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10 本
しおりを挟む今日も彼が学校に行ってしまって、私は一人で勉強をしています。字を読めるようになったので、今は知識を付けるためにいろいろな本を読んでいます。
歴史。
人間と魔物が争い合う話が多いです。それは現在も続いていますが、彼の生活や彼と行った町を見る限り、魔物と戦争をしているという感じはしませんでした。
昔聞いた話だと、戦争をしていると笑顔が消えてピリピリとした空気が流れる。質素倹約が求められて、男の人が減る。などという話を聞きました。
こちらとあちらでは違うのでしょうか?
地理。
こちらは、歴史と合わせて読みました。
それでわかったことは、人間と魔物が住む地域は違うこと。私たちが今いる場所は、魔物の地域から離れているということです。
だから戦争の影響が少ないのかもしれません。戦争が行われているのは、魔物が住む地域の近くにある、人間の国のようなので。
詩集。
あまりあちらと変わりませんね。
本当にあるわけがない都市伝説。
金を投げ入れると、倍になって返ってくる湖。魔物と人間が共存しているという島。空に浮かぶ魔王城。突飛な話が多くて、面白かったです。
魔物と人間の共存、無理な話ですね。飼育員様がそう言っていましたから。題名の通り、あるわけがない話でした。
娯楽小説。
どきどきの冒険譚から、ドロドロの愛憎劇まで幅広い物語がありました。私は、動物が主人公の日常系が面白かったです。日常とはいっても、私にとっては日常ではないので、勉強になりました。
どうやら私は本を読む速度が速いようで、1日に10冊以上読んでいることを彼に話すと驚かれました。その前に、もう本を読めることを驚かれましたけどね。
ちょっと優越感です!
「リリ、お前はもっと学びたいか?」
「特にそういう欲求はありません。ただ、人間が読むという本に興味があっただけなので。」
「・・・なら、人間と共同生活をしてみるか?俺や屋敷の人間だけでなく、もっと多くの人間と。」
「もっと多くの人間ですか。」
町に行った時のことを思い出します。優しく接してくれた店員さん、笑い合う人間たち。とても楽しかったです。
「はい!してみたいです、共同生活。」
「そうか。なら手配しておこう。だが、くれぐれも魔物だとばれないように、発言と行動は気を付けてくれ。言ってはいけないことは、もう理解しているだろう?」
「もちろんです。私がリスフィだとか、別の世界から来たとか、羽がどうとか・・・言いません。行動にも気を付けます。・・・あなたと生活して、人間の能力がどの程度なのかは把握しました。その範囲内で行動します。」
「優秀だな。」
彼は私に微笑みかけながら、優しく頭をなでてくれました。嬉しいです。これが、心がくすぐったいというものですね。
その時、部屋に執事の・・・バルマが入ってきました。
「坊ちゃま、マーレイフィ様がお見えです。」
「わかった。応接室に通してくれ、すぐに行く。」
マーレイフィ様。3日に一度くらいは彼に会いに来るお客さんです。顔を合わせたことはありませんが、彼が紹介しないということは必要ないということでしょう。
私は特に何も聞くことなく、優しく微笑んで名残惜しそうに私の頭から手を離した彼を見送りました。
必要ないことだと思い、聞くことはしません。でも、1日の内彼と一緒にいられる数少ない時間を、マーレイフィ様にとられるのは少しだけ嫌です。
名前も覚えていない彼。ですが、優しい彼のことが私は大好きで、ずっと一緒にいたいと思っています。それが叶わないことは理解しているので口にはしませんが。
「・・・あ。」
そういえば、彼の名前を私は言えませんが書くことはできました。文字を覚えた今なら、彼の名前を読めるでしょう。
記憶した彼の名前を、まっさらな紙に書きだします。何度も書いた字なので、スラスラと書けました。
「よし。えーと・・・あ。」
文字は読めますが、発音の仕方はわかりません。
どういう仕組みかはわかりませんが、こちらの世界の言葉をなぜか話せますし、理解もできます。ですが、文字と言葉が一致していないのです。
文字の意味は分かるのですが、話すことはできない、発音が分からないのです。
「・・・いつか、知ることができますか?」
知る機会はあると思いますが、今度は覚えられるかが不安ですね。
名前なんて、2文字で十分だと思います。私のように。
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