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プロポーズ1
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隅々まで手入れの施された庭園にはチューリップが植えられていて、蕾が開き始めている。この世界も日本と同じように四季があって、今は冬から春になる変わり目だとボーモンさんから教えてもらった。
「やっぱり、近くで見ると綺麗ですね」
赤、ピンク、黄色、白、オレンジ。色鮮やかなチューリップが色ごとに分けられて、均等に植えられている。まだ満開じゃないけど、咲き始めているのを見るだけでも癒されるし、なんだか僕も元気になれる気がする。
「喜んでもらえて嬉しいです。クウ」
「オーバン様」
今日のオーバン様は何時も以上に気合が入っていて、すごく綺麗。白地に青い刺繍の施された衣装は、結婚式に着るタキシードのようで、思わずドキッとしてしまう。襟足だけ長く伸ばしている髪も光沢のある青いリボンで結ばれていて、眩しすぎて直視できない。
「クウ。私の気持ちを、どうか受け取ってください」
「え?」
庭園の真ん中で、オーバン様は片膝をついて僕に花束を差し出した。薄ピンクのチューリップの花束を。驚いて固まっていると、オーバン様に「クウ?」と呼ばれて、僕は慌てて花束を受け取った。
「クウ。私はずっとクウだけを想い続けてきました。最初に出会った時から、ずっと」
「え? ぇえ?」
と、突然どうしちゃったんですか!? オーバン様! 急に花束を渡してきたり、真剣な表情をして僕の手を取ったりするなんて。これじゃあまるで……
「好きなんです。クウのことが誰よりも。大切にします。必ず幸せにすると誓います」
「オ、オーバン様?」
や、やっぱり、そうだ。僕、オーバン様にプ、プププ、プロポーズされてる!? わわ! ど、どどど、どうしよう! 僕の手の甲にキスしてる! 格好いいし綺麗だし、僕、どうしたらいいの!? さっきから心臓がバクバクして落ち着かないよ! 誰か、誰か助けて! そんな僕の気持ちを無視して、オーバン様は真剣な表情のまま僕を見つめながら口を開いた。
「クウ。私の最愛の人。私と、結婚してください」
「は、はい! 喜んで!」
思わず勢いでOKしちゃった。だって、だって、オーバン様からプロポーズされるなんて思っていなくて。花束とか、ゆ、指輪とか、僕の為に用意してくれたんだと思うと嬉しくて。本当に、嬉しくて……あれ? どうして、視界が歪んでいるんだろう?
「クウ。その涙は、嬉しくて流しているんですか?」
「え? あ、れ?」
オーバン様に言われて、僕は泣いているんだと気付いた。悲しくない筈なのに、次から次へと涙が流れて止められない。オーバン様に言われた通り、嬉しくて泣いているんだ。オーバン様にプロポーズされて、結婚しようって言われて、この先もずっとオーバン様と一緒にいられるんだと思ったら、胸が苦しくなって、涙が止まらなくなった。
「驚かせてしまいましたね。クウを喜ばせたかったのに、泣かせたら意味がありません」
「そんな! オーバン様のせいじゃないです! 僕、嬉しくて、夢みたいで、それで……」
「私と、結婚してくれるんですか?」
「したい、です。僕には、オーバン様しかいないから」
「ありがとうございます! クウ!」
「わ!」
ぎゅうぎゅうと抱きしめられて、僕もオーバン様の背中に腕を回して抱きしめ返す。オーバン様は出会った時から優しかった。オーバン様だけが、僕を愛してくれた。ボーモンさん達も優しかったけど、オーバン様の愛とは違う。誰にも愛されないと諦めていた僕を、オーバン様は愛してくれた。だから、同じくらい僕もオーバン様を愛したい。
「クウ」
「オーバン様」
至近距離で見つめあった後、僕達はそっと唇を重ねた。キスなんて何度もしたのに、このキスは神聖な、特別な感じがしてドキドキする。触れるだけのキスをして、唇を離した僕達はなんだか恥ずかしくなって、それを隠すように笑って誤魔化した。
「やっぱり、近くで見ると綺麗ですね」
赤、ピンク、黄色、白、オレンジ。色鮮やかなチューリップが色ごとに分けられて、均等に植えられている。まだ満開じゃないけど、咲き始めているのを見るだけでも癒されるし、なんだか僕も元気になれる気がする。
「喜んでもらえて嬉しいです。クウ」
「オーバン様」
今日のオーバン様は何時も以上に気合が入っていて、すごく綺麗。白地に青い刺繍の施された衣装は、結婚式に着るタキシードのようで、思わずドキッとしてしまう。襟足だけ長く伸ばしている髪も光沢のある青いリボンで結ばれていて、眩しすぎて直視できない。
「クウ。私の気持ちを、どうか受け取ってください」
「え?」
庭園の真ん中で、オーバン様は片膝をついて僕に花束を差し出した。薄ピンクのチューリップの花束を。驚いて固まっていると、オーバン様に「クウ?」と呼ばれて、僕は慌てて花束を受け取った。
「クウ。私はずっとクウだけを想い続けてきました。最初に出会った時から、ずっと」
「え? ぇえ?」
と、突然どうしちゃったんですか!? オーバン様! 急に花束を渡してきたり、真剣な表情をして僕の手を取ったりするなんて。これじゃあまるで……
「好きなんです。クウのことが誰よりも。大切にします。必ず幸せにすると誓います」
「オ、オーバン様?」
や、やっぱり、そうだ。僕、オーバン様にプ、プププ、プロポーズされてる!? わわ! ど、どどど、どうしよう! 僕の手の甲にキスしてる! 格好いいし綺麗だし、僕、どうしたらいいの!? さっきから心臓がバクバクして落ち着かないよ! 誰か、誰か助けて! そんな僕の気持ちを無視して、オーバン様は真剣な表情のまま僕を見つめながら口を開いた。
「クウ。私の最愛の人。私と、結婚してください」
「は、はい! 喜んで!」
思わず勢いでOKしちゃった。だって、だって、オーバン様からプロポーズされるなんて思っていなくて。花束とか、ゆ、指輪とか、僕の為に用意してくれたんだと思うと嬉しくて。本当に、嬉しくて……あれ? どうして、視界が歪んでいるんだろう?
「クウ。その涙は、嬉しくて流しているんですか?」
「え? あ、れ?」
オーバン様に言われて、僕は泣いているんだと気付いた。悲しくない筈なのに、次から次へと涙が流れて止められない。オーバン様に言われた通り、嬉しくて泣いているんだ。オーバン様にプロポーズされて、結婚しようって言われて、この先もずっとオーバン様と一緒にいられるんだと思ったら、胸が苦しくなって、涙が止まらなくなった。
「驚かせてしまいましたね。クウを喜ばせたかったのに、泣かせたら意味がありません」
「そんな! オーバン様のせいじゃないです! 僕、嬉しくて、夢みたいで、それで……」
「私と、結婚してくれるんですか?」
「したい、です。僕には、オーバン様しかいないから」
「ありがとうございます! クウ!」
「わ!」
ぎゅうぎゅうと抱きしめられて、僕もオーバン様の背中に腕を回して抱きしめ返す。オーバン様は出会った時から優しかった。オーバン様だけが、僕を愛してくれた。ボーモンさん達も優しかったけど、オーバン様の愛とは違う。誰にも愛されないと諦めていた僕を、オーバン様は愛してくれた。だから、同じくらい僕もオーバン様を愛したい。
「クウ」
「オーバン様」
至近距離で見つめあった後、僕達はそっと唇を重ねた。キスなんて何度もしたのに、このキスは神聖な、特別な感じがしてドキドキする。触れるだけのキスをして、唇を離した僕達はなんだか恥ずかしくなって、それを隠すように笑って誤魔化した。
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