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12 学校
しおりを挟むこの世界には、身分というものがあり大きく分けて2つに分類される。平民と貴族という2つの身分があるが、平民の命と人権がとても軽く扱われる時代は遥か昔の話。今は身分による格差がほとんどなくなり、貴族は裕福だが家を継がなければならない、程度の認識が広まりつつある。
しかし、どこにでも時代に遅れた、古い考えの者はいる。そういう貴族が一部残っているが、平民と貴族が互いに歩み寄って共同生活を送っているのが今の時代。
平民の識字率向上のために教育が義務化されると、貴族しか通えなかった学校が平民にも門を開くことになり、いつしか圧倒的に少ない貴族よりも平民の割合が大きくなって、学校側も平民向けに変わらざるをえなくなった。
ここも、そのような歴史をたどった学校の一つ。
白塗りの校舎、大きなグラウンドと敷地内を囲うフェンスに塀。
模範的な造りの学校は華美さが全くない簡素なつくりで、誰でも気軽に入っていける雰囲気を生み出している。
生徒の8割が平民で、その生徒を教える先生も貴族は3人程度と少ない。
昔は家柄で選ばれていた生徒会も、今は完全なる実力主義。しかし、貴族は幼少の時から家庭教師がついているため成績優秀者が多く、役員になる者は貴族が圧倒的に多い。
今期の生徒会役員は、6人中5人が貴族だ。
彼も、生徒会に入っていると言っていました。やっぱりすごい人です!
今日から通う学校の説明を思い出していると、教室の中から私を呼ぶ先生の声がしました。私は返事をして扉を開け、教室の中に入ります。
30人程度いる人間の視線が一気に私に集まって、少しだけ居心地が悪くなりましたが歩くことに集中して気にしないようにし、先生の隣に立ちました。
顔を上げると、なぜかほとんどの人間がぽーとした表情で私を見ていました。熱でもあるかのように、顔が赤いですが・・・風邪でも流行っているのでしょうか?
「今日からクラスメイトになる、リリ・ドーナルドだ。みんな、仲良くしてやってくれ。」
「よろしくお願いします。」
先生からの簡単な紹介が終わったので、私は頭を下げて挨拶をしました。
今日から一緒に学ぶというクラスメイトとたちは、一泊遅れてからそれぞれ口々に「よろしく」と返してくれました。いい人たちみたいで良かったです。
「席は、学級員のグレット・アルソートの隣に用意した。旧知の仲なのだろう?」
「はい。良くしていただいています。」
「なら安心だな。学校でもよくしてもらえ。グレット、今日中に校舎を案内してやれ。」
「わかりました。」
グレット・・・・・やっと彼の名前を覚えることができそうです。
目に優しい茶色の髪に、綺麗な青い瞳。学校では微笑みを絶やさないと言っていた彼の言葉は本当のようで、口元は笑みの形を作っています。
私は、用意された席に座ります。すると、彼がこちらを見つめているのに気づいて、私は顔を彼の方へ向けました。
「学校でもよろしくね、リリ。」
「は、はい・・・よろしくお願いします。」
「うん。」
甘く優しい声で言われて、失礼ですが鳥肌が立ちました。
いえ、最初からこの彼を見ていれば、こんなことにはならなかったと思います。家での彼を知っていると、愛想のいい彼には違和感しかありません。
言葉まで柔らかくて、背中がかゆくなりますね。
うん。って、彼の返事では聞いたことありません。だいたい、あぁ。って感じですのに!
まぁ、1日の大半は学校にいるのです。いつか彼のこの態度も慣れるでしょう。
慣れなきゃ困ります。
初めての授業が終わると、彼の席の前に一人の男子生徒が来ました。
「グレット、俺のシスターはどうよ?」
「文句なしだよ。」
「だろ?それでマイシスター、初めての授業はどうだった?」
マイシスターは、私のことです。私に向かって、男子生徒はウィンクをして授業の感想を聞いてきました。
「内容は、勉強したことなので復習したという感じですね。でも、大勢の人と勉強するのは新鮮で面白かったです。」
「それはよかった。今日もかわいいなぁ。」
男子生徒は私の頭を、かわいくて仕方がないという顔をしながら撫でました。
男子生徒の名前は・・・なんとか・ドーナルド。先ほどの私の名前から察する方もいるかと思いますが、私の兄ということになっています。
この学校に入学するにあたって、私はドーナルド家の養子になりました。
ドーナルド家は、代々彼の家に仕える従者の家系で、その娘となれば彼のそばにいてもおかしくないから・・・という理由で、ドーナルド家の養子にしてもらいました。
これで、学校でも彼と一緒にいられます!
「・・・?」
「どうしたんだ、マイシスター?」
「・・・いいえ。」
私、彼となんで一緒にいたいのでしょうか・・・?
彼と一緒にいると、あったかいからですね。それに、彼以外の人間のことを知らないからでしょう。
これから、いろんな人間を知りたいですね!
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