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第4章
デート
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抵抗と言う抵抗も出来ず、夕は街へ連れ出され、ユリウスの背中に隠れるようにして街中を歩いた。周囲から感じる視線。行く先々でまじまじと見られ、夕は来て早々城に帰りたくなった。
「わぁ、すごく、きれい」
「気になる所が有ったら遠慮せずに言えよ。案内する」
「本当ですか!? で、でも、迷惑じゃ……」
「迷惑な訳ねえだろ? 俺はお前の喜ぶ顔が見たいんだ」
格好いい台詞を言っているが、リベルテの表情は緩んでいた。部屋の中で見た時も可愛かったが、太陽の光が降り注ぐ街中で見るシンジュは、より一層可愛かった。鈴が着せたワンピースも、装飾品も、シンジュにとてもよく似合っている。
「僕も……す、すき、です」
「シンジュ?」
「リ、リベルさまの笑った顔が、す、好きです!」
「う!」
頬を赤く染めて一生懸命自分の思いを告げるシンジュ。あまりにも可愛くて、周囲の視線も気にせず、リベルテはシンジュを強く抱き締めた。顔を真っ赤にして、嬉しそうに微笑むリベルテと、恥ずかしいけれど、リベルテの笑顔が見れて嬉しいシンジュ。二人の雰囲気はとても甘い。
「…………」
そんな甘い二人の様子を眺めながら、夕はずっと下を向いたままユリウスの背中に隠れていた。最初にこの世界に来た時、黒い髪と黒い目は忌み嫌われる対象だと聞かされた。この世界に来て早々、牢屋に閉じ込められ、鈴に助けられた後も、容姿について周囲から色々と言われ続けた。
もし、この世界にたった1人でやって来たら、夕は耐え切れなかったかもしれない。周囲の視線や言葉を気にせずにいられるのは、鈴が隣に居てくれるから。
しかし、今此処に頼りになる鈴は居ない。城であれ程軽蔑されたのだから、それが街中となれば更に酷い仕打ちを受けるかもしれない。変装もせず、ありのままの姿を晒して堂々と歩ける程、肝は備わっていない。余計に敵視されると分かっていても、夕はユリウスに頼るしかなかった。
「ユウ?」
「す、すすす、済みません! ごめんなさい! 厚かましいのは分かってます! 迷惑だと言うのも分かってます! でも、でもっ……」
街の人達が怖い。
何を言われるか分からない。どんな目で見られるか分からない。不安ばかりが募り、まともに歩く事も出来ず、夕は立ち竦んだ。回らない頭で必死に考えていると、ユリウスに優しく手を引かれ、隣に立たされる。
夕が不安そうにユリウスを見詰めると、自然な動きで夕の腰にもう片方の手を回し、そっと抱き寄せた。
「ひゃ!? あ、あああ、あ、あのっ、ゆ、ユリウス、さ……」
「大丈夫です。何があっても、俺が貴方を護ります」
「あ、う」
「だから、笑ってください」
「…………」
恐怖心が一気に吹き飛び、羞恥心で顔が赤くなる。何度も何度も優しい声で「大丈夫」とユリウスに囁かれ、夕は今直ぐ鈴の所へ逃げたくなった。
様々なお店が並ぶ街を見て、シンジュは目を輝かせてリベルテに聞いていた。リベルテも嬉しそうに答え、気になるお店があれば2人で入り、楽しそうに話して商品を見ている。シンジュに誘われたが、夕はやんわりと断ってお店の外の隅に佇んだ。
「入らないのですか?」
「お、俺は良いです。その、視線が……」
「…………」
街中でも、お店の中でも、四人はとても目立っていた。一国の王子様が街中を歩いているのだ。目立たない方が可笑しい。国民から愛されているユリウスに熱い視線を向ける者は多く、中には声をかけてくる者も居た。頬を赤く染め、恥ずかしそうにユリウスに話しかけ、うっとりと見詰める。
ユリウスが優しく微笑むだけで、周囲の人々は黄色い歓声をあげる。そんな人気者の隣に立つ夕の精神は崩壊寸前だった。
街について詳しいリベルテは当然、街の人々と面識があり、とても仲が良い。人にあまり慣れていないシンジュも最初は不安そうな表情をしていたが、リベルテが嬉しそうに紹介すると、街の人々もシンジュの事を褒めていた。
ユリウスは格好良く、リベルテは親しみやすく、シンジュは健気で可愛い。容姿も良く、性格も良い。そんな3人と一緒に居る自分が、とても場違いなのではないか、と不安になり、夕は3人と少しだけ距離を置いて歩いていた。
自分を見てヒソヒソと話す声。物珍しそうに見る周囲の目。何を話しているかは分からないが、夕は申し訳ない気持ちになった。
「黒い色は不吉の象徴って聞いてたのに、鬘くらいして来れば良かったですね」
以前、黒髪のまま街へ出た時、周囲からとても恐れられた。その時はリベルテが上手く説明してくれたお陰で馴染む事が出来たが、全ての人が納得する訳ではない。鈴に無理矢理街中へ連れ出された時も、夕はあまり歓迎されていなかった。
鈴やリベルテが居た時は、あまり気にしなかったが、その二人が居ないと思った途端、急に怖くなった。リベルテはシンジュと楽しそうに買い物を楽しんでいる。鈴は城に残り、クラウスの仕事を手伝っている。そうなると、必然的にユリウスと一緒になってしまう。
ユリウスと一緒になると言う事は、周囲から注目を浴びると言う事。何もかも完璧なユリウスの隣に居るのが、自分何かで申し訳ない、と夕は思っていた。
「ユウ」
酷く落ち込み、俯いていると、ユリウスから名前を呼ばれ、ビクリと肩が震える。そっと頬に手を添えられ、夕は強く目を閉じた。頬から手が離れ、優しく抱き寄せられる。
「ぁ、う」
「大丈夫。こうすれば、貴方の姿は私にしか見えません」
夕の姿を隠すように抱き締めるユリウスに、夕は顔を赤くして咄嗟に俯いた。恥ずかしそうに小さな声で「ありがとうございます」とお礼を言うと、ユリウスは愛おしさが募り、更に強く抱き締めた。
「わぁ、すごく、きれい」
「気になる所が有ったら遠慮せずに言えよ。案内する」
「本当ですか!? で、でも、迷惑じゃ……」
「迷惑な訳ねえだろ? 俺はお前の喜ぶ顔が見たいんだ」
格好いい台詞を言っているが、リベルテの表情は緩んでいた。部屋の中で見た時も可愛かったが、太陽の光が降り注ぐ街中で見るシンジュは、より一層可愛かった。鈴が着せたワンピースも、装飾品も、シンジュにとてもよく似合っている。
「僕も……す、すき、です」
「シンジュ?」
「リ、リベルさまの笑った顔が、す、好きです!」
「う!」
頬を赤く染めて一生懸命自分の思いを告げるシンジュ。あまりにも可愛くて、周囲の視線も気にせず、リベルテはシンジュを強く抱き締めた。顔を真っ赤にして、嬉しそうに微笑むリベルテと、恥ずかしいけれど、リベルテの笑顔が見れて嬉しいシンジュ。二人の雰囲気はとても甘い。
「…………」
そんな甘い二人の様子を眺めながら、夕はずっと下を向いたままユリウスの背中に隠れていた。最初にこの世界に来た時、黒い髪と黒い目は忌み嫌われる対象だと聞かされた。この世界に来て早々、牢屋に閉じ込められ、鈴に助けられた後も、容姿について周囲から色々と言われ続けた。
もし、この世界にたった1人でやって来たら、夕は耐え切れなかったかもしれない。周囲の視線や言葉を気にせずにいられるのは、鈴が隣に居てくれるから。
しかし、今此処に頼りになる鈴は居ない。城であれ程軽蔑されたのだから、それが街中となれば更に酷い仕打ちを受けるかもしれない。変装もせず、ありのままの姿を晒して堂々と歩ける程、肝は備わっていない。余計に敵視されると分かっていても、夕はユリウスに頼るしかなかった。
「ユウ?」
「す、すすす、済みません! ごめんなさい! 厚かましいのは分かってます! 迷惑だと言うのも分かってます! でも、でもっ……」
街の人達が怖い。
何を言われるか分からない。どんな目で見られるか分からない。不安ばかりが募り、まともに歩く事も出来ず、夕は立ち竦んだ。回らない頭で必死に考えていると、ユリウスに優しく手を引かれ、隣に立たされる。
夕が不安そうにユリウスを見詰めると、自然な動きで夕の腰にもう片方の手を回し、そっと抱き寄せた。
「ひゃ!? あ、あああ、あ、あのっ、ゆ、ユリウス、さ……」
「大丈夫です。何があっても、俺が貴方を護ります」
「あ、う」
「だから、笑ってください」
「…………」
恐怖心が一気に吹き飛び、羞恥心で顔が赤くなる。何度も何度も優しい声で「大丈夫」とユリウスに囁かれ、夕は今直ぐ鈴の所へ逃げたくなった。
様々なお店が並ぶ街を見て、シンジュは目を輝かせてリベルテに聞いていた。リベルテも嬉しそうに答え、気になるお店があれば2人で入り、楽しそうに話して商品を見ている。シンジュに誘われたが、夕はやんわりと断ってお店の外の隅に佇んだ。
「入らないのですか?」
「お、俺は良いです。その、視線が……」
「…………」
街中でも、お店の中でも、四人はとても目立っていた。一国の王子様が街中を歩いているのだ。目立たない方が可笑しい。国民から愛されているユリウスに熱い視線を向ける者は多く、中には声をかけてくる者も居た。頬を赤く染め、恥ずかしそうにユリウスに話しかけ、うっとりと見詰める。
ユリウスが優しく微笑むだけで、周囲の人々は黄色い歓声をあげる。そんな人気者の隣に立つ夕の精神は崩壊寸前だった。
街について詳しいリベルテは当然、街の人々と面識があり、とても仲が良い。人にあまり慣れていないシンジュも最初は不安そうな表情をしていたが、リベルテが嬉しそうに紹介すると、街の人々もシンジュの事を褒めていた。
ユリウスは格好良く、リベルテは親しみやすく、シンジュは健気で可愛い。容姿も良く、性格も良い。そんな3人と一緒に居る自分が、とても場違いなのではないか、と不安になり、夕は3人と少しだけ距離を置いて歩いていた。
自分を見てヒソヒソと話す声。物珍しそうに見る周囲の目。何を話しているかは分からないが、夕は申し訳ない気持ちになった。
「黒い色は不吉の象徴って聞いてたのに、鬘くらいして来れば良かったですね」
以前、黒髪のまま街へ出た時、周囲からとても恐れられた。その時はリベルテが上手く説明してくれたお陰で馴染む事が出来たが、全ての人が納得する訳ではない。鈴に無理矢理街中へ連れ出された時も、夕はあまり歓迎されていなかった。
鈴やリベルテが居た時は、あまり気にしなかったが、その二人が居ないと思った途端、急に怖くなった。リベルテはシンジュと楽しそうに買い物を楽しんでいる。鈴は城に残り、クラウスの仕事を手伝っている。そうなると、必然的にユリウスと一緒になってしまう。
ユリウスと一緒になると言う事は、周囲から注目を浴びると言う事。何もかも完璧なユリウスの隣に居るのが、自分何かで申し訳ない、と夕は思っていた。
「ユウ」
酷く落ち込み、俯いていると、ユリウスから名前を呼ばれ、ビクリと肩が震える。そっと頬に手を添えられ、夕は強く目を閉じた。頬から手が離れ、優しく抱き寄せられる。
「ぁ、う」
「大丈夫。こうすれば、貴方の姿は私にしか見えません」
夕の姿を隠すように抱き締めるユリウスに、夕は顔を赤くして咄嗟に俯いた。恥ずかしそうに小さな声で「ありがとうございます」とお礼を言うと、ユリウスは愛おしさが募り、更に強く抱き締めた。
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