上 下
12 / 39

12 学校

しおりを挟む




 この世界には、身分というものがあり大きく分けて2つに分類される。平民と貴族という2つの身分があるが、平民の命と人権がとても軽く扱われる時代は遥か昔の話。今は身分による格差がほとんどなくなり、貴族は裕福だが家を継がなければならない、程度の認識が広まりつつある。

 しかし、どこにでも時代に遅れた、古い考えの者はいる。そういう貴族が一部残っているが、平民と貴族が互いに歩み寄って共同生活を送っているのが今の時代。



 平民の識字率向上のために教育が義務化されると、貴族しか通えなかった学校が平民にも門を開くことになり、いつしか圧倒的に少ない貴族よりも平民の割合が大きくなって、学校側も平民向けに変わらざるをえなくなった。

 ここも、そのような歴史をたどった学校の一つ。



 白塗りの校舎、大きなグラウンドと敷地内を囲うフェンスに塀。

 模範的な造りの学校は華美さが全くない簡素なつくりで、誰でも気軽に入っていける雰囲気を生み出している。

 生徒の8割が平民で、その生徒を教える先生も貴族は3人程度と少ない。



 昔は家柄で選ばれていた生徒会も、今は完全なる実力主義。しかし、貴族は幼少の時から家庭教師がついているため成績優秀者が多く、役員になる者は貴族が圧倒的に多い。

 今期の生徒会役員は、6人中5人が貴族だ。







 彼も、生徒会に入っていると言っていました。やっぱりすごい人です!



 今日から通う学校の説明を思い出していると、教室の中から私を呼ぶ先生の声がしました。私は返事をして扉を開け、教室の中に入ります。

 30人程度いる人間の視線が一気に私に集まって、少しだけ居心地が悪くなりましたが歩くことに集中して気にしないようにし、先生の隣に立ちました。



 顔を上げると、なぜかほとんどの人間がぽーとした表情で私を見ていました。熱でもあるかのように、顔が赤いですが・・・風邪でも流行っているのでしょうか?



「今日からクラスメイトになる、リリ・ドーナルドだ。みんな、仲良くしてやってくれ。」

「よろしくお願いします。」



 先生からの簡単な紹介が終わったので、私は頭を下げて挨拶をしました。

 今日から一緒に学ぶというクラスメイトとたちは、一泊遅れてからそれぞれ口々に「よろしく」と返してくれました。いい人たちみたいで良かったです。



「席は、学級員のグレット・アルソートの隣に用意した。旧知の仲なのだろう?」

「はい。良くしていただいています。」

「なら安心だな。学校でもよくしてもらえ。グレット、今日中に校舎を案内してやれ。」

「わかりました。」



 グレット・・・・・やっと彼の名前を覚えることができそうです。

 目に優しい茶色の髪に、綺麗な青い瞳。学校では微笑みを絶やさないと言っていた彼の言葉は本当のようで、口元は笑みの形を作っています。



 私は、用意された席に座ります。すると、彼がこちらを見つめているのに気づいて、私は顔を彼の方へ向けました。



「学校でもよろしくね、リリ。」

「は、はい・・・よろしくお願いします。」

「うん。」



 甘く優しい声で言われて、失礼ですが鳥肌が立ちました。

 いえ、最初からこの彼を見ていれば、こんなことにはならなかったと思います。家での彼を知っていると、愛想のいい彼には違和感しかありません。



 言葉まで柔らかくて、背中がかゆくなりますね。

 うん。って、彼の返事では聞いたことありません。だいたい、あぁ。って感じですのに!



 まぁ、1日の大半は学校にいるのです。いつか彼のこの態度も慣れるでしょう。

 慣れなきゃ困ります。







 初めての授業が終わると、彼の席の前に一人の男子生徒が来ました。



「グレット、俺のシスターはどうよ?」

「文句なしだよ。」

「だろ?それでマイシスター、初めての授業はどうだった?」



 マイシスターは、私のことです。私に向かって、男子生徒はウィンクをして授業の感想を聞いてきました。



「内容は、勉強したことなので復習したという感じですね。でも、大勢の人と勉強するのは新鮮で面白かったです。」

「それはよかった。今日もかわいいなぁ。」



 男子生徒は私の頭を、かわいくて仕方がないという顔をしながら撫でました。



 男子生徒の名前は・・・なんとか・ドーナルド。先ほどの私の名前から察する方もいるかと思いますが、私の兄ということになっています。

 この学校に入学するにあたって、私はドーナルド家の養子になりました。

 ドーナルド家は、代々彼の家に仕える従者の家系で、その娘となれば彼のそばにいてもおかしくないから・・・という理由で、ドーナルド家の養子にしてもらいました。



 これで、学校でも彼と一緒にいられます!



「・・・?」

「どうしたんだ、マイシスター?」

「・・・いいえ。」



 私、彼となんで一緒にいたいのでしょうか・・・?



 彼と一緒にいると、あったかいからですね。それに、彼以外の人間のことを知らないからでしょう。



 これから、いろんな人間を知りたいですね!





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売しています!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

料理屋「○」~異世界に飛ばされたけど美味しい物を食べる事に妥協できませんでした~

斬原和菓子
ファンタジー
ここは異世界の中都市にある料理屋。日々の疲れを癒すべく店に来るお客様は様々な問題に悩まされている 酒と食事に癒される人々をさらに幸せにするべく奮闘するマスターの異世界食事情冒険譚

処理中です...