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愛してくれる人3
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オーバン様はこの世界でとっても有名な公爵家の当主様で、この国を支える騎士団の団長様でもある。たとえ相手が王族だったとしても、無闇に手出しは出来ないという。もし、王族が僕に危害を加えるようなことがあれば、オーバン様はこの国を捨てて他の国へ逃げる準備もしていると教えてくれた。
「クウが傍にいてくれるなら、私は何処だって構いません。元々、この国にはなんの未練もありませんし、王家に忠誠を誓うのもバカバカしく思っていました。立場が弱ければいじめられ、地位や名誉を手に入れれば昔のことなど忘れてすり寄ってくる。私には想い人がいるからと断っても、しつこく求婚してくるんです。好きでもない相手から、何人も……」
「オーバン様は、この国を捨てるつもりなんですか?」
「クウを傷付けるなら容赦はしません。私が護るべき存在は、国でも王家でもなく、クウなのですから」
「ぅう」
は、恥ずかしい。恥ずかしいけど、オーバン様の気持ちは正直言うととっても嬉しい。なんで僕、もっと早くにオーバン様と出会わなかったんだろう? どうして、最初の召喚の時にフェリシアン様の手を取ったのだろう?
「照れているんですか? クウ。可愛いですね」
「な!」
「可愛いです。可愛すぎます。クウが可愛すぎて、心配になります」
あぁ、ダメだ。僕もオーバン様が好き。こうやって抱きしめられると、もっとしてほしくなる。普段のオーバン様がどんな感じなのか、僕は知らない。でも、今僕に向けている優しい表情は僕の前だけだと思っている。僕だけが知っている、オーバン様の特別な表情。そう思うだけで、僕は嬉しい気持ちで満たされた。
「オーバン様」
「どうした? ボーモン」
「ボーモン?」
声をかけてきたのは五十代くらいの紳士的な男性だった。アッシュグレイの髪に緑色の瞳。ボーモンさんは僕を見付けると優しく微笑んで頭を下げた。
「初めまして。神子様。ボーモンです。オーバン様の執事をしております」
「は、はい。初めまして。僕は空羽と言います。小戸森空羽。クウと呼んでください」
「分かりました。クウ様。オーバン様のこと、よろしくお願いします。ですが、少々邪魔が入りまして」
「え?」
「邪魔だと? どういうことだ? ボーモン」
「それが、神官長殿が聖女様達を連れて乗り込んできたのです。『あんなのは無効だ』と『やり直せ』と」
「…………」
「私の方で追い返そうとしたのですが、全く効果はなく」
「……分かった。私が対応しよう」
「オーバン様」
「大丈夫です。クウ。追い返すだけですから、悲しまないでください」
「ん」
僕を安心させる為なのか、オーバン様は僕のおでこに口付けてから部屋を後にした。広い部屋に残された僕はボーモンさんと一緒に居るように言われた。
「オーバン様を信じてください。クウ様。あの方が伴侶として選んだのはクウ様ただ一人。オーバン様とフェリシアン殿下とでは雲泥の差。貴方を捨てて他の方を選ぶなんて愚行を、オーバン様がする筈がありません」
「ありがとうございます。ボーモンさん」
そうだ。オーバン様はフェリシアン様とは違う。オーバン様は、最初から僕を選んでくれた。絶対に捨てないと、大切にすると言ってくれた。それなのに、どうして僕はこんなにも不安なんだろう?
「クウが傍にいてくれるなら、私は何処だって構いません。元々、この国にはなんの未練もありませんし、王家に忠誠を誓うのもバカバカしく思っていました。立場が弱ければいじめられ、地位や名誉を手に入れれば昔のことなど忘れてすり寄ってくる。私には想い人がいるからと断っても、しつこく求婚してくるんです。好きでもない相手から、何人も……」
「オーバン様は、この国を捨てるつもりなんですか?」
「クウを傷付けるなら容赦はしません。私が護るべき存在は、国でも王家でもなく、クウなのですから」
「ぅう」
は、恥ずかしい。恥ずかしいけど、オーバン様の気持ちは正直言うととっても嬉しい。なんで僕、もっと早くにオーバン様と出会わなかったんだろう? どうして、最初の召喚の時にフェリシアン様の手を取ったのだろう?
「照れているんですか? クウ。可愛いですね」
「な!」
「可愛いです。可愛すぎます。クウが可愛すぎて、心配になります」
あぁ、ダメだ。僕もオーバン様が好き。こうやって抱きしめられると、もっとしてほしくなる。普段のオーバン様がどんな感じなのか、僕は知らない。でも、今僕に向けている優しい表情は僕の前だけだと思っている。僕だけが知っている、オーバン様の特別な表情。そう思うだけで、僕は嬉しい気持ちで満たされた。
「オーバン様」
「どうした? ボーモン」
「ボーモン?」
声をかけてきたのは五十代くらいの紳士的な男性だった。アッシュグレイの髪に緑色の瞳。ボーモンさんは僕を見付けると優しく微笑んで頭を下げた。
「初めまして。神子様。ボーモンです。オーバン様の執事をしております」
「は、はい。初めまして。僕は空羽と言います。小戸森空羽。クウと呼んでください」
「分かりました。クウ様。オーバン様のこと、よろしくお願いします。ですが、少々邪魔が入りまして」
「え?」
「邪魔だと? どういうことだ? ボーモン」
「それが、神官長殿が聖女様達を連れて乗り込んできたのです。『あんなのは無効だ』と『やり直せ』と」
「…………」
「私の方で追い返そうとしたのですが、全く効果はなく」
「……分かった。私が対応しよう」
「オーバン様」
「大丈夫です。クウ。追い返すだけですから、悲しまないでください」
「ん」
僕を安心させる為なのか、オーバン様は僕のおでこに口付けてから部屋を後にした。広い部屋に残された僕はボーモンさんと一緒に居るように言われた。
「オーバン様を信じてください。クウ様。あの方が伴侶として選んだのはクウ様ただ一人。オーバン様とフェリシアン殿下とでは雲泥の差。貴方を捨てて他の方を選ぶなんて愚行を、オーバン様がする筈がありません」
「ありがとうございます。ボーモンさん」
そうだ。オーバン様はフェリシアン様とは違う。オーバン様は、最初から僕を選んでくれた。絶対に捨てないと、大切にすると言ってくれた。それなのに、どうして僕はこんなにも不安なんだろう?
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