あまりものの神子《完結》

トキ

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エピローグ1

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 左手の薬指を見るだけで自然と笑みがこぼれる。オーバン様から贈られた指輪は、小さな花の形をしていて、少しだけピンクダイヤも添えられている。僕の為に悩みに悩んで選んでくれたとボーモンさんから聞いて、僕は嬉しくて嬉しくて涙が溢れそうになった。この指輪を見るだけで愛されていると実感する。

「オーバン様」
「行きたくないです。クウの傍にいたい」
「オーバン様。我儘はダメです」
「ぅう」

 昨日も沢山愛してくれた。後半はオーバン様が暴走して朝までコース。当然ボーモンさんにお説教されて、僕はベッドから起き上がれなかった。オーバン様は今日も王宮でお仕事。それなのに、僕にぎゅうぎゅうと抱きついて離れてくれない。

「お仕事、頑張ってください」

 オーバン様の頬に触れて、顔を上に向ける。ちゅ、と僕から触れるだけのキスをしたら、オーバン様の顔が真っ赤になった。

「ク、ククク、クウ!?」
「僕だって、オーバン様がいないと寂しいです。でも、我慢します。今日はシュークリームを作ります。お仕事が終わったら、二人で食べましょう。だから、お仕事に行ってください。オーバン様」
「し、仕方ありませんね。シュークリーム、楽しみにしています。クウ」
「上手くできるかは分かりませんが、頑張ってみます! いってらっしゃい。オーバン様」
「はい。いってきます。クウ」

 ぎゅう、と抱きめ合って、もう一度触れるだけのキスをすると、オーバン様は仕事をする為に王宮へ向かった。昨日の疲れがまだ残っているから、暫くベッドから動けそうにない。ぅう。オーバン様、どうして何時も激しいんだろう?

「無理はなさらないでくださいね。クウ様」
「ぅう。体、だるい、です。シュークリームを作るのは午後からでもいいですか?」
「本当に辛いなら作る必要はないんですよ? 体調を崩されては大変ですし、クウ様に怪我を負わせる訳にはいきません」
「ボーモンさんは、過保護ですね」
「それほど、クウ様が大切なのです」

 大袈裟だなあ、と思うのと同時に、ボーモンさん達が心配してくれるのがとても嬉しく思う。体が辛いのは本当で、少し横になりたいと言っても誰も責め立てない。ゆっくり休んでいいと言ってくれる。ボーモンさんにお礼を言って、僕は午前中ずっと眠っていた。
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