21 / 50
21 監禁
しおりを挟む目を開けると、そこは暗闇だった。
「ん・・・まだ夜?」
起き上がると、発光するものを見つけた。それは、おそらくテーブルの上にある、部屋の電気のスイッチ。それを手に取って、スイッチを押した。
ピッと電子音と共に、部屋が徐々に明るくなる。
壁に掛けてある時計を見れば、8時だった。
「・・・あれ?」
辺りを見回すが彼はいない。もう起きたのだろうか?
昨日は映画を見ている途中で眠ってしまった。だから、彼がここで寝たのかはわからない。彼のことだ、同じ部屋で寝ることをためらって、上で一晩を過ごしたのかもしれない。
「とりあえず、上に行こうかな。」
そう思って、ベッドから出ると、テーブルに紙が置いてあることに気づいた。昨日はなかったはずだ。なんとなく手に取ってみると、私への手紙だった。
「・・・僕が帰るまでここにいてください。あなたがどこかへ行ってしまう気がして、心配です。だから、鍵をかけました。内側からは開きません。・・・え?」
鍵をかけました。内側からは開きません。まさか?
「まさかね。」
冷や汗がでる。
私は、この部屋にたった一つある扉の前まで来て、ノブをまわす。だが、まわらない。
「・・・あれ、おかしいな?」
ガチャガチャと音を鳴らして、ノブをまわそうとするが、回らない。
「嘘だよね・・・」
扉から離れて、扉を見る。扉の材質はわからないが、重そうだ。体当たりなどしてもびくともしなさそうだ。
鍵を開けるしかない。でも、鍵穴はこちら側にはない。開けるには、向こう側から鍵を開けるしかない。
「大声を出せば、外の人が気づいてくれるかな?ここら辺は住宅地だし。」
ここでなら、近所の耳を気にしなくていい。たしか彼は、そう言っていた。私は、それを聞いて防音をしているのだろうと思った。していないとしても、ここは地下だ。
「大声を出しても無駄だよね。そういえば、手紙には続きが書いてあったっけ。」
手紙を手に取って、続きを読み進めた。
「・・・外へ助けを求めても無駄です。大人しく、ここでお待ちください。このようなことになり、本当に申し訳ございません。ですが、僕はあなたを失いたくないのです。・・・私を失う?」
手紙はこれで終わりだ。やはり、外に助けは求められないようだ。
理解できないことばかりだが、わかることもある。私は、閉じ込められてしまったようだ。そして、脱出できる可能性はほぼない。
「どうして、閉じ込めたの?」
待っていてと言われれば、閉じ込められなくたって待ったのに。
「なんで。」
僕はあなたを失いたくないのです。
「失いたくないって・・・どういうこと?」
わからない。私にはわからない。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる