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13 ヒロインな私!

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 ねぇ、異世界トリップって知ってる?あー知らなくても全然問題ないよ!今、私がその状況ってことだから、おいおいわかってくると思うし!うんうん。

 あ、説明は省くね。私馬鹿だから、説明とかできないし。



 それにしても、小説みたいな出来事が私に起こるなんてーーー予測していました!え、だって私ずっと憧れてたんだもん、異世界にね!

 でもでも、異世界に来るのは本当に大変だった!前の世界で「あ、終わった。」と思ったら、異世界に着いてた。ラッキーだったね、私!



 もしかしたら、私は死んでいて、これは転生なのかもしれないけど・・・どうでもいいよ!ここに私がいるってことが大事だから!







 馬鹿でちょっとだけ可愛い私が召喚されたのは、そう、召喚!私この世界に求められてきたんだよ!私は必要とされているってこと!ここ大事だから、次のテストに絶対出すから!まーテストなんてやらないけどね!

 私を召喚したのは、肌が紫色の人間でした・・・気絶したよ!それも3回くらいね!



 4回目に目を覚ました時、私を怯えさせないようにと抑えた声で話しかけてきた人の顔を見て、私の恐怖は消えた。だって、イケメンだったから!



 うわー!山本君並みのイケメン!最高!



 話をしてみると、イケメンは普通にいい人だった・・・ただ、肌が紫色なだけ。イケメンだから、そんなのハンデにもならないね!いけるいける!私は、いける!



 イケメンの名前はグラブリ。・・・え?ちょっとこの名前は・・・イケメンだからいける!グランプリとか言っちゃいそうだけど、何の略称とか思っちゃったけど・・・愛称で呼べば何の問題もないよ!グラちゃん・・・あ、私のネーミングセンスに問題が・・・



 グラブリの問題は置いといて、とりあえず私は魔族に召喚されたんだ。そこだけが意外だったかなー。

 魔族の敵は人間。でも、グラブリは私に戦わなくていいと言ってくれて・・・召喚したのは、私が命を落とすのは見過ごせないと思ったからって言っていた。わー、私愛されてるー!!まぁ、グラブリが優しいだけなんだけど。



 それで、そんなグラブリが戦場に行っちゃって、私は心配で落ち着かないんだよね。怪我とかしたらどうしようって、気が気でなくて。

 こんなに気になるなら、私も行けばよかった・・・



 落ち着かなくて、一人庭に出て花を眺める。わっ、虫!あっち行こう・・・



「憂いの顔も素敵だね、お姫様。」

「マツェラ様。」

 ものすごい色気が・・・高濃度の色気をふりまいて私に声をかけたのはマツェラ。ピザか何かの名前かと思ったけど、イケメンなのでとにかくかっこいい!肌が紫だから、最初は驚いたけどね。あと、角も生えてるし。

 グラブリは肌が紫色なだけだったけど、マツェラは額に黒い角が生えていて、2回気絶した。3回目で挨拶を交わした人だ。耐性が付いてきたなって思ったよ。



「大丈夫だ、グラブリは騎士団長、この国で一番強いからね。あぁでも、返り血を浴びて帰ってくるだろうから、心の準備はしておくんだよ?」

「それは・・・おそらく気絶しますね。」

「お姫様は、か弱いから仕方がないね。その時は僕が寝室まで運ばせてもらうよ。ただ、ちょっと悪戯してしまうかもしれないけど、それは手間賃だと思って目を瞑ってくれるかな?」

「は・・・んっ。」

 悪戯って!?いたずらって何をされるの!?手間賃、運ぶ手間賃ということは、手を握る?き、キス?もしかして、む、胸とか触ってきたり!?

 息苦しい、めっちゃ息苦しい!



「顔が赤いけど、熱でもあるのお姫様?」

「い、ぇ・・・そ、そんなことわぁ!」

 ただ、心拍数が上昇して、息切れがするだけだから!あーもう、幸せ!



 異世界サイコー!!!!!







 だから・・・異世界が最高だから、私はこの世界に生きる。だって、現実なんて甘くもないし、おいしいこともない。

 前の世界では、小説の中や漫画、アニメでしか味わえないような幸福感。やっとそれが手に入ったのだから、私は絶対それを手放さない。



 ここでは、できない勉強に悩むことも、周りに溶け込めず排斥されることも、友達に嫉妬し劣等感を抱くこともない。

 ただ、いてくれるだけでいい。

 イケメンにそんなこと言われる世界なんて、素敵よね?そんな世界を私は絶対手放したくない。



 前の世界なんて、イケメンはいたけど、性格は最悪だった。今にして思えば、あれをイケメンだと思っていた自分に腹が立つほど、最低の・・・イケメンだった、クソっ!



 前の世界のことを思い出しても辛いだけ。前の世界の自分は死んだと思って、新しい自分に生まれ変わったと思って、この世界で生きていくことにした。だって、そのほうが幸せだと思うから。



 馬鹿だって、馬鹿にされて・・・可愛いって言われながら見下されて・・・そんな惨めな私は死んだ。



 いるだけでいい・・・生きていてくれてよかった・・・そんなみんなから大切にされる、無条件に愛される私が生まれたから、生きていくの。



 神様・・・私に力を与え、居場所を与えてくれた神様。感謝している、ありがとう!とっても感謝しているから、恨みは忘れてあげる。

 私をあの場所に生きさせて、苦行を強いたこと・・・忘れてあげる。



 あの苦行のおかげで今があったとしても、私はあの苦行しかない世界を認めない。私は、あの世界で苦しんだ私とは違う。



 だって、生まれ変わったんだもん!





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