」

 不安そうに顔を歪めるメリの両頬に手を添えて、自分から彼に口付けた。メリは、ずっと不安だったのだろう。再会した直後に俺を襲ったから。嫌がる俺の言葉を無視して無理矢理襲ったことを、今でも後悔しているのかもしれない。そんなことはない。俺だって、メリのことを愛している。最初は家族愛だった。歳の離れた弟のように、少し気難しい息子のように思っていた。あんな傷だらけで、ガリガリに痩せて、大人はみんな敵だと警戒する姿を見て、仕方なくなんて、神様のお願いだからなんて考えは直ぐに吹っ飛んだ。美味しいものを沢山食べてほしい。清潔な服を着てほしい。柔らかなベッドで眠ってほしい。心から笑ってほしい。俺のやり方が正解だったのかは分からない。ただの同情心だと言われても否定はしない。実際、同情心もあったから。でも、それでも、俺は少しずつ元気になるメリを見るだけで幸せな気持ちになれたんだ。

「今度は、ずっと一緒にいるよ。俺はメリから離れない。これだけ言っても不安は消えない?」

 メリは立ち上がって俺のところまで来ると、無言のまま強く抱きしめた。

「ミツが嫌だって思っても、もう絶対に離さないから」
「離れないって言ってるだろ?」
「うん」
「それじゃあ、買い物に行こうか」
「…………」
「行こうよ。買い物」

 そんなに俺を外に出したくないのか。愛されていると喜べばいいのか、心配性で過保護なことに嘆けばいいのか。その後、サクが「おでかけ! おでかけ!」とはしゃいで、超絶きゅーとなポーズでお強請りしたらメリは渋々外出を許してくれた。サクに対して俺は甘いって言ってたけど、メリも相当サクに甘いと思う。
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