あまりものの神子《完結》

トキ

文字の大きさ
上 下
30 / 76

悪意への反撃11

しおりを挟む
 僕、ベッドから出たことがないかもしれない。そう思うくらい、僕はベッドで横になっている日が多かった。オーバン様が何度も僕を抱き潰すからだ。ぅう。これじゃあ、部屋の外にも出られないよ。腰が痛くて、足がガクガクして立ち上がれない。部屋の中央には青い顔をして椅子に座るオーバン様と、満面の笑みを浮かべながらも殺気立っているボーモンさん。

「オーバン様。私は何度も言いました。クウ様に無理をさせてはいけませんよ、と。それなのに、どうして何時もクウ様を抱き潰すのですか?」
「う! す、済まない。だが、可愛いクウの顔を見たら、理性が何処かへ飛んでしまうんだ!」
「言い訳など見苦しいですぞ! オーバン様! クウ様は、オーバン様の性欲処理の道具ではありません! クウ様を本当に愛しているのなら、クウ様をもっと大切になさいませ! クウ様の気持ちも無視して己の欲を満たすなど伴侶失格です!」
「く!」

 何時もは優しく笑っているボーモンさんが鬼のように見える。あまりにも恐ろしくて、僕は何も言えない。オーバン様は説教を受けてグッと耐えている。ボーモンさんには逆らえないみたいだ。

「あれ? オーバン、怒られてんの? 一体何したんだよ」

 説教中にシルヴァン様が部屋を訪れて、オーバン様に聞いた。ベッドで横になっている僕を見るとシルヴァン様は怒られている理由を察したみたいで「クウに無理させたから怒られてるんだな」と本人に言った。オーバン様は悔しそうな顔をするだけで何も言わない。図星だから言い返せないと言った方が正しいかもしれない。

「身体、大丈夫なのか? 熱は?」
「平気、です。腰とかお尻は、ちょっと痛いけど、熱はありません」
「あまり無茶すんなよ。辛いなら横になったままでいい」
「すみません」
「謝るな。お前のせいじゃないだろ?」
「ぅう」

 シルヴァン様の優しさが心地いい。このまま眠ってしまいそうだ。オーバン様に求められて、何度も抱かれて、まだ身体は休息を求めている。シルヴァン様のお言葉に甘えて、ちょっと眠らせてもらおうかな。

「待て、シルヴァン。貴様、私からクウを奪うつもりか?」
「はあ!? 奪う訳ねえだろ! 俺はただクウを心配していただけで」
「問答無用! これでクウがお前に惚れたらどうしてくれる! やっと私の伴侶になったのに、奪うなんて許さないからな!」
「だから奪わねえって言ってんだろ! 少し落ち着け! このままじゃクウが眠れねえだろ!」
「シルヴァン様の言う通りです。お説教はまだ終わっていませんよ? オーバン様」
「な!」
「座りなさい」
「しかし、ボーモン。このままでは」
「座りなさい」
「……はい」

 うーん。眠れない。当たり前だけど、オーバン様達が気になって眠ることなんてできない。ゆっくりと目を開けると、オーバン様はボーモンさんに怒られていた。シルヴァン様は少し離れたところで傍観。もう一度眠ろうとしたけど、騒がしくて眠るのは無理だった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

処理中です...