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18 生死不明
しおりを挟む1週目試したことがなかったので不安だったが、無事に思い通りに事を運ぶことができた。
交友会で別れた後から、テッセラの姿を見ていない。テッセラのクラスメイトにも聞いたが、転校したことになっていた。
「これで、2人目・・・驚いたでしょうね、まさか攻略対象者に死亡フラグがあるなんて。私も驚いたし。」
何週目かの周回プレイで、知らずに選んだ選択肢でテッセラがいなくなって、かなり焦った。いつかひょっこり出てくるかと思っていたが、エン様とデュオの表情に影が出るようになって、「あぁ、テッセラは死んだんだな」と感じた。その予想は正解で、エンディングまで見たが、テッセラは最後まで登場しなかったのだ。
テッセラは、家名を捨てて王家の影として生きることを幼いころに決めた。スキアーは影が名乗る呼び名で、テッセラの家名ではない。正確に言えば、エン様たちが「フォース」を名乗るように、テッセラは影魔法の使い手を表す「スキアー」を名乗っていたのだ。
そんなテッセラは、家名を捨てた瞬間に死んだことになっており、テッセラが死んだとしても、葬式などはない。すでに死んだ者の葬式など行われないのだ。
だから、テッセラが死んだとしても私には伝えられないし、ましてヒロインのトゥリアに伝えられるはずもなく、ゲームでは生死不明となってしまったのだ。
現状も同じで、テッセラの生死を私が確かめることはできないという、何とも微妙な話になってしまった。
デュオは意識不明。テッセラは生死不明。不明ばかりで、達成感は全くない。
「・・・調べる必要があるよね。」
最後の最後に2人が学園に現れたら目も当てられない。ヒロインも攻略対象者も殺さなければ、おそらく私の死の運命は回避できない。
この世界はヒロインと攻略対象者のためにあるのだから。
ヒロインと攻略対象者が生きていれば、恋の成就か、実らぬ恋の切ない物語。私は排除。
ヒロインだけが生きていれば、ヒロインを苦しめた私を排除。
攻略対象者だけが生きていれば、彼らの心に永遠にヒロインがいて、私は排除。
ヒロインと攻略対象者が生きている限り、私を排除すればある程度いい終わり方になる。悪役が終わることで、物語に救いができるからだ。
デュオにとどめを刺すのは難しいが、テッセラの死を確認するのはできないことはない。1週目の時、私はテッセラではなくエン様に、バルコニーで聞いたことを教えた。そのおかげで、ゲーム通りテッセラには何事もなく、誘拐を企てたやつらは捕まった。
今回は、テッセラに話したことで、テッセラが生死不明となったが、私はエン様にもアイオアを通じて話をしているので、おそらく1週目と同様誘拐を企てたやつらは捕まったはずだ。
テッセラを害するとしたら、その捕まったやつらである。なら、聞けばいいのだ。
と、簡単には言ったが、そうそう面会などできるはずもなく、こっそりと城の地下牢に行こうとしたが、見張りが多すぎて・・・無理だと理解する。
そもそも、見張りがなかったとしても、普段とは違う道を通るだけで道行く人に声をかけられてしまう。みんな暇なのだろうか?
「ミデン、最近様子がおかしいと報告があったが・・・どうかしたのか?」
「え、そうですか?」
いつものようにエン様とお茶をしていると、そう指摘された。間違いなく、地下牢へと向かおうとしたときに呼び止めてきた騎士が、エン様に報告したのだろう。
こんな些細なことまで報告することないのに・・・面倒な。
「・・・普段は通らないようなところを通って、ここまで来ていると聞いた。・・・探しているのか?」
驚いた。エン様の方から聞いてくるだなんて思わなかった。
ゲームでも、ヒロインには最後まで伝えなかったことを、私が聞けば教えてくれるのだろうか?
「探している・・・ですか。私は、誰を探しているのでしょうか、エン様?」
「え、それは・・・探していないのか?」
「・・・探していませんよ、誰も。」
エン様に聞けば、テッセラがどうなったのか・・・生死の確認ができるかもしれない。でも、私は聞かなかった。
なんでかと聞かれれば、エン様が本当のことを言うのかもわからないのに、聞いても無駄だと思ったからだ。それは、牢屋に入っている者たちにも同じことが言える。
「ちょっと、気分転換をしてみたかっただけです・・・ご心配をおかけしたのなら、謝りますわ。」
「いや・・・いい。別に、謝るほどのことじゃない。ミデン、話は変わるが、次の休みの日に出かけないか?少し気分転換をしたくて、その、付き合ってくれないか?」
「嬉しいお誘いですが・・・」
エン様からの誘いは、すべて断っている。ヒロインと攻略対象者たちを殺すと決めた時から、私はエン様の誘いを断り続けていた。いつものようにするりと断り文句が出たが、途中で止まった。
エン様は、こんな人だっただろうか?
私の目の前にいるエン様は、暗い表情をしていて、顔は私の方を見ているがエン様の目を見ても目が合うことはない。よく見れば、目の下にクマができている。
「ミデン?」
「・・・ピクニック・・・」
「?」
「ピクニックに行きませんか?そこでお花を摘んで、デュオ様のお見舞いをしたいと思いまして。どうでしょう?」
「・・・付き合ってくれるのか?妃教育が忙しいとか、予定が入っているとか、ないのか?」
私が断らないことに驚き、もしかしたら聞き間違いかもしれないと、エン様は何度か聞き直してきたが、私の言葉は変わらない。
エン様とピクニックに行き、花を摘む。その花をお見舞いの品として、デュオに会いに行くというものだ。
しっかりとそれを確認したエン様は、私の目を遠慮がちに見た後、微笑んだ。
この人は、こんな人だっただろうか?私の婚約者は、ここまで自信のない人だっただろうか?
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