死にたくないから、ヒロインたちを殺すことにした

製作する黒猫

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27 ヒロイン

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 なぜ、気づかなかったのだろうか?ゲームで知り尽くしたトゥリアと私は友達になった。そんな知り尽くしたはずの人物が、友達が、こんなに醜いはずがないって、何で気づかなかったのだろうか?



―――馬鹿な奴ら

 そんな言葉を、トゥリアの口から聞くはずがない。



―――使わなかったよ?光魔法の使い手なら、積極的に戦って欲しかったけど、まぁどうにかなったからもういいか。

 助けるべき人がいて、助ける力があるのに、助けないなんて選択をするような子じゃない。



「まさか、私のこと突き落とす気?」

 私を疑って、真正面からこんなことを言う子ではない。

 一切嫌がらせをしていない私に対して、このようなことを言うのはおかしい。心を読んだか、それとも・・・



―――あの子さ、どこから来たんだろうね。

 私と同じ、転生者なら・・・私を悪役令嬢と知っていて、トゥリアをヒロインと知る者なら、私がトゥリアを突き落とすことを知っていても不思議ではない。



 ふに落ちた。そうだ、目の前のトゥリアに似ていてトゥリアじゃない者が転生者なら、彼女に感じていた違和感を感じなくなる。ずっと変だとは思っていたが、トゥリアの中身が違うのなら納得だ。



「あんた、マジの悪役よね。私の婿候補ほとんど残ってないし、本気で私の邪魔をする気みたいだけど、負けないから。」

「婿候補・・・?」

「とぼけないでよ。入学してから時々様子を見ていたけど、王子とは仲がよさそうだったし、あんた転生者でしょ?出なければ、悪役令嬢が王子と仲がいいなんて説明がつかないし。」

 キッと階段の上の方にいる私を睨みつける・・・ヒロイン。とぼけたつもりはないが、婿候補と言われたのが攻略対象者だと結びつくのに時間がかかっただけだ。

 どうやらあちらも私が転生者だと気づいたようだ。まぁ、私の行動はゲームのミデンを知っている者からすると不自然なので、バレるのは必然だろう。



 さて、お互い転生者と理解したわけだが、それでも私がやることに変わりはない。ヒロインが転生者だろうが、1週目の記憶がないトゥリアだろうが、私がやることは決まっている。



 ヒロインと悪役令嬢が転生者なら、悪役令嬢の断罪を回避しお互いの幸せのために助け合うというのもよくある展開だが・・・ここはデスゲームの世界だ。そう、私がデスゲームの世界にした。だから、ここで行われるのは助け合いの友情育成でも、愛を育む恋愛でもなく、殺し合い・・・いや、ただ私が殺す殺戮ゲームだ。



 だって、私は今回世界に殺されるつもりはないのだから。殺すのはずっと私で、殺されるのは世界に愛されたヒロインと攻略対象者たちなのだから。



「王子はいなくなっちゃうし、魔法使いはどこにもいないし、なんだか腹黒は物騒だし、それなら友情エンドって思ってレズを探しても見当たらないし、本当焦った。もしかしなくても、あんたの仕業だよね?」

「・・・腹黒ってお兄様?お兄様は最初から物騒だと思うのだけど?」

 王子はエン。魔法使いは攻略対象者全員そうだが、その中で言うならデュオだろう。腹黒はまぁ、兄だ。レズは話の流れで行くとテッセラだろう。彼女がレズだとは思えないが、確かにトゥリアに対して友達の定義を疑うスキンシップをするので、否定はできない。



 1週目の話だが・・・女同士はノーカンというのが、彼女の魔法の言葉だった。

 デュオが好きだと言いながら、同じ口で男になりたいと言ったときは、BL展開かと思ったが・・・まぁ、過ぎたことはいい。



 ここではっきり言いたいのは、エンとデュオ、テッセラのことは確かに私がやったことだが、兄が物騒なのは最初からだということだ。すべて私のせいにされても困る。



「あー確かに、腹黒はあんた関係なしに腹黒だね。で、あんたは何で全力で悪役をやっているわけ?ここは普通、みんなに好かれるように媚び売って、全員攻略するくらいしない?」

「・・・そんなことに意味はないから・・・私も聞きたいのだけど、婿候補がいなくなったら、ヒロインはどうするつもりなの?」

「意味がないって・・・王子は攻略してたように見えたけど・・・ま、いいや。ヒロインって私よね?この前に見たんだからわかってると思うけど、夜の王を攻略するつもりだから、邪魔しないで。」

「夜の王?」

 迷信で、悪いことをした子供攫うというのが夜の王だが・・・そういえば、もっと詳しい話を聞いたような・・・

 そうだ、確か兄を誘拐していたのが夜の王だった!



 あれは、生徒会長に聞いた話だ。兄が誘拐されていない間、兄の代わりに私に魔法をかけて馬車に私を乗せることをしていた生徒会長が話してくれたんだっけ。

 夜の王は気に入った子供を自分の世界に連れて行こうとする、そんな存在だ。



 ヒロインの話だと、夜の王はこの学園にいるようだが、一体誰のことだろう?前に見たということは、ヒロインと一緒にいた人物だ。

 攻略対象者たちは違うだろう。それぞれ別の呼び方をされていたし。なら・・・攻略対象者以外のヒロインのそばにいた人物。



 ヒロインが水をかけられていた時いたのは、全員女子生徒だった。・・・あの中にいたのだろうか・・・いや、流石に自分をいじめている相手を攻略はしないだろう。ヒロインも馬鹿にしていたし。



 そういえば、私にヒロインの話をしてきた人が、攻略対象者以外にいた。その人は、夜の王についても教えてくれた・・・でも、その人を言い表すなら夜の王ではない。



「月光の生徒会長・・・」

「あー、ゲームでは顔が見れなくて残念だったよね。予算の関係か、攻略対象者から外れちゃったってラフだけ設定資料集で見たけど、いい顔もってるって感じ~実際見てもかっこいいし、なんなら王子よりタイプだわ。」

「・・・そう。生徒会長って、本当は攻略できる予定だったのね。」

「そういうこと。だから、邪魔しないでよ。あんたがピンチになったら助けるからさ、これ以上は本当に邪魔しないで、何なら手伝ってくれる?」

「・・・」

「何、不満なの?私と協力しないと困るのって、あんたの方だと思うけど?」

 助けるなんて、世界に愛されたヒロインだとしても簡単に言わないで欲しい。それも、まがい物に言われたら腹が立つだけだ。

 ここは話を合わせて隙を作るところだが、思った以上に私は腹が立っていたようだ。



「なにも困らないわ。だって、私はあなたたちを殺して、生き残るもの。」

 私が言ったことの意味が分からないのか、顔をしかめるヒロインへと近づいて、私はシナリオ通りにその体を突き落とした。







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