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プロポーズ2
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二人で庭園を散歩して屋敷に戻ると、ボーモンさん達から祝福された。手際よく花束を花瓶に飾って、ご馳走を沢山持ってきて、結婚式の日程とか衣装とか聞かれて、僕は頭が混乱した。
「ボーモン。嬉しい気持ちは分かるが、気が早すぎる。クウが困惑していますよ?」
「おや? これは失礼しました。嬉しくて張り切ってしまいました」
オーバン様のプロポーズを受け入れたってことは、オーバン様の婚約者になったってこと? それも口約束じゃなくて、正式な。指輪だって用意されてたし、もう周囲に怯えなくてもいいのかな? もう、オーバン様を誰かに奪われるかもしれないって不安になることも、ないのかな?
「夢みたいです。クウと結婚できるなんて。十年間、諦めなくて良かったです」
「僕も、嬉しいです。オーバン様に選ばれて、愛されて、すごく幸せです」
「生活は今と変わりません。外の世界が怖いなら、無理して外出する必要はありません。仕事だって慌てて覚える必要はないんです。クウが傍にいてくれるだけで、私は満足なのですから」
「それだとただの穀潰しになっちゃいます。僕は、オーバン様の役に立ちたい」
僕に何ができるのかはまだ分からない。少しだけ料理とかお菓子とか作れるようになったけど、オーバン様の役に立っているとは言えない。お勉強だってもっともっと頑張らなきゃいけないし、何時迄もこの屋敷の中でぬくぬくと過ごすのもダメだと思う。
「本当にクウは健気ですね。気持ちは嬉しいですが、無理はしないでください」
「はい」
「さあ、折角作ってくれたんです。あたたかい内に食べましょう。クウ」
大きなテーブルに並べられた豪華な料理の数々。僕とオーバン様が結ばれたお祝いだとボーモンさんが言っていた。お肉、お魚、パン、スープ、サラダ、果物、デザート。一つ一つ丁寧に作られたことが分かる。みんなの気持ちが嬉しくて、僕はオーバン様と一緒に美味しい料理を堪能した。
「美味しいですか? クウ」
「とっても美味しいです。あとでお礼を言わないと」
「そういうところに、みんな救われたんですよ。クウ」
「え?」
「誰にでも手を差し伸べて、身分や職業に関係なく相手を労って、感謝の気持ちを忘れない。そんなクウだから、みんな支えたいと、守りたいと思うんです。私も含めて」
「お、大袈裟です」
「クウはいいことをしても自慢しないでしょう? いいえ、それすらも覚えていない。クウにとっては、些細なことだったから」
「オーバン様?」
「ですが、私達は違います。その些細なクウの親切に、みんな救われたんです。私も、ボーモンも、私に仕える人達も」
「ぇえ?」
そう言えば、ボーモンさんにも似たようなことを言われた気がする。みんな僕に対して過保護で、過大評価しているとは思っていたけど、僕の方が可笑しいの? みんな僕に感謝しているって、僕は感謝されるようなことをした覚えはない、と思う。うーん。考えても分からないや。
「ボーモン。嬉しい気持ちは分かるが、気が早すぎる。クウが困惑していますよ?」
「おや? これは失礼しました。嬉しくて張り切ってしまいました」
オーバン様のプロポーズを受け入れたってことは、オーバン様の婚約者になったってこと? それも口約束じゃなくて、正式な。指輪だって用意されてたし、もう周囲に怯えなくてもいいのかな? もう、オーバン様を誰かに奪われるかもしれないって不安になることも、ないのかな?
「夢みたいです。クウと結婚できるなんて。十年間、諦めなくて良かったです」
「僕も、嬉しいです。オーバン様に選ばれて、愛されて、すごく幸せです」
「生活は今と変わりません。外の世界が怖いなら、無理して外出する必要はありません。仕事だって慌てて覚える必要はないんです。クウが傍にいてくれるだけで、私は満足なのですから」
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「本当にクウは健気ですね。気持ちは嬉しいですが、無理はしないでください」
「はい」
「さあ、折角作ってくれたんです。あたたかい内に食べましょう。クウ」
大きなテーブルに並べられた豪華な料理の数々。僕とオーバン様が結ばれたお祝いだとボーモンさんが言っていた。お肉、お魚、パン、スープ、サラダ、果物、デザート。一つ一つ丁寧に作られたことが分かる。みんなの気持ちが嬉しくて、僕はオーバン様と一緒に美味しい料理を堪能した。
「美味しいですか? クウ」
「とっても美味しいです。あとでお礼を言わないと」
「そういうところに、みんな救われたんですよ。クウ」
「え?」
「誰にでも手を差し伸べて、身分や職業に関係なく相手を労って、感謝の気持ちを忘れない。そんなクウだから、みんな支えたいと、守りたいと思うんです。私も含めて」
「お、大袈裟です」
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「オーバン様?」
「ですが、私達は違います。その些細なクウの親切に、みんな救われたんです。私も、ボーモンも、私に仕える人達も」
「ぇえ?」
そう言えば、ボーモンさんにも似たようなことを言われた気がする。みんな僕に対して過保護で、過大評価しているとは思っていたけど、僕の方が可笑しいの? みんな僕に感謝しているって、僕は感謝されるようなことをした覚えはない、と思う。うーん。考えても分からないや。
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