神子のおまけの脇役平凡、異世界でもアップルパイを焼く

トキ

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第3章

王族の血筋

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「と言う事がありまして、彼が私に言ったんです。『水不足で貧困に苦しんでしいる地域があるから、其処に住む貧しい人達を助けて下さい』とね」
「ふぅん。成る程なぁ。だから街の人達はあんなにも喜んでたのか」

 以前、アップルパイを貧しい人々に配りに行った時、リベルテが来た途端、子ども達は大喜びし、大人達もリベルテにとても好意的だった。あまりにも人気者のリベルテに疑問を抱いていたが、昔から貧しい人々を助けていたのなら納得だ。

「圧勝したって言ってたが、戦ったのか?」
「いいえ。戦ってはいませんが『人として惨敗した』と彼が仰ったので」
「戦った訳じゃないのか」
「だから言いたくなかったんだよ。彼奴、二度と来るなって言ったのに、何度も何度も孤児院に来るし『俺の負けだ』とか訳の分からねぇ事言い出すし……」
「剣術や体術じゃなくて言葉で勝った訳か」
「いえ、そちらの部門でも勝ってますよ」
「は?」
「そうですよね? リベル?」

 にっこり。楽しそうに語るクラウスにリベルテが殺意を覚えたのは言うまでもない。夕と鈴に「どう言う事だ?」と聞かれ、シンジュからも聞きたいと言うオーラを出され、リベルテは渋々説明した。

 リベルテがユリウスの弟だと知られても、孤児院の人達は気にする様子もなく普通に接してくれていた。時々騎士団長が孤児院に訪れ、現状を聞きに来るが何も問題なく平和に過ごしていた。

 しかし、突然リベルテは騎士団長に拉致され、強制的に城に戻されてしまった。死んだと思っていたリベルテの登場に、城内は大混乱した。

「お前から国の事を話せ」と言われ、連れて来られたのは兄弟喧嘩真っ最中のユリウスの前。憎くて憎くて仕方ない相手に話をする気にはなれなかったが、ユリウスに話す事で少しでも孤児院の子ども達が幸せになれるならと、渋々ユリウスに国の地形や貧しい地域、犯罪が多い地域、盗賊が現れやすい地域等を事細かに説明した。

 全て話し終え、これで帰れると思ったリベルテに騎士団長は言った。

「此処に残って、共にユリウス様を支えよう」と。馴れ馴れしく肩に手を置く騎士団長。当然、リベルテは肩に乗った手をバシッと払い除け……

「はっ? 冗談じゃねぇ」

 不機嫌な顔をして即答した。そんなリベルテの態度に、周囲に居た者達はリベルテを批判した。かなり人が集まっていた所で言ってしまったと気付いても時既に遅く、リベルテに対する風当たりは更に強くなった。





 騎士団長が急にリベルテと仲良くしている事が、他の騎士達は気に入らず、ずっとリベルテに嫌がらせをしていた。しかし、リベルテは全く気にする様子もなく、騎士団長に言っても「彼奴は良い奴だ」と言ってリベルテから離れなかった。そして、不満が積もりに積もった結果、何故か騎士団長とリベルテが決闘をすると言う話になってしまった。

 何をどうしたら決闘と言う話になるのかは分からないが、逃げる暇もなくリベルテは騎士団長と決闘をしなれければならなかった。そして、決闘をした結果、リベルテが圧勝すると言う形で幕を閉じた。

 出来損ないと言えど、王族の血筋。武術や剣術が出来るのは当然で。幼い頃はユリウスと共に鍛錬に励んでいた。ユリウスに勝ちたいと言う一心で、何か一つでも勝てるようになりたいと必死に努力した結果、リベルテは騎士団長に圧勝した。

 周囲からは遊び呆け、問題ばかり起こす王族の恥晒しと言われているが、リベルテの実力は本物だった。誰も居ない時に、鍛錬場に忍び込んでは剣を握り、何度も何度も練習をした。時にはクラウスに頼んで指導してもらうう事もあった。そうして小さな努力を積み重ね、リベルテは強くなった。多少鍛錬を怠っていても基盤はしっかりと体に染み付いている為、リベルテは騎士団長に勝つ事ができたのだ。

「誰も居ない時間を見計らって、鍛錬場に忍び込んで必死に努力した甲斐がありましたねぇ、リベル」
「な! い、言うなって言っただろ! 何で言うんだよ!」
「今更隠す必要も無いでしょう? それに、何時かはバレるんですから良いじゃありませんか」
「う!」
「こうして見ると、リベルも可愛いよな」
「え!?」

 突然の夕の言葉に、全員が夕を見た。

「からかい甲斐があるって言うか、ツンデレ? な感じとか、必死に訴える姿が可愛いなぁって……」
「だ、だめです! リベルさまは、ぼ、僕の、僕の……その、えっと、あの……」

 夕がリベルテを「可愛い」と言った途端、シンジュがリベルテに抱き付いた。顔を真っ赤にして必死にリベルテ抱き付くシンジュはもっと可愛くて……

「シ、シンジュ? も、ももも、若しかして、嫉妬、してくれたのか?」
「へ!?」

 涙目になりながら俯くシンジュを見て、リベルテは再びシンジュを強く抱き締めた。「嬉しい」「可愛い」「もう離したくない」等、二人の雰囲気は砂糖よりも甘かった。

「やば。二人が可愛過ぎて鼻血出そう」
「自重しろ」

 二人の世界に入ってしまった二人を眺め、夕は余りの可愛さに手で鼻を押さえ、鈴は冷静に夕を罵った。
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