カゲロウの如く

海月

文字の大きさ
上 下
32 / 34
おれのトリップ(不思議の国の久人)

摩利支天神の御使い

しおりを挟む


ミヤ様はふっとほほえんだ。

「サヒト殿の聞きたいことはわこうておる。
なにゆえに、私がそなたを摩利支天神の御使いとわかったか、であろう?」

おれ今、ミヤ様が姿勢を崩しても美しく見える理yゲフンゲフン・・・いやいや、まさに!
まさにそれを聞きたかったのでするよ!
当然おれはしっかりうなずいた。

「うむ。
まず、これは大陸から我が祖父が取り入れた天文や暦の思想なのであるが、60年で一巡する十干十二支という時の捉え方がある。
年月を記録するに解し易くする目的の思想なのであるが・・・」

十二支?
イノシシの年賀状書いたりもらったりしたような・・・

「今年はいのしし?」

ミヤ様の表情がパッと明るくなった。
本当に花が咲くような、って感じなんだが・・・////

「まさしく!
本年はまさしく己亥つちのといであるのだ!」

あれ、ビンゴ?
しかも同じイノシシって。
ここにも干支えとってものがあったとはビックリだ。

ミヤ様は不意に目を閉じた。


「そなたが現れる前の晩のことだ。

三日月を眺めながら私は不思議な胸騒ぎを感じておった。

何か善き事が近づいてくるような満ちゆく力がざわめくような、言葉に表しがたい感覚であったが、私はそれを予兆と捉えた。だがそれが何の予兆であるのか、その時は解せずにいた。

あの日、遠乗りの最中さなか再び感じた天啓の如き予感に、私はふと彼方を仰いだ。
そこにはただ草原と、空くうにさす太陽光のみがあった。
それに不思議を感じ、みつめし瞬間、光の揺らめきよりそなたが現れ出でたのだ」


あれを、とミヤ様が優雅に手を伸ばせば、トネリが恭しく丸まった紙を広げて見せた。

なんだポスターか?
にしてもこの絵の人、手が多いのだが・・・
こういう手が多い人、ほかでも見たことあんな。

どこでみたっけ?

・・・思い出した!
そうだ。おなじみ『にゃんこ大戦争』のネコせんじゅじゃないか!

「摩利支天神はこれこの様に、三日月や猪に乗った女神の姿で描かれることが多いのだ」
「おおぉ・・・」

え、おれ、この人の使いって思われてるの?
この人おれの手借りなくても自分ので間に合ってそうだけど・・・

だいたいおれの手なんか、ネコの手より役に立たないからな。
自慢じゃないがな!

「あの瞬間、三日月に感じた予兆と現実がひとつに繋がったのを感じた。
ゆえに、私はひとめで、その方ほうが超常の存在であると悟ったのだ。
摩利支天神がさる使命の為ためにこの世界へ遣わした者であると」

えーと、
使命って、使命って、なんだろう。

それって何か意味があっておれがここに来たってこと?
そう思われてる?
ヒーローっぽいことするはず、って期待されてる?
だよね。

やべえ。

おれって、めっちゃ無意味な人じゃね?
ここ来てからも超ぼんやり過ごして来ちゃったんだけど。
意味あることなんもしてねーわ。

超ぼんやり生きてきたし。
人生ただ楽しければいいと思ってたし。

まずったな、マリ様よ・・・
おれだけは来させちゃいけなかった。
他のやる気ある人よこすべきだった!

「あの・・・おれ、使命がわからないのでする・・・」


ごめんよミヤ様。

おれ超ダメな使いだった。
ここ来てちょっと経ってるけど、おれなんもしてない。

ミヤ様をがっかりさせたくない。
だけど使命もわからない。
がっかりさせてしまうぜ。

「何をしたらよろしいので、するか・・・ね?」

あ、やべええ。
超気まずい!!

むしろおまえが聞くか?何、この役に立たない使者!ってトネリたちの目が言ってるぜ。
おまえマジで天神様の使いなわけ?
ふざけるの顔だけにしろ?

・・・あ、おれ今この場の全員のアテレコできるわ。

「「「・・・・・・・」」」

冷え冷えとした沈黙が広がり、完全にこの場を支配する。

あーあ、礼儀作法覚えて皆フツーの人を見る目になってたのが虫けら見る目に逆戻り。

いや、虫のほうがおれより役に立ってるわ。
糸作ったりしてんだもんな。

あ、落ち込むわー
おれの人生つんだ。

しかし、ミヤ様は鷹揚に首をふり、続けた。

「思うに、そなたがいかような使命を帯びておるか、知るはおそらく天神のみ。
そなたは自然の流れでここへ運ばれたと申したがそれこそが超常である。
つまりそなたがここに存在していること自体に深い意義があるのだと私は思う」


ミヤ様が神秘的な紫の目でおれをみつめた。
なんとまっすぐに人を見るのか。

おれは雷に打たれたようにその目を見つめ返した。

なにこの厳おごそかさ?

・・・超絶、神々しいんですけど!!!


「よって、そなたはそなたのままで・・・
ただ自然に心のままにおれば、それが天神の御心に添うこととなるのだと私は思う」


皆が一斉にその場に首こうべを垂れた。
おれも自然に首こうべを垂れていた。

なんかこう、偉大な力に圧倒されてひれ伏さずにいれない感じ?

こんなん初めてだ。

ミヤ様=神様と言われるの、すっげえわかるわ!
おれ、今、マジ神と対峙している気持ち。

この人、背中にチャックついてね?
実は子供の着ぐるみきた神様なんじゃないかな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

ミッション!!おなら鬼ごっこ

沼津平成
大衆娯楽
 最後まで逃げ切れれば百万円。おならをされたくなければ、小さな人形に捕まるな!!

同僚くすぐりマッサージ

セナ
大衆娯楽
これは自分の実体験です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

処理中です...