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番外編「お弁当」5【オーバン視点】
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隣で喚くバカは放っておいて、次に手を伸ばしたのは卵サンド。卵は二種類ある。白身を細かく切って黄身とマヨネーズを合わせたものと、分厚い卵焼きを挟んだもの。前者はよく見かけるが、後者は初めて見る。もしかしたら、これはクウの故郷にあったものかもしれない。
「口の中が幸せでいっぱいになりそう」
卵サンドも美味しい。白身と黄身がマヨネーズと調味料で混ざり合って、新鮮なキュウリの食感がいいアクセントになっている。食べる手を止められない。隣でシルヴァンが涎を垂らしているが、いくらガン見してもやらないからな?
「ずるいぞ! オーバン! お前ばっかり美味しいものを食べて! 俺にも食べさせろ!」
「やらんと言っているだろう? パン屋にでも買いに行け」
「このサンドイッチの方が美味しそうなんだもん! お前がそんな顔をするってことは、絶対に美味しいって証拠だろ!」
「あぁ。全部美味しい。ポテトサラダのサンドイッチは初めて食べたが、これもクウの故郷では当たり前だったのかもしれないな」
分厚い卵焼きのサンドイッチを手に取って、見せ付けながら口に含む。一瞬、意識を失った。同じ卵サンドなのに、こっちは卵にも味が付いていて、時間が経っているにも関わらずふわふわだ。これは、なんの調味料を使っているんだ? 砂糖と塩、後は……ダメだ。分からない。帰ったらクウに聞いてみよう。
「またそうやって食いやがって」
「お前も早く注文した方がいいんじゃないのか? 休憩時間が終わってしまうぞ?」
「一つも食べさせてくれないんだな」
「何故食べさせる必要があるんだ? これは、俺の愛しいクウが、俺の為だけに作ってくれたサンドイッチだ。赤の他人にやる訳ないだろ?」
一通り食べ終えて、残るはデザート枠であるジャムサンドとフルーツサンド。ジャムはよく見るが、フルーツは初めてだ。ジャムはいちごとチョコレートとマーマレードか。当たり前だが、全部美味しかった。クウの手作りというだけで、どうしてこんなにも美味しいのか。
「クセになりそうだ」
ポテトサラダのサンドや分厚い卵サンドも衝撃だったが、フルーツサンドも同じくらい衝撃を受けた。フルーツサンドだけケーキに似たパンが使われている。フルーツと生クリームに合わせて作ったのだろう。こういう些細な気配りができるクウが愛おしい。パンがケーキに近い分、生クリームの甘さは控えめでフルーツの甘酸っぱさが際立っている。サンドイッチに合わせてコーヒーも用意してくれていた。水筒を渡された時は何かと思ったが、これもこれでアリだな。
「うわ。結局一人で全部食いやがった。心が狭いな」
「クウに頼んでも無駄だからな?」
「俺だってクウの作る料理が食べたい!」
「ダメだ」
一度クウに敵意を向けた相手に、クウの料理は勿体ない。本当はお菓子だって渡したくないのに。それと、他の騎士やシェフ達も何故私に、いいやサンドイッチから目を離さないんだ? 此処にいるシェフはプロの腕前を持っているというのに、そんなにクウが作ったサンドイッチが魅力的に見えたのだろうか。どんなに頼まれても絶対にやらないけどな。
「口の中が幸せでいっぱいになりそう」
卵サンドも美味しい。白身と黄身がマヨネーズと調味料で混ざり合って、新鮮なキュウリの食感がいいアクセントになっている。食べる手を止められない。隣でシルヴァンが涎を垂らしているが、いくらガン見してもやらないからな?
「ずるいぞ! オーバン! お前ばっかり美味しいものを食べて! 俺にも食べさせろ!」
「やらんと言っているだろう? パン屋にでも買いに行け」
「このサンドイッチの方が美味しそうなんだもん! お前がそんな顔をするってことは、絶対に美味しいって証拠だろ!」
「あぁ。全部美味しい。ポテトサラダのサンドイッチは初めて食べたが、これもクウの故郷では当たり前だったのかもしれないな」
分厚い卵焼きのサンドイッチを手に取って、見せ付けながら口に含む。一瞬、意識を失った。同じ卵サンドなのに、こっちは卵にも味が付いていて、時間が経っているにも関わらずふわふわだ。これは、なんの調味料を使っているんだ? 砂糖と塩、後は……ダメだ。分からない。帰ったらクウに聞いてみよう。
「またそうやって食いやがって」
「お前も早く注文した方がいいんじゃないのか? 休憩時間が終わってしまうぞ?」
「一つも食べさせてくれないんだな」
「何故食べさせる必要があるんだ? これは、俺の愛しいクウが、俺の為だけに作ってくれたサンドイッチだ。赤の他人にやる訳ないだろ?」
一通り食べ終えて、残るはデザート枠であるジャムサンドとフルーツサンド。ジャムはよく見るが、フルーツは初めてだ。ジャムはいちごとチョコレートとマーマレードか。当たり前だが、全部美味しかった。クウの手作りというだけで、どうしてこんなにも美味しいのか。
「クセになりそうだ」
ポテトサラダのサンドや分厚い卵サンドも衝撃だったが、フルーツサンドも同じくらい衝撃を受けた。フルーツサンドだけケーキに似たパンが使われている。フルーツと生クリームに合わせて作ったのだろう。こういう些細な気配りができるクウが愛おしい。パンがケーキに近い分、生クリームの甘さは控えめでフルーツの甘酸っぱさが際立っている。サンドイッチに合わせてコーヒーも用意してくれていた。水筒を渡された時は何かと思ったが、これもこれでアリだな。
「うわ。結局一人で全部食いやがった。心が狭いな」
「クウに頼んでも無駄だからな?」
「俺だってクウの作る料理が食べたい!」
「ダメだ」
一度クウに敵意を向けた相手に、クウの料理は勿体ない。本当はお菓子だって渡したくないのに。それと、他の騎士やシェフ達も何故私に、いいやサンドイッチから目を離さないんだ? 此処にいるシェフはプロの腕前を持っているというのに、そんなにクウが作ったサンドイッチが魅力的に見えたのだろうか。どんなに頼まれても絶対にやらないけどな。
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