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エピローグ3
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シュークリームを作り終わった後は、ずっと勉強をしていた。オーバン様がいないとこの部屋はとても広く感じる。時計の音だけが響いて、寂しいような、落ち着くような、不思議な感覚に陥る。
「ただいま。クウ」
「オーバン様! おかえりなさい!」
夕暮れ時、オーバン様が帰ってきた。本当は玄関でお出迎えしたかったけど、心配性のボーモンさんに部屋で待つよう言われたんだ。また倒れては大変だから、と。確かにまだ気怠さはあるけど、意識を失うほどじゃないから平気なんだけど。こうしてオーバン様の胸に飛び込んでも大丈夫だし。
「ふふふ。今日のクウは積極的ですね。寂しかったんですか?」
「寂しかったです。オーバン様」
「甘えたなクウも可愛いです」
「えへへ」
オーバン様からぎゅうっと抱きしめられて、顔が緩んでしまう。こうして抱きしめてくれる逞しい腕も、優しく頭を撫でてくれる大きな手も、沢山僕を褒めてくれる甘い声も、オーバン様の全てが大好きで、愛おしくて、心が幸せで埋め尽くされる。
「それで、クウ。朝言っていたシュークリームは出来たんですか?」
「はい! 夕食後、二人で食べましょう! オーバン様!」
「今食べたいです。クウが私の為に作ってくれたシュークリームを楽しみにしていたんですから」
「楽しみは最後までとっておくべきです」
「むう。クウは意地悪ですね」
拗ねた顔も可愛く見えてしまうのだから、僕はかなり重症だ。オーバン様が好きすぎてどうにかなっちゃいそう。ずっとこうしていたいけど、ボーモンさんから「夕食の準備をしてもよろしいですか?」と聞かれて、僕達は渋々離れた。オーバン様が許可を出すと、ボーモンさんが手際よく料理をテーブルに並べて、あっという間に夕食の準備が整ってしまった。
「今日も、とっても美味しそうですね」
「何時もより豪華ですね」
プロポーズされた時と同じくら豪華かもしれない。お肉、お魚、野菜、パン、スープ、果物。全て気合が入っていて、食べるのがちょっと勿体ないと思ってしまう。
「いただきましょうか。クウ」
「そうですね」
でも、料理長達が心を込めて作ってくれた料理だ。食べないのは相手に対してとても失礼だ。僕もオーバン様も椅子に座って、豪華な料理を一つずつ味わった。料理長達が作ったものはどれを食べても絶品で、僕もオーバン様も完食した。
「ただいま。クウ」
「オーバン様! おかえりなさい!」
夕暮れ時、オーバン様が帰ってきた。本当は玄関でお出迎えしたかったけど、心配性のボーモンさんに部屋で待つよう言われたんだ。また倒れては大変だから、と。確かにまだ気怠さはあるけど、意識を失うほどじゃないから平気なんだけど。こうしてオーバン様の胸に飛び込んでも大丈夫だし。
「ふふふ。今日のクウは積極的ですね。寂しかったんですか?」
「寂しかったです。オーバン様」
「甘えたなクウも可愛いです」
「えへへ」
オーバン様からぎゅうっと抱きしめられて、顔が緩んでしまう。こうして抱きしめてくれる逞しい腕も、優しく頭を撫でてくれる大きな手も、沢山僕を褒めてくれる甘い声も、オーバン様の全てが大好きで、愛おしくて、心が幸せで埋め尽くされる。
「それで、クウ。朝言っていたシュークリームは出来たんですか?」
「はい! 夕食後、二人で食べましょう! オーバン様!」
「今食べたいです。クウが私の為に作ってくれたシュークリームを楽しみにしていたんですから」
「楽しみは最後までとっておくべきです」
「むう。クウは意地悪ですね」
拗ねた顔も可愛く見えてしまうのだから、僕はかなり重症だ。オーバン様が好きすぎてどうにかなっちゃいそう。ずっとこうしていたいけど、ボーモンさんから「夕食の準備をしてもよろしいですか?」と聞かれて、僕達は渋々離れた。オーバン様が許可を出すと、ボーモンさんが手際よく料理をテーブルに並べて、あっという間に夕食の準備が整ってしまった。
「今日も、とっても美味しそうですね」
「何時もより豪華ですね」
プロポーズされた時と同じくら豪華かもしれない。お肉、お魚、野菜、パン、スープ、果物。全て気合が入っていて、食べるのがちょっと勿体ないと思ってしまう。
「いただきましょうか。クウ」
「そうですね」
でも、料理長達が心を込めて作ってくれた料理だ。食べないのは相手に対してとても失礼だ。僕もオーバン様も椅子に座って、豪華な料理を一つずつ味わった。料理長達が作ったものはどれを食べても絶品で、僕もオーバン様も完食した。
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