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第1章
突然の異世界1
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夕が小さな子どもを助けた夢を見た数日後。気が付くと大きな西洋造りの神殿のような空間に、夕は鈴と共に立っていた。
二人は交通事故に遭った訳でも、大きな水溜りに落ちた訳でも、神様的な存在に会った訳でもない。何時ものように朝起きて、何時ものように学校へ行く準備をして、何時ものように教室へ向かい、何時ものように授業を受けていた。何も変わった事はなく、平穏な日常を送っていた二人は、何の前触れもなく「異世界トリップ」と言う、非日常へ迷い込んでしまった。
二人は状況を把握する為、部屋の中を見回した。白い大理石のような石で出来た神殿のような大きな部屋。中央に噴水のような大きな白い器があり、その器を取り囲むように5本の白い柱が立っていた。壁には繊細な彫刻。天井はドーム型になっており、壁と同じように繊細な装飾が施され、透明なガラスのような物がステンドグラスのように嵌め込まれおり、陽の光を反射させ部屋の中を照らしている。
部屋を見回し、夕は「ん?」と頭を傾げる。
この場所、何処かで見た事あるような……
考え込んでいる夕に、鈴が「何か思い当たる事でもあるのか?」と聞き、夕が答えようとした瞬間、バンッと勢い良く扉が開き、ゾロゾロと人が入って来た。部屋に入って来た者達は皆、ファンタジーゲームに出て来る神官のような衣装を纏い、本や杖を持っていた。
「コスプレ?」
夕と鈴は同時に同じ事を口にし、自分達を取り囲む人々を凝視する。
「神子様が、お戻りになられた」
「は?」
え? この人達全員、何かのキャラに成り切ってんの? 此処ってコスプレ会場なの?
「神子様」と歓喜に満ちた周囲の声を聞き、夕達は頭を抱える。「神子じゃない」と二人が否定する前に、彼等は鈴の前に跪き、深々と頭を垂れる。
「どうか、この世界をお救い下さい」
「…………」
駄目だ。話が全く通じない。RPGや冒険ファンタジーでお決まりの台詞を言われ、二人は額に手を当て深い溜息を吐いた。
俺達、神子でも勇者でもありません!
神子様だと持て囃され、絶世の美女にも劣らない美貌を持つ鈴は、大事に大事に扱われた。神官らしき人々に連れられ、お姫様が着るような高級なドレスを着せられ、鈴一人に与えられた部屋は豪華な客室。
「スゲー特別待遇だなー」
自分を囲む人々に笑顔を振り撒く鈴を小さな窓から眺め、手に嵌められた黒い鉄の塊に視線を向ける。ジャラリ、重い金属の擦れる音が室内に響き、夕は何度目になるか分からない溜息を吐いた。この世界では黒は不吉の象徴らしく、神官達は黒髪黒目の夕を捕らえ、手錠をすると牢屋へと放り込んだ。
本当は殺される筈だったのだが、鈴が必死に神官達を止めてくれたお陰で、殺される事は免れた。代わりに、牢屋に放り込まれ「神子様に近づくな」と脅され、今に至る。小さな窓と簡素なベッドとトイレ以外何も無く、夕は天を仰ぎ、もう一度深い溜息を吐いた。
二人は交通事故に遭った訳でも、大きな水溜りに落ちた訳でも、神様的な存在に会った訳でもない。何時ものように朝起きて、何時ものように学校へ行く準備をして、何時ものように教室へ向かい、何時ものように授業を受けていた。何も変わった事はなく、平穏な日常を送っていた二人は、何の前触れもなく「異世界トリップ」と言う、非日常へ迷い込んでしまった。
二人は状況を把握する為、部屋の中を見回した。白い大理石のような石で出来た神殿のような大きな部屋。中央に噴水のような大きな白い器があり、その器を取り囲むように5本の白い柱が立っていた。壁には繊細な彫刻。天井はドーム型になっており、壁と同じように繊細な装飾が施され、透明なガラスのような物がステンドグラスのように嵌め込まれおり、陽の光を反射させ部屋の中を照らしている。
部屋を見回し、夕は「ん?」と頭を傾げる。
この場所、何処かで見た事あるような……
考え込んでいる夕に、鈴が「何か思い当たる事でもあるのか?」と聞き、夕が答えようとした瞬間、バンッと勢い良く扉が開き、ゾロゾロと人が入って来た。部屋に入って来た者達は皆、ファンタジーゲームに出て来る神官のような衣装を纏い、本や杖を持っていた。
「コスプレ?」
夕と鈴は同時に同じ事を口にし、自分達を取り囲む人々を凝視する。
「神子様が、お戻りになられた」
「は?」
え? この人達全員、何かのキャラに成り切ってんの? 此処ってコスプレ会場なの?
「神子様」と歓喜に満ちた周囲の声を聞き、夕達は頭を抱える。「神子じゃない」と二人が否定する前に、彼等は鈴の前に跪き、深々と頭を垂れる。
「どうか、この世界をお救い下さい」
「…………」
駄目だ。話が全く通じない。RPGや冒険ファンタジーでお決まりの台詞を言われ、二人は額に手を当て深い溜息を吐いた。
俺達、神子でも勇者でもありません!
神子様だと持て囃され、絶世の美女にも劣らない美貌を持つ鈴は、大事に大事に扱われた。神官らしき人々に連れられ、お姫様が着るような高級なドレスを着せられ、鈴一人に与えられた部屋は豪華な客室。
「スゲー特別待遇だなー」
自分を囲む人々に笑顔を振り撒く鈴を小さな窓から眺め、手に嵌められた黒い鉄の塊に視線を向ける。ジャラリ、重い金属の擦れる音が室内に響き、夕は何度目になるか分からない溜息を吐いた。この世界では黒は不吉の象徴らしく、神官達は黒髪黒目の夕を捕らえ、手錠をすると牢屋へと放り込んだ。
本当は殺される筈だったのだが、鈴が必死に神官達を止めてくれたお陰で、殺される事は免れた。代わりに、牢屋に放り込まれ「神子様に近づくな」と脅され、今に至る。小さな窓と簡素なベッドとトイレ以外何も無く、夕は天を仰ぎ、もう一度深い溜息を吐いた。
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