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26 冒険者 コリンナ
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生暖かい空気を肌で感じ取り、大蛇が口を大きく開けてコリンナを待ち構えているということが、彼女にもわかった。
力の限り叫び、手入れの行き届いた手は、土汚れと自身の血で汚れてぼろぼろになるほど地面に縋りついたが、それは時間稼ぎにしかならない。
次の瞬間には、大蛇の鋭い牙が自身を貫いているかもしれない。そしたら、毒が回るのか?失血死するのか?もしかしたら丸呑みされて、苦しみながら死ぬのだろうか?
嫌な想像ばかりが駆け巡って、コリンナの瞳からは大粒の涙があふれる。
「・・・か。誰か!」
かすれ切った声で、最後にもう一度叫ぶが、誰かなんているはずないと、心のどこかでは諦めていたが・・・
ぐしゃっ。
肉が貫かれる音が、コリンナの耳に届いた。痛みはない。
死ぬ前だから痛みがないのか?そんなことを考えた。
「怪我はないか?」
「え・・・」
呼びかけられた。背後から聞こえたのは、男の声だ。どういうことかと振り返ったコリンナが目にしたものは、大蛇の頭を貫いた剣を引き抜く男の姿。
輝く金の髪に、澄んだ青い瞳。目の前の人物が男だと認識していたが、コリンナが浮かんだ感想は美しいだった。
これが、コリンナとユズフェルトの出会い。
魔の大森林に採集のため入ったコリンナは大蛇に襲われ、絶体絶命の状態だった。そこへ、ちょうど大蛇討伐を請け負ったユズフェルトが駆け付けて、見事大蛇を討伐。
コリンナは救われた。
そして現在、食堂でユズフェルトを怒鳴りつけたコリンナは、一人街中を歩いていた。
どうしてこうなったのか。何度目になるかわからないため息をついて、空を仰ぎ見る。
「嫌われてしまったでしょうか?」
不安を口にすれば、胸が痛みだして息も苦しくなる。
コリンナはユズフェルトのことが好きだ。城を出て、冒険者になったのもユズフェルトと一緒にいたいという理由で、あわよくば生涯を共に生きたいと思っている。
何とか、魔法の実力を見込まれて龍の宿木に入ることができ、ユズフェルトの近くにいられるようになった。仲間となって、依頼を遂行していく。
一緒にいられるだけで楽しく感じたコリンナだったが、いつまでも変わらない関係性に焦りが生まれる。
このままだと、冒険者仲間で終わる。ユズフェルトが生涯独身ならそれもいいかもしれないが、そのような保証はない。いつか結婚して、それを祝う立場に・・・間近でその光景を見ることになったら、目も当てられない。
ユズフェルトが結婚するのなら、その相手は自分でなければならない。決心したコリンナは、ユズフェルトの心をつかむために頑張ったが、それはすべて効果がなかった。
甘い言葉をかけて、甘えたりもした。ボディタッチが大事だと聞けば、そのようにして・・・しかし、特に反応が返ってこない。抵当にあしらわれてしまうことが何度かあって、嫌でもコリンナに対して興味がないことが分かってしまった。
それでも、いつか興味を持ってくれるかもしれない。そう信じて努力した結果が、今だった。
「今までは適当にあしらわれていました。ですが、依頼の最中に危機に陥れば、必ず助けてくださったのに。」
神殿で助けてもらえなかったことを思い出し、目が潤む。
ゴーレムに対して攻撃を行ったものに罠が発動する。そういう認識でいたせいで、全く心構えもできずに罠にはまってしまった。
心構えがあっても罠にはまったが、その時はユズフェルトが助けてくれた。
「なのに・・・あの女がいたら・・・助けてくれないのね。」
あの女・・・シーナがいると、ユズフェルトはシーナを優先する。ユズフェルトは、過保護にシーナを守る。
シーナを守るために手がふさがっていたから、そんな理由でコリンナは見捨てられたのだ。
「今まで見捨てられたことなんて、一度もありませんでした。」
大蛇に襲われていることを助けてもらい、そのあと一緒に依頼を受けるようになってからも、何度も助けられた。そのたびにコリンナはユズフェルトのことが好きになっていったというのに。
シーナが現れてから変わってしまった。
助けてもらえなくなり、ユズフェルトを振り向かせるためのアピールは、邪魔だとでもいうような反応が返ってくるようになった。
「あの女さえいなければ、私が一番ユズフェルト様に近かったというのに。あんな、何の努力もせず、いきなり現れた女なんかにっ!」
コリンナの魔力が風になって、周囲を強い風取り巻く。
いなくなればいい。あんな女。
どうすれば、いなくなるだろうか?
何もわからない。なら、調べるしかないだろう。魔道具だってそうだ。徹底的その魔道具を調べ上げて、適切な破棄方法を考える。人間だって同じだろう。
理想は、シーナ自身が自らユズフェルトの前から消えること。でないと、ユズフェルトはシーナを追って行ってしまうだろう。
そんな予測ができることにさらに怒りがつのって、コリンナは唇をかみしめた。
絶対に排除する。そう心に決めたコリンナが向かったのは・・・王都の中枢、城。自分が生まれ育った城、マルシャンス城に向かって、走り出した。
そこは、聖女召喚も行われた、シーナにとっては始まりの場所でもある。
力の限り叫び、手入れの行き届いた手は、土汚れと自身の血で汚れてぼろぼろになるほど地面に縋りついたが、それは時間稼ぎにしかならない。
次の瞬間には、大蛇の鋭い牙が自身を貫いているかもしれない。そしたら、毒が回るのか?失血死するのか?もしかしたら丸呑みされて、苦しみながら死ぬのだろうか?
嫌な想像ばかりが駆け巡って、コリンナの瞳からは大粒の涙があふれる。
「・・・か。誰か!」
かすれ切った声で、最後にもう一度叫ぶが、誰かなんているはずないと、心のどこかでは諦めていたが・・・
ぐしゃっ。
肉が貫かれる音が、コリンナの耳に届いた。痛みはない。
死ぬ前だから痛みがないのか?そんなことを考えた。
「怪我はないか?」
「え・・・」
呼びかけられた。背後から聞こえたのは、男の声だ。どういうことかと振り返ったコリンナが目にしたものは、大蛇の頭を貫いた剣を引き抜く男の姿。
輝く金の髪に、澄んだ青い瞳。目の前の人物が男だと認識していたが、コリンナが浮かんだ感想は美しいだった。
これが、コリンナとユズフェルトの出会い。
魔の大森林に採集のため入ったコリンナは大蛇に襲われ、絶体絶命の状態だった。そこへ、ちょうど大蛇討伐を請け負ったユズフェルトが駆け付けて、見事大蛇を討伐。
コリンナは救われた。
そして現在、食堂でユズフェルトを怒鳴りつけたコリンナは、一人街中を歩いていた。
どうしてこうなったのか。何度目になるかわからないため息をついて、空を仰ぎ見る。
「嫌われてしまったでしょうか?」
不安を口にすれば、胸が痛みだして息も苦しくなる。
コリンナはユズフェルトのことが好きだ。城を出て、冒険者になったのもユズフェルトと一緒にいたいという理由で、あわよくば生涯を共に生きたいと思っている。
何とか、魔法の実力を見込まれて龍の宿木に入ることができ、ユズフェルトの近くにいられるようになった。仲間となって、依頼を遂行していく。
一緒にいられるだけで楽しく感じたコリンナだったが、いつまでも変わらない関係性に焦りが生まれる。
このままだと、冒険者仲間で終わる。ユズフェルトが生涯独身ならそれもいいかもしれないが、そのような保証はない。いつか結婚して、それを祝う立場に・・・間近でその光景を見ることになったら、目も当てられない。
ユズフェルトが結婚するのなら、その相手は自分でなければならない。決心したコリンナは、ユズフェルトの心をつかむために頑張ったが、それはすべて効果がなかった。
甘い言葉をかけて、甘えたりもした。ボディタッチが大事だと聞けば、そのようにして・・・しかし、特に反応が返ってこない。抵当にあしらわれてしまうことが何度かあって、嫌でもコリンナに対して興味がないことが分かってしまった。
それでも、いつか興味を持ってくれるかもしれない。そう信じて努力した結果が、今だった。
「今までは適当にあしらわれていました。ですが、依頼の最中に危機に陥れば、必ず助けてくださったのに。」
神殿で助けてもらえなかったことを思い出し、目が潤む。
ゴーレムに対して攻撃を行ったものに罠が発動する。そういう認識でいたせいで、全く心構えもできずに罠にはまってしまった。
心構えがあっても罠にはまったが、その時はユズフェルトが助けてくれた。
「なのに・・・あの女がいたら・・・助けてくれないのね。」
あの女・・・シーナがいると、ユズフェルトはシーナを優先する。ユズフェルトは、過保護にシーナを守る。
シーナを守るために手がふさがっていたから、そんな理由でコリンナは見捨てられたのだ。
「今まで見捨てられたことなんて、一度もありませんでした。」
大蛇に襲われていることを助けてもらい、そのあと一緒に依頼を受けるようになってからも、何度も助けられた。そのたびにコリンナはユズフェルトのことが好きになっていったというのに。
シーナが現れてから変わってしまった。
助けてもらえなくなり、ユズフェルトを振り向かせるためのアピールは、邪魔だとでもいうような反応が返ってくるようになった。
「あの女さえいなければ、私が一番ユズフェルト様に近かったというのに。あんな、何の努力もせず、いきなり現れた女なんかにっ!」
コリンナの魔力が風になって、周囲を強い風取り巻く。
いなくなればいい。あんな女。
どうすれば、いなくなるだろうか?
何もわからない。なら、調べるしかないだろう。魔道具だってそうだ。徹底的その魔道具を調べ上げて、適切な破棄方法を考える。人間だって同じだろう。
理想は、シーナ自身が自らユズフェルトの前から消えること。でないと、ユズフェルトはシーナを追って行ってしまうだろう。
そんな予測ができることにさらに怒りがつのって、コリンナは唇をかみしめた。
絶対に排除する。そう心に決めたコリンナが向かったのは・・・王都の中枢、城。自分が生まれ育った城、マルシャンス城に向かって、走り出した。
そこは、聖女召喚も行われた、シーナにとっては始まりの場所でもある。
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