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22 脱出
しおりを挟むユズフェルトは、本人が思っているほどひどい人ではないと教えたかったが、どうしても理解してもらえなかった。自分がひどい人間だと思い込むことはつらいと思うので、私が彼に感謝をしていることの一部でも伝わればいいのだが。
もう少し言葉を重ねるべきかと考えて口を開こうとしたとき、地面から腕が生えた。
「ひっ!?」
「大丈夫だ。」
落ち着いたユズフェルトを見れば、この腕の持ち主も仲間の一人なのだろうと想像がつく。しかし、アーマスと違って、一気に姿を見せずに腕だけが出でいる姿は、怖い。
「ごほっ。」
「大丈夫?」
「・・・平気だ。」
突然飛び出てきたアーマスと違って、ゆっくりと土から出てきたのは、アムだった。
全身を地上に出すと、口元をぬぐって息をついていた。・・・え?
「アムは、どうやって生き埋めから逃れたの?」
「・・・」
口元をぬぐったアムを見て、私が思ったのは土を食べたのではないかというもの。大食いキャラとしての認識があるので、土を食べたとしても異世界ならあり得ると納得できてしまう。
本当だったら、引くが。
「アムは、力があるからな。筋力でここまで上がってきたのだろう。ちなみに、アーマスは、土魔法を使って土を動かすことで脱出した。そろそろ出て来るぞ。」
ユズフェルトが言いきった時、先ほどと同じように土から飛び出てきたアーマス。その腕には、コリンナとナガミを抱えていた。意外と力持ちなのだな、と感心する。
どうやら2人の意識は無いようでぐったりとしていた。そのことにほんの少しだけ安心をする。
コリンナの意識があれば、ユズフェルトが助けに来なかったことに不満が爆発するだろうから、面倒だ。
そっと、両脇に抱えた2人を地面に降ろして、アーマスは周囲をうかがって頷いた。
「どうやらゴーレムは完全に身動きが取れなくなったようだね。」
「そのようだな。魔石は破壊していないが、生き埋めにされた状態では動けないようだな。」
「そのようだね。これで、これ以上守護者が出てくるのを防げればいいけど。」
「・・・どういう意味だ?」
「魔石を壊しても・・・とどめを刺しても次の守護者が現れるなら、とどめを刺さずに身動きの取れない状態にすれば、もう守護者は現れないかもしれないと思ってね。正解かどうかはまだわからないけど、魔石が修復するにせよ、新しく守護者が配置されているにせよ、前の守護者が破壊されていない状態なら次の守護者は現れないだろう。」
魔石が破壊されて、それが修復されていた場合、生き埋めにすれば魔石は壊れていないので修復しようがなく、守護者はずっと生き埋めの状態のままだ。
魔石が破壊され守護者不在になると、次の守護者が配置されるようになっているとすれば、生き埋めにされた守護者はゴーレムなので死ぬことはないので、破壊扱いにはならない。次の守護者が追加されることはないだろう。
追加式の場合、ゴーレムが一体なのを考えて、守護者が壊されたら次の守護者を送るという仕組みの可能性が高いので、再び守護者は現れないはずだ。
「とにかく、今回の依頼は完遂だ。ゴーレムを行動不能にしたのだから、倒したも同然だろう。帰るぞ。シーナ疲れただろう、背負っていく。」
「大丈夫だよ。でも、神殿を調べもせずに帰って大丈夫?アーマスの作戦は理解できたけど、流石に5回も守護者が復活したら、龍の宿木の評価が落ちてしまうと思うけど?」
「神殿を調べるのは研究者の仕事だ。それに、一度は一通り研究者が知らべたはずだが、ゴーレムについて追加の説明がなかった。ということは、俺たちが調べたとしてもゴーレムについてわかることはないだろう。研究者にわからないことが、冒険者にわかるはずもない。」
「それもそうだね。」
私は納得して、ユズフェルトに続いてキュリザスの墓の内部から出た。
あたたかい日差しが体にしみこんで、心地よい。少し内部は寒かったのだ。
「体冷えたでしょ?大丈夫?」
「少し寒かったけど大丈夫。ありがとう、アーマス。」
「そう。ユズフェルト、俺は先に戻るよ。ギルドへの報告は済ませるから、まっすぐ帰ってくれ。気絶している奴もいるんだから、アムと一緒に帰れよ。」
「はぁ。わかった。」
ユズフェルトが頷いたのを確認して、アーマスは身軽に木に飛び乗って、姿を消した。
まるで、忍者のようだ・・・見たことないけど。
アーマスの気絶している奴らで思い出した私は、背後を振り返った。すると、少し離れた場所にアムが立っていて、大きな荷物に加えてコリンナとナガミを担いでいた。
「アム、大丈夫なの?ただでさえ荷物が多いのに・・・」
「・・・僕は、荷物持ちだ。」
それっきり黙ってしまった。別に苦しそうな表情などはしていないし、平然としているので大丈夫なのだろう。でも、これだけの荷物を抱えている人にこれ以上任せてもいいのだろうか?まぁ、もう任せているのだけど。
「気にするな。アムは戦闘能力がない代わりに龍の宿木で荷物持ちをしている。それが仕事だから、それを奪うわけにはいかない。それよりも帰ろう。日が暮れる。」
「わかった。」
まだ太陽はてっぺんに登っているが、移動時間がかかるのだ。流石に日が暮れるまでには余裕で変えることはできるが、ここで時間をかける必要もない。
私たちは帰路に着いた。
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